「ショート動画は無理だ…」と諦めかけた2年後に100万回再生越え動画を連発して本を出版できることになった話。
私のイラストとTikTokは相性が悪い?
ショート動画の代名詞TikTok。
私は、TikTokに向いてない。
このアカウントは、もうダメだ。
私のイラストとショート動画の相性がよくないんだ。
2年間TikTokに動画を上げていたけれどフォロワーは30人台から伸びず。「いいね」もほとんどつかない状態だったので、そう思い込んでいました。
でも、全部間違いでした。
TikTokを開始してから2年が経過した2021年。ひょんなことから、3万回再生の動画が生まれます。そこから試行錯誤を繰り返し、100万回再生を超える動画が生まれました。
これらのバズがきっかけで、TikTokさんの公式イベントに招待いただき、クリエイターとして事務所にお世話になることがが決まり、ショート動画のお仕事をいただくことができ、さらに書籍の出版までお声がけ(https://amzn.asia/d/0ynJDSG)いただきました。
現在フォロワーさんは、1000倍以上の4万人に。私にとっては快挙です。
TikTokがきっかけで、たくさんのご縁とチャンスをいただくことができました。保育園と家の往復しかしていなかった在宅ワーカーなので、TikTokドリームと言ってもいいかもしれませんね。
とはいえ私は、世間的にはまだまだ無名のイラストレーター。繰り返しますが、TikTokのアカウントは2年間鳴かず飛ばず。でも、今ではショート動画がきっかけで仕事が舞い込んでくるようになりました。
このnoteでは、私のやってきたことを振り返りつつ、TikTokの運用のコツになるかもしれない話を書いてみます。
イラストレーターのmomoです。
少しだけ自己紹介します。SNSではイラストレーターのmomoとして活動しています。出身は京都ですが、2018年から北海道在住で、6歳10歳兄弟の母でもあります。
イラストを描き始めたのは、5年前から。
大学生の頃に絵を仕事にすることは諦めてしまっていたので、絵とは関係のない職種で働いていました。詳しいことはこちらのノートに書いています▼
社会⼈10年⽬の2017年、育児と仕事の合間に⼦どものころ好きだった⽔彩画を再開します。パンや好きなものの絵を描きSNSに投稿したところ、パンの絵やおいしい⾷べ物関連の依頼が続き、現在はイラストレーターとしても活動するようになりました。
たくさんの方に知っていただいているお仕事としては、2020年に発売された、セブン‐イレブンとMr. CHEESECAKEのコラボレーション商品「ミスターチーズケーキ アイスクリーム」、「ワッフルコーン ミスターチーズケーキ カカオラズベリー」と「チロルチョコ<ミスターチーズケーキ>」のパッケージイラストを担当したこと。
Mr. CHEESECAKE のコラボレーション商品が全国のセブン‐イレブンに登場。長期開発した商品へ込めた想い (mr-cheesecake.com)
それから、北海道物産展でおなじみ「じゃが豚」を作っている、佃善さんが作った「たかし餃子」のイラストとデザイン。こちらは、株式会社NASUのアートディレクター前田高志さんと共創したご縁もあり、日本タイポグラフィ年鑑の審査員賞をいただきました。
https://twitter.com/DESIGN_NASU/status/1517427790022582272?s=20
ブランディングとは、商品らしさを見つける対話。 ~「たかし餃子」はこうして誕生した~ | NASU Co.,Ltd. 勝てるデザインの会社
ちなみに、私の絵はパンのイラストが多いのですが、その理由はパンが好きでよく⾷べることと、パンは1つとして同じものはないという魅⼒、つらい時やしんどい時に元気をもらったパンたちへの感謝の気持ちからです。(詳しくは、過去のnoteに書きました。)
パン好きが高じて、パンシェルジュ検定の挿絵や
2022年パンのフェスの公式グッズのイラストにも使ってもらっています。
さて、前置きが長くなりましたが、私のTikTok運用の話を書いてみますね。
私の絵はTikTokユーザーさんたちには必要とされていない…。
私がTikTokを始めたのは2019年。きっかけは、友人からの勧めでした。これまで、LINE公式アカウントやInstagram、Twitterでは、イラストを使った運用で少しずつフォロワーさんも増えてきていたので(現在どれも2万名くらいです)、その延長線上でTikTokにも挑戦してみました。
最初はどういう動画を投稿したらいいのかもわからず、完全に手探り。流行りの音楽など関係なく雰囲気が良さそうな音楽で投稿していました。
投稿頻度も多くなく、特に工夫もなく続けていたので再生回数も300前後。
フォロワーさんはずっと2桁台。コメントもほとんどなしといった状態。
今振り返れば、伸びなくて当たり前なんですよね。でも、当時の私には動画や企画が悪いという考えはなく、私の絵はTikTokユーザーの方には必要とされていない。と思い込んでいました。
