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東北大震災 その3 ALPS処理水

1. はじめに
福島第一原発の”海水希釈されたALPS処理水”の海洋放出について、IAEA(国際原子力機関)発行の”福島第一原発のアルプス処理水についての安全性検討報告書(約120ページ)”を読解してみた。最初に、私自身はいわゆる原子力全般について専門知識はないことをお断りしておく。せいぜいニュートン力学と一般的機械工学しか知らないので、この報告書を読み理解するには、専門用語(特に英語の略号)を私なりに勉強しつつ、読み進めた。だからこの報告書の論調なり詳細データなりはあくまで私が理解した範囲のことであり、私の理解が間違えている、と指摘されるのなら、真摯にその指摘を受け止め再度勉強したいと思うので、ぜひ、具体的に指摘をしていただきたい。私見を交えて、以下まとめてみた。
 
まず、この“ALPS処理水の海洋放出“を、声高に喧伝し、日本叩きを続けている代表的な国は中国だ。私は、中国と中国共産党は、現代の悪の枢軸の中心国,と考える。異論を承知で私見を述べると、中国共産党が現在の世界の安全保障を危機に陥れている、としか思えないのだ。ウクライナ侵略にふみきったロシア、イスラエル攻撃を止めないハマス、フーシ、ヒズボラそしてその背後にいるイラン、着々と核爆弾とミサイル開発を進める北朝鮮、その全ての黒幕に中国共産党がいる、と考える。その中共の“unlimited war”超限戦の一環が、福島第一原発の”海水希釈されたALPS処理水”の海洋放出に対する非科学的で悪意に満ち、大多数の日本国民(むろん、中国共産党シンパの一派はいる)を恐怖に陥れようとするプロパガンダである。
 
このプロパガンダに対してして、正々堂々と科学的・技術的に反論し、世界の世論を正しく形成する気概もなく、ただただ、頭を低くして“目立たないように”している我が国の政府、官僚、メディア、教育界が、その日本叩きを許してきた。さらに残念なことに、我が国にも、そういった技術的・科学的に根拠のない非難に相乗りする、自称“リベラル”の人が少なくない。
 
2. “ALPS処理水の海洋放出”への反対論
彼らのその主張は、だいたい次の論点にまとめられると思う。

1. xxxの国は、日本の対応を、”無責任”で世界につながっている海に汚染水を捨てている、と非難しているではないか。このような非難を浴びる事は、処理水ではなく汚染水であることの証拠だ。
2. トリチュウムだけを取り上げて、”安全レベル”にした処理水と主張しているが、汚染水には、トリチュウムだけでなく他の多くの放射性物質があるはず。
3. 海に捨てるのではなく、汚染水を保管するタンクを大量に他の場所に作り、そこに汚染水を移送して保管できるはず。またその土地は近くにある。
4. 海洋放出したら、魚介類の体内にトリチュウムが堆積し、トリチュウム濃度が人体に危険を及ぼすレベルまで上昇するはず。
5. トリチュウムを完全に除去する方法はあるのに、その方法を取らず安直に海に捨てるのは無責任だ。
6. そもそも、トリチュウム濃度が飲料水として飲めるほど低いのなら、みんなで飲めば良い。本当は、飲めないから海に捨てているのだ。
こういった反論に対して、元技術者の端くれとして、感覚的に強い違和感を覚えたので、自分なりに調べてみようと、まず日本政府が”処理水の海洋放出”を決定した論拠を調べてみた。それは、IAEA(国際原子力機関)発行の”福島第一原発のアルプス処理水についての安全性検討報告書(約120ページ)”だ。この報告書はネットで公開されており、全文を無料で閲覧、ダウンロードできる。残念なのは、なぜか英語、中国語、フランス語等だけで、日本語版がない。(もしかしたら別のサイトで日本語版もあるのかもしれないが。)
 
3. 反対論に対しての常識的・科学的見解
報告書を一通り読み、自分なりに理解した結果、私は、この”アルプス処理水を海水希釈して海に放出する”方法は、現時点での技術レベルでは最良の方法で、かつ安全性の問題はないし、現実的に他の処理方法はない、と納得できた。
上記の1~6の反論に対して、この報告書には純技術的に詳細に説明してある、最終決定の前に、何回も事前の公聴会を開き、民間からの様々な質問を受け付け、回答している。(日本語の質問も受け付けた。)反対を唱える人は、そうした機会に質問や反論をしたのだろうか?また、少なくともこの報告書は読んだうえで反論しているのだろうか?私の推測だが、質問も反対意見もせず、かつ報告書など読んだことはないし、また読む気もない、のだと考える。
 
