【本】「東京貧困女子」

重い、重過ぎる。

読んだ感想は、この二言にすぎる。
それでも読了できたのは、貧困に対する興味と恐怖の感情が止まらなかったからだと思う。

この本を読むきっかけは西原理恵子さんの「この世でいちばん大事な『カネ』の話」を読み始めたことだ。
まだ読んでる途中だが、彼女もなかなか壮絶な人生を送っている。
私は綺麗事を言わない彼女が語る「貧しさのリアル」を知りたくなった。


ここからはネタバレがあります。




まず奨学金の返済に追われて、風俗で働く学生がいることに衝撃を受けた。彼女たちは月に数万円の生活費が足りずにそれを補うために夜の世界で働いていた。
これは自分の想像をはるかに超えている事実だった。
いかに自分が恵まれた大学生活を送っているか気付かされる。本当に。

貧困に苦しんでいるのが女子大生というのもしんどい。
いわゆる大人の貧困はよくニュースで目にすることが多いが、未来ある若者である大学生が悲惨な生活をしていると思うと暗い気持ちになる。

あまりにもショッキングな内容だが、読む手は止まらない。

何がきっかけで彼女たちは貧困にならなければならなかったのか。

まず、幼少期に親からの虐待を受けているケースが多い印象があった。
これは本人はどうしようもない。
幼少期のトラウマが子供の成育にかなり影響して、大人になって精神疾患になり働けなっている。
私のように「無職になりたい〜」といった怠惰な理由では決してなく、みんな働きたくても働けないという方が多い。

これに関しても自分の親には感謝しかない。
どこの家庭にもその家庭なりの問題があり、大なり小なりそれぞれの悩みを抱えているとは思う。
うちにだってある。
けれど、私の悩みなんてほんと虫けらみたいなもので、彼女たちの家庭の問題はまさに地獄だった。
親ガチャという言葉が流行ったけど、自分の親は選べない。こればかりは本当にどうしようもない。

そしてもっと最悪なのは、貧困は連鎖する。
親が貧困だと子供も貧困になる。
学費を払えないから子供は進学を諦めるしかなく、中卒や高卒で働きに出る。もしくは地獄のような家から早く出たくて働く。
たとえ進学できたとしても、当然学費は払えないから奨学金を利用するしかなく、社会人になった瞬間から借金を抱える。
絶望的な事実にため息が出る。

私の高校時代のエピソードを思い出した。
1つ上の先輩の代から修学旅行の行き先が海外になった。
海外となると費用等の問題で保護者間で賛否が分かれたらしく、保護者会が行われたらしい。
後日母親から聞いた、ある親御さんの言葉は今でも忘れられない。

「自分たちは余裕がなく、子供を海外に連れて行ってあげることができない。せめてこの子だけでもこの修学旅行で海外に連れて行ってあげたい。ぜひ実現してほしい」

今でもこの言葉を思い出すと胸がグッとくる。



裕福な家庭で育った高学歴の方が貧困になったケースもあり、これは誰でも起こりうるのでかなり怖くなった。

これはシングルマザーで、本人や家族が病気になるケースが多かった。
一番怖かったのが、姉の介護で貧困になってしまった方。
これは誰でもなりうる状況で恐ろしくなった。


ちょっと前まで「無職になりたい」とずっと思っていた。
それ自体の自分の思いは否定しないが、この本を読んだらとてもそんな気持ちにはならなくなった。
ただただ自分の今いる環境に感謝しか湧かない。家族、職場、友人。すべてにおいて自分が恵まれているのだと気づいた。 

そして、知識と情報に救われることもある。生活保護の制度や個人融資という名の闇金を知らないという、「知らない」ことで苦しんだ女性が多くいた。無知は命取りになる。私たちは常に学びをやめてはいけない。

明日は我が身かもしれない。だけど絶望したってしょうがない。
しょうもない政治家に好き放題されないように選挙に行って、必死に抵抗することも必要だし、たとえ世界が変わらなくても個人ができることをしなければ現状は変わらない。

″バタフライエフェクト″

「非常に小さな出来事が、最終的に予想もしていなかったような大きな出来事につながる」ことを意味する言葉だ。
つまり、「風が吹けば桶屋が儲かる」である。

貧困で苦しんでいる方を直接助けることは難しい。けれど、自分が幸せになって周りの人を大切に扱うことはできる。そして、その優しさは伝染すると思っている。
綺麗事かもしれないが、優しさが広がって、世の中のストレス総数が少しでも減って穏やかな社会になり、苦しんで生活している人が少しでも楽になればいいと切に願っている。

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