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砂の中にオトナを捨てたら

踏む、埋まる、踏む、埋まる。

足を踏みしめ砂丘を登るけれど、赤い砂がさらさら流れて体を沈ませる。

辺りはまだしんとした夜の中。

やっと7分目…と思うや否や、目の前に新たな砂丘が現れた。

ラクダ使いから得た情報によると、日の出まであと40分。

体力と時間の限界を考えて、時には諦めることがオトナの嗜み。

そう言い聞かせていたのに、一向に夜が明ける気配がない。

どうやら、彼は1時間間違えたみたい。


結果オーライ、やってやろう。


踏んで突いて踏んで突いて踏んで突いて踏んで突いて。

四足歩行の動物になったつもりで。

ふんでついてふんでついてふんでついてふんでついて。

甘いミントティーの飲み過ぎで太ったかしら。

ふむつくふむつくふむつくふむつくふむつくふむつくふむつくふむつく。

無我夢中でサハラ砂漠と格闘する、オトナになり切れなかった27歳女性。

痛々しいけど、清々しいじゃない。

登り切ってふと閉じた瞼を、からっと潔い朝日が貫いた。

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