この論文の共著者は、国際原子力機関の40名の委員(科学者と技術者)だけでなく、以下の国の計11名の専門家の助言を取り入れている。アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、中国、フランス、マーシャル諸島、韓国、ロシア、英国、アメリカ、ベトナム。これらの国は、基本的には太平洋諸国で、個人的には台湾が入っていないのが残念でならないが、間違いなく中国からの政治的圧力があったはず。(そもそも台湾はUN(連合国)には加盟を許されていないし、UN傘下の各種の国際機関にも加盟させてもらっていない。)またフランスと英国は国際原子力機関の加盟国で、汚染水処理の技術・施設に事業として協力してくれたものと思う。


海洋放出の影響があるかもしれない、太平洋岸諸国の科学者(中国の科学者も入っている!)と技術支援をした諸国の科学者と技術者が調査しまとめたこの報告書は、十分に信用にたる内容と考える。誤解しないで頂きたいのは、私はUN(連合国)を始め、その傘下のWHO, IAEA等は組織としては、全く信用しない。
 
前述の反対意見に対して、以下私の考えをまとめる。
 
1. 中国が非難している
そもそも、中国のいうことを信用する、という事自体、その人の常識を疑う。自分の国で数十倍のトリチュウムを放出している国から、とやかく言われる筋合いはないし、”どの口でそんなことが言えるんだ”、と思う。そもそも中国の科学者もこの報告書に外部専門家として参画している。もしかしたらその専門家は自国では袋叩きにあっているのかもしれないが。
中国共産党は“自国の専門家をALPS処理施設に常駐させろ”と、主張している。そのこと自体が、中国共産党の真意は、“ALPS”という放射能汚染水の処理技術を日本から盗みたい“、事を示しえている。ちなみに、IAEAは福島第一原発に、専門家を常駐させ常に”APLS処理水の海洋放出を監視する“と宣言している。なぜ、中国が独自の専門家を同サイトに置かなければならないのか、その意図は明確だろう。
2.検討した放射性物質は、最初からトリチュウムに決め打ちしたのではなく、実際に汚染水を実測して検出された放射性物質全て(99種類と記憶する)について検討されている。


3. “貯蔵タンクを他の場所に新設して、汚染水を無期限に貯蔵する”、方法も検討はされた。しかし、貯蔵タンクからの漏れ(技術的にどうしても避けられないリスクがある)、さらに移設する際の漏れのリスク、そして土壌への浸食を考慮すると現実的ではない。さらに、決められた処理が正常に機能していることを確認するため、リアルタイムで処理水、海水希釈水、そして海洋放出された海域の海水等を計測 し、かつWebで計測値を公開している。

4. まず処理水の海洋放出後の拡散領域を海流等を考慮してシミュレーションした。その海域をマージンをもって特定し、生息している魚介類を特定した。 実際に海洋放出される希釈処理水の濃度にたもった実験水槽に特定された魚介類を飼育してトリチュウムは体内で堆積されないことを実験的に実証した。さらに、その特定された海域は全ての漁業は禁止されている。(これは、この報告書には明記されていないが、地元漁協は、特定された海域外で、水あげされた全ての魚介類を放射能検査している、とのニュースを見た記憶がある。
さらに、処理水は海水で希釈されたものなので、海水と同じ塩分濃度があり飲めない。海水で希釈した、と考えると誰にでも分かるはず。仮に我が国の最先端の海水の真水化プラントで、真水にしたとしても、飲んだ水に含まれるトリチュウムは体内に蓄積されず、いずれは体外に排出され、結局は海洋に放出されるだけ、と考える。
 
5. トリチュウムは水素の同位体であり水にすぐに溶ける。このため、トリチュウムを水から除去する方法は、あるにはあるが、まだまだ実験室段階で、大量に除去できる工業レベルには達していない。会社名は忘れたが、ある会社が日本にその実験設備を作り、技術的デモをしていた、と記憶する。(詳細は分からないが、おそらくは水の電気分解と科学反応を組み合わせたフィルタリングだと推測する。)
 