ここから2年の間TikTokのアカウントは、気になっているけど放置している状態。続けていけるような企画も思いつきませんでした。
「15分チャレンジ」を投稿するも伸びず。
時は流れて2021年。転機が訪れます。
ある朝、Instagram経由で海外の企業からとても丁寧なオンラインスクール講師の打診メールが届いていていました。実は私は学生時代、教師を目指して小、中、高の教員免許を取得しています。でも先生になることなく免許の期限が切れてしまったんです。先生として人に何かを教えることはもう無理かなと思ってたので、とても嬉しかったことを覚えています。その打診を受けて、講座を開講。たくさんの方に応援してもらい、約1年で1000名以上の受講生さんと出逢うことができました。
開講して半年がたったころ、オンラインスクールCLASS101さんのオンラインのライブイベントに水彩講座の講師として登壇することになりました。
このイベントの企画の中で「15分で絵を描く」というミッションがあり、これに備えて2週間前から毎日15分練習をすることにしました。そこでこの練習の様子をTikTokの動画にすればいいのでは? とひらめき、2年ぶりくらいに動画を投稿しました。
このような15分チャレンジ動画を何本か投稿するも、再生回数は全く振るわず。ああ、このアカウントはもうだめなんだ。いや、やっぱり私のイラストとTikTokの相性が良くないのかな。
またしてもアカウントや自分のイラストとの相性のせいにしていました。
今だからわかる、バズらない理由。
「15分チャレンジ企画」は、今見返せばバズらないのは当たり前。
今は少し長い動画も投稿できるようになっていますが、当時は特にスピーディで短いコンテンツに慣れていたTIkTokのユーザーさんにとって特におちのないどこの誰か分からない私の話と練習しているところなんて最後まで見る理由がありませんでした。
それから、動画の意図もよくわからないですよね。私は普段水彩画を数時間~数日かけて描き上げます。だから15分で描くということは、私にとってはかなりの挑戦なんです。でも、それって普段から水彩画を描いている私目線の話であって、TikTokの一般的なユーザーさんからすれば、普通だったのだと思います。
この頃はアカウント名も「momo」だけでした。それだけじゃあ何をしている人かわからないですよね。イラスト専門アカウントなのだから、今は絵が好きだと一目でアカウントの特徴がわかるようにしています。ちょっとしたことですが、分かりやすくすることによって、絵が好きな人に届きやすくなりました。
突然のバズ。アカウントのせいじゃなかった。
「15分チャレンジ企画」も伸び悩み私のアカウントはもうダメだ……そう思っていたころ、たまたま夫から送られてきた子どもの動画にオチがあって面白そうだったので投稿してみました。最後まで見てもらうことが大事だということは知っていたので、一応見てもらえそうなコメントを添えました。
一度、動画を見てみてください。
何気ない育児の一コマです。最後のオチまで気になってみてしまうところや、コメントで気付いたのですが、ちょっと心霊現象かなと思わせる感じが良かったのでしょうか。
はじめて5桁台「k」、つまり10000回以上まで再生数が伸びます。この動画は最終的に3.4万回再生まで伸びました。
このアカウントは生きてた!
希望の光が見えた!
と、嬉しく思った反面、これまでのイラストの動画が伸びないのはアカウントのせいではなかったという現実も証明されてしまいました。
子どもの投稿は伸びるが、イラストは伸びない…
子どもの動画がバズった要因を考えました。その結果、最後まで楽しんでもらえることが大事だと仮説を立て、その点を改善した15分企画のイラストの動画も投稿してみました。
結果は、やはり伸びず。ためしに、流行りのフォーマットで面白そうな子どもの動画を投稿したところ8万再生まで伸びました。
なんでイラストの投稿は伸びないの?
悔しい!!!
イラストアカウントをやめて、子どもの動画を投稿するアカウントに変えようか。何度も思いました。ですが、他の子どもの動画を投稿しても伸びないことがあったので、アカウントの方針を変えることを思いとどまりました。そして、一つの結論に至ります。
子どもの投稿だから伸びるわけでなく、イラストの投稿だから伸びないわけでもなく、つまりは動画の質だろう。でも、質の高い動画ってつまりはどういうこと? 理由はわかったけど、どうすればいいかの答えを出せないままでした。
コメントの力を借りたイラスト投稿で初のバズ。
私(おばちゃん)は、そもそもTikTokの空気感が分からないから、数少ない貴重なコメントを下さっている方に頼ろう!そう考え、動画の作り方を変えてみました。
これが、その動画です。
まずは、過去の投稿にいただいた「絵だと気づかずに食べちゃいそうなレベル」というコメントに引用する形で動画を作りました。それから、音楽も高校生のクリエイターさんが作られたテンポよく前向きで明るい「褒められたときに使う曲」というものを使ってみました。
すると…
20万回再生に!
