ただの夢
マフラーに顔をうずめたあなたが
「ほら、あったかいよ。」とカイロを差し出す。
あなたの握るカイロを、私も握って
「ほんとだ、あったかい。」と微笑む。
たったこれだけの会話だけど、確かにある、言いたい言葉。
今日もまた、「あなたが好き」と言い出せない。
ささいなことがこんなに幸せだったと感じることができるのは、あなたが隣にいたからだと、心から思う。
自分でもわからなかったこの感覚は、
言葉にすればこんなにもシンプルだったことに
今更気付き、伝えなかったことに落胆する。
でもきっと、これだけ感受性が豊かになったのも、なってしまったのも、あなたがいたから。
隣にいる時は気づかなかったのね。
あなたとの何気ない会話ばかりを思い出しては、思いを馳せている。
あんなに寒かった思い出がこんなに温かくて、愛しい。それを思い出す時には寒さなど感じないの。思い出して、温まったあとに、つんとした寒さがまたやってくる。
やっぱりカイロは、カイロの温かさだった。
あなたの隣が温かい。
隣で寒さを感じる日が来ることを
きっと、ずっと、祈っている。
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