路線バスに乗って財布がないと気づいた時

 何回かある。降りる時財布が無かったことが。ああ、ほら気をつけてたのに。自分は路線バスに乗るだけはベテランなのに、この体たらく…。

降りる時に払うものを持ってないと気付いたとき、全身から血の気が引く

猛烈に謝るしかない 。けれど運転手さんにただの一度も怪訝そうにされたこともなければ、嫌なことを言われたことがない。私が悪いのに、だ。

大抵が「今度払ってくださいね」とか「帰りは大丈夫ですか」とまで仰ってくださることもある。平謝りと、ありがとうございますを繰り返し、車内名刺を見てから降りる。

営業所に電話をして、運転手さんの名前を言って御礼と、お詫びをする。後日バスを降りる時に前回の分と合わせて入れますねと、料金箱に入れる。

 思い出に残る財布忘れは、随分と昔。

やっぱりバスを降りる時、財布がない事に気付いて全身が冷たくなった。泡吹きそうだった。どうしたらいいんだろうと。

その日は買い物のために路線バスに乗ったのだ。お金を貯めて思い切って欲しかった物を買いに来たのに、バス賃さえ払えない。

絶望アンド絶望

一瞬で色んな気持ちをあじわい、運転手さんにすみません、お財布忘れました。と謝りました。

どれだけ叱られるのだろうと覚悟した。その時運転手さんはこう言ってくれた「大丈夫かい?1000円貸すよ、帰れないよね?」と。びっくりした。ひたすら謝り丁重にお断りをして、バスをおりた。

タクシーを止めて、理由を言い自宅まで文無しで乗せてもらった。自宅に慌てて戻ってお財布を取って来てタクシーの運転手さんに支払いを終え、グッタリと横になった。

営業所にお詫びと、その運転手さんへの御礼をつたえた。

財布忘れた乗客になんであんなにやさしくできるのだろう。 悪い人かもしれないのに1000円貸してくれる気持ち。 あの運転手さんすごい。

そして、次の日のバスに昨日の分の運賃を合わせてお支払いさせてもらった。  同じ運転手さんだったらよかったけれど、そんなにドラマチックな展開はない。

ありがとうございました、あのときの運転手さん。

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