はじめてイラストの動画をたくさんの方に見てもらえました!
この後もいただいたコメントへの返信動画を作り続けます。この頃から、TikTokを投稿するのが楽しくなってきました。楽しんでもらえる動画の質というのが、なんとなくわかってきたのかもしれません。私の思う動画の質とは、独りよがりではなく、見てくれる人のことを意識したもの。
コメントの力を借りた動画は、動画を見てくれている方とのコミュニケーションを取ることで、視聴者目線が生まれました。だからバズに繋がったのだと。
ミスチ再販の時流に乗って、初の100万回再生動画が生まれる。
そんな感じで動画を投稿し続けていたある日、ついに100万回再生を超える動画を作ることができました。
自己紹介でも書いていのですがお仕事として、パッケージのイラストを描かせていただいたアイスが再販されると聞いたので、タイミングを合わせて動画を作りました。
商品再販のタイミングで、Twitter、インスタには投稿があったけどTikTokにはまだあまり投稿がなかったため、一人でも多くのTikTokユーザーの方に届いて欲しいという思いで投稿。
結果として100万人以上の方に届きます。
事務所から声がかかりはじめる。
100万回再生を超えることは、数字以上の意味がありました。
まず、この動画の影響で徐々に増えていたフォロワーさんが1万人を超えました。過去投稿した動画の再生回数も伸びてきました。TikTokの動画を見ることで、私のInstagramの投稿と繋がった方が多数いて、今まで一方的に知っていた方からInstagramを通じてたくさん連絡が来ました。
それからなんと、TikTok関連の事務所さんから多数スカウトをいただいたのです。
TikTokってすごい。いろんな人に広く知ってもらうのにすごく良いツールだと実感しました。TikTokのことはまだよく分からなかったので、いくつかスカウトをもらった中からとても丁寧に対応してくださった事務所と契約し、TikTok関連のお仕事などきたらお任せすることにしました。
TikTokの公式イベントに登壇する日が来るなんて。
TikTokの公式イベント「TikTok festival SAPPORO」に登壇しませんか?
お世話になっている事務所経由で、ある日こんな連絡が来ました。光栄すぎるお声がけ。私は、基本的に休日はワンオペ育児なので家を開けることは難しい状況です。でも1日限りのイベントだということで、家族にもお願いして参加することを決めました。
イベント当日、私は会場に来てくださった方、出演された素敵な方たちと一緒にクレパス®でパンを描くパフォーマンスをしました。夢のような1日でした。
当日の様子をまとめた動画がこちらです。
私は普段、ほとんど顔を出してないので、私を見て分かる人は少なかったけれど、絵を見て「TikTokで見たことあります!」と感動してくださる人がいて嬉しく思いました。中には、私を目掛けて来てくれた方も。この嬉しい気持ちは一生忘れません。
このイベントに登壇したクリエイターの中で、私は極端にフォロワーさんが少ないのになぜ声をかけてくださったのか担当の方に聞いてみました。「クリエイター」はたくさんいるけど「地域に密着したクリエイター」はあまりいなくて、札幌のことも発信している私の名前が上がったとのこと。もちろん第一候補ではなかっただろうし、色々と力の無さを実感して悔しい思いもあったけどこのチャンスをつかめたのは自信になりました。運が良かったのだと思います。
100万回再生を連発した「1分チャレンジ」。
私の動画で100万回再生を超えたのは、現時点で7本。そのうちミスチの動画が1本、コメントに返信して作った動画が1本。クレパス®の混色動画が2本、そして残り3つが「1分間でパンを描くチャレンジ」です。
この動画は380万回再生まで伸びました。
これは560万回再生。
これは270万回再生。
この企画が生まれたきっかけは、TikTokの公式イベントに登壇することが決まったことです。動画がバズるようになってきたとは言え、TikTok公式イベントの登壇者の中でダントツ私はフォロワーさんが少ない。他の登壇される方は数百万人の方もいたけれど、当時私は3万人。せっかく声をかけてもらったのだから登壇するまでに少しでもTikTokのことを学んで、一人でも多くの方に興味を持ってもらいたい気持ちでいっぱいでした。
どうすれば自分のことを知ってもらえるか? 試行錯誤の末に生まれた企画が「1分チャレンジ」だったのです。
私が普段描いているのは、水彩画です。でもこれだと乾かす時間もあるので1分で描くのは難しいため、思い切って当時趣味としてハマっていたクレパス®で絵を描くことに。これが時間短縮の秘訣です。