4. トリチュウムとは何か?
以下、ネットで調べたものをまとめたので、参考にしてほしい、
 
水素(H 英語ではHydrogen オランダ語ではwatorstof 日本語の水素の語源)には、3つの同位体がある。トリチュウムは水素原子を持ち、重水素と同様に水に溶けやすい。また自然界にも存在する放射性物質である。
  ・プロチウム protium (軽水素 1H 陽子1)
    ・デュートリウム deuterium (重水素 2H 陽子1と中性子1)
    ・トリチュウム tritium (3重水素 3H 陽子1と中性子2)

 

 図1. 水素 図中の赤い丸は陽子、黒い丸は中性子、青い丸は電子を表している。

 
単純に、トリチュウムは自然界(私たちの飲み水、川、湖、海)にも存在するので、問題はその自然界のトリチュウム濃度より高いか低いかだけ。つまり海洋放出されている処理水は、自然界のトリチュウム濃度より低き制御されている。またIAEAの監視員立ち合いのもと、放出時には24時間モニターが続けれ、そのデータはネット上で公開され、誰でも見ることができる。
 
それを日本の新聞は、海洋放出された“汚染水”からトリチュウムが放出された!と大騒ぎする。私はその記事を書いた記者に言いたい。今あなたが口にしたペットボトルの水にもトリチュウムはしっかり入っている、と。またそんなに安全なら、みんなで飲めばよい、という乱暴な意見に対しては、”あなたは海水が飲めますか”、仮に真水に蒸留して飲んだとして結局は体から排出されるだけですよ、と。

参考に世界各国のトリチュウム放出量をまとめて資料を以下にあげる。

正解のトリチュウム放出


5. ALPSとは何か?
ALPS “アルプス”と呼ばれる放射性汚染水の除去システムとはどんなものか? まず“ALPS”は、 “the Advanced Liquid Processing System”の略で、 先端液体処理システムを意味する。
 
アルプスは、上記のIAEA(国際原子力機関)のWebサイトでは、次のように説明されています。
Frequently Asked Questions: Fukushima Daiichi Treated Water Release | IAEA The IAEA is assisting Japan to release water treated through www.iaea.org
ALPS is a pumping and filtration system, which uses a series of chemical reactions to remove 62 radionuclides from contaminated water. However, ALPS is not able to remove tritium from the contaminated water.
「アルプスは、一連の科学反応で(放射能)汚染水から62種類の放射性物質を除去する循環フィルタリング・システムです。しかし、アルプスは汚染水からトリチュウムを除去することはできない。」
 
このシステムは様々な研究機関、企業(たぶんフランス系)と東電が共同して開発したシステムとの事で、放射能汚染水の中心になる放射性物質の除去システムだ。ただし、水素の放射性同位体(三重水素)であるトリチュウムは除去できない。だから、トリチュウムは海水で希釈して(薄めて)その濃度を管理したうえで、海洋に放出している、というシステムだ。
 
このように、ALPSはトリチュウムを除く、各種の放射性物質を除去できる最先端のフィルタリング・システムであり、理論と実際には違うので、実際の放出水はリアルタイムでトリチュウムを含む放射性物質をモニタリングしている。そしてその測定値はちゃんとWEBで公開されている。
 
私は専門家ではないが、現時点で経済的に可能な、最高のフィルタリング・システムで海洋放出されている、と結論する。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。独語の感想や反論など書いていただけると嬉しいです。

私は何ができるか?
最後に私にもできそうなことで、本当に無視できるほどの少しのことだが、福島第1原発の近傍にゴルフ遠征に行きたい。むろん、地元の海産物、農産物を満喫し、願わくは太平洋を望む雄大なゴルフ場を満喫したいと考えている。MAGA(Make America Great Again)の主導者の一人で熱烈なトランプ支持者であるSteve K, Bannon氏の合言葉、Action, Action, and Action 「行動あるのみ」、を自分にできることに置き換えて、行動していきたい。

引用
1. IAEA comprehensive report on the safety review of the ALPS-treated water at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station
https://www.iaea.org/sites/default/files/iaea_comprehensive_alps_report.pdf 

その他(すみません、urlは追記していなかったのですが、ネット検索すれば分かると思います。)

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