100万回再生動画を連発してわかった、バズの秘訣。
「1分間チャレンジ」を通して、100万回以上再生されるバズの秘訣が少しわかった気がします。
①1分間というスピード感
前述した通り、数年前「15分チャレンジ」を企画しましたが、15分では長いのです。TikTokユーザーさんの求めているものは、よりリアルでスピーディに楽しめるものです。1分でも長いくらいです。
②見てもらう人に楽しんでもらう視点
コメントに返信した動画と同じですが、独りよがりな内容ではなく見ている人を意識し、巻き込む。そういう視点がないと動画は再生されません。1分チャレンジで言えば、1分でイラストを完成させることができるのか? というライブ感やハラハラするところが良かったのではないかと感じています。
そして、動画にいただいたコメントから学び、自分自身の活動に活かせるところを見つけて改善していきます。
TikTokは、救世主。
TikTokに投稿した動画をたくさん見てもらえたおかげで、TikTokと提携を結んだ札幌市と京都市さんからもお仕事をいただきました。
札幌市さんからのお仕事は、
私の好きなサンドイッチ屋さん「さえら 」さんと
「白い恋人パーク」さん
これらを紹介する案件もいただきました。好きなものを紹介することを仕事にできるなんて、最高です。
京都市さんからは、ずっと憧れていた京都の伝統産業のデザイン監修です。京都は私の出身地。地元に直接関わる仕事、しかも学生の頃に諦めた伝統工芸品や職人さんと関わることができるなんて夢じゃないかと思いました。
私が考えたデザインがが職人さんの手により京焼・清水焼の器になったんです。
クレパス®について、サクラクレパスさんに取材もしていただけました。
大人も楽しめる!クレパスを使った絵の描き方|SAKURA PRESS|株式会社サクラクレパス (craypas.co.jp)
今年もサクラクレパスさんと楽しいプロジェクトが始まる予定です。
こんな最高な仕事を運んで来てくれた、TikTokって本当にすごい。
本を出版します!
さらになんと!色々な幸運が重なり、クレパス®のショートムービーを見つけてくれた永岡書店の編集者さんからお声がけいただき『おいしい!イラストレッスン クレパスで描きました』という書籍を出版できることになりました!
裏表紙のメロンのような感じで、クレパス®を混色しながら色んなモチーフの描き方を解説しています。
学生時代に一度諦めた絵の書籍を出版できる日がくるなんて、夢にも思っていなかったので本当に嬉しいです。
詳細はこちらから▼
おいしい! イラストレッスン クレパスで描きました | 児童書、生活実用書の永岡書店 (nagaokashoten.co.jp)
おわりに
私の夫は、北海道のJ1リーグのチームでアスレティックトレーナーをしています。家にいる時は家事育児も任せていることが多いですが、転勤もあるし雪の一番大変な時期には数か月南国へ遠征に行き、土日祝日もほとんど仕事です。
息子たちは6歳と10歳。最近は少しずつ協力してくれるようになってきましたが、習い事の送迎なども含めてまだまだ手がかかる年齢。
そんな環境に葛藤した時期ももちろんありました。だからこそ、毎日のドタバタな育児の中で限られた時間を最大化することを心がけています。
子どもが家にいてもできること、子どもが家にいない時じゃないとできないことなどを子どもたちの成長とともにアップデートしていき、家族みんなで協力しながら過ごしています。(夫も時間を作るために休みの日も欠かさず早朝4時ごろから英語を勉強したりしています。)
と、上手くやっているように書きましたが、それでもなかなか時間を活用しきれない私にとって、TikTokをはじめ、Twitter、Instagram、公式LINEなどのSNSは、救世主でした。なかなか外に出向いていけない私に代わりに、イラストを多くの人の元に届けてくれています。
最近は子どもたちが楽しそうに練習しているサッカーに私もハマってしまい、更新が滞りがちなことが多いですが…これからも育児と時間の使い方への葛藤しつつも息抜きをかねて、工夫しながらSNSを活用し、一人でも多くの方に私のイラストを楽しんでもらえるようになると嬉しい。そんな風に思っています。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
P.S 書籍発売を記念してとうとうYouTubeまで始めたので、ここまで読んでくださった方はぜひチャンネル登録よろしくお願いします!
構成:浜田綾(NASU)
※クレパスは株式会社サクラクレパスの登録商標です。
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