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正義と悪を見極める

『インビジブル』7話。2人のバディ感がより一層強まった回だった。そして物語は悲しい展開を迎えた。

7話で始終キリコは犬飼をインビジブルとの内通者だと疑っていた。犬飼自身も要所要所で意味深なことを色々言っていた。しかしその犬飼が死んだ。あまりにも分かりやすすぎる死亡フラグだった。犬飼は内通者を探っておりおそらくその何かに気づいてしまったために殺されたのだろう。では内通者は誰なのか。私は酒向芳さん演じる塚地に一票投じたい。なぜなら金曜10時の酒向さんがこのまま何もなく終わるとは思えないからだ。映画『検察側の罪人』やドラマ『最愛』での怪演が印象深い俳優さんなので今回もこのような期待をしてしまう。

今回7話はそれまで以上に2人のシーンが多かった(毎回言っているような気もするが)。2人のシーンが増えていくにつれてますます2人のバディ感も強まっていく。

1話から4話では余裕を見せて志村をおちょくるような言動も多かったキリコだが、5話以降はそのような姿をほとんど見せなくなった。その反面志村とキリコの「共同作業」が多くなった。

ドラマが始まる前、刑事と犯罪コーディネーターがどのようなバディになるのか全く想像がつかなかった。ただ、高橋一生と柴咲コウなら最強のバディにならないわけがないという確信があった。お互いの芝居にこれほど信頼を置いている2人だからこその空気感を存分に楽しもうと思っていた。

実際ドラマが始まってからも、2人にしか作り出せない圧倒的な空気感に私は魅了されっぱなしだ。ただ並んで歩いてくるだけのシーンでここまで画になるのはやはり高橋一生と柴咲コウだからだろう。
互いに1を言ったら100を理解できるような志村とキリコに説得力があるのは、やはり演じている2人自体が「お芝居で会話ができる」だとか、「阿吽の呼吸だ」とか言うような、そういう関係だからなのだと思う。キリコからの無茶ぶりともとれる指示に応えられるのも、このドラマの中の警察では志村だけだろう。

初めは志村とキリコは何もかも対照的なキャラだと思っていた。それなのに物語が進みキリコの本心が見えてきたことで一概にそうだとは言えなくなった。キリコが過去にしてきたことは消えないが、現在の志村とキリコの関係は刑事と犯罪者ではなく共に捜査する仲間だ。性格的な部分においては、無骨な志村と慎重で計算尽のキリコ、と正反対の2人だが、その根底にあるものは同じなのではないだろうか。安野の事件を解決するという正義と弟のしていることをやめさせるという正義。時にそれが本当に正義なのか、何が正義で何が悪なのか分からなくなる。6話で志村は「何が正義で何が悪かは俺が見極める」とキリコに言った。そして7話では「何が悪なのかあなたが見極めて」とキリコが志村に言った。

ここからは私の個人的な解釈なのだが、おそらくキリコは誰よりも悪を憎んで生きてきたのではないだろうか。父の手伝いも嫌だったと言っていた。法では裁けない人を標的にしていたとはいえ、犯罪は犯罪。キリコには犯罪=絶対悪という方程式が幼い頃からあったのだと思う。しかし幼い頃からインビジブルとして育てられたキリコにはそうやって生きる道しかなかった。そして昔は純粋だった弟を非情な殺人コーディネーターに変えてしまったのもまた悪。それによって父も奪われた。
このような人生を歩んできたキリコにとって志村の「何が正義で何が悪かは俺が見極める」という言葉は救いだったのだと思う。弟を止める、すなわち犯罪を阻止するということは正義だ、と信じて動いてきたところで、その弟に「キリコは今、悪に加担した」と言われ、信じてきたものが崩れた。けれども「お前がしたことは悪じゃない」と暗に示すような言葉をかけられたことで、彼女がこれまで否定してきた自らを肯定されたように感じたのかもしれない。そしてその言葉が嬉しくてしっかりと受け止めたからこその7話、「何が悪なのかあなたが見極めて」なのだろう。キリコは志村に自分を苦しめてきたものを託した。それほど志村のことを信頼するようになったのだと私は思う。

残り3話。志村が見極めると言ってはいるが、結局は2人で「何が正義で何が悪か」を見つけ、見極めることになるのかもしれないとも思う。vsキリヒト、vs内通者、と展開するであろう物語の本筋は、vs正義と悪 なのではないだろうか。精神的にキリコを助ける志村と物理的に志村を助けるキリコがその中で互いに互いを支え、補ってたどり着いたその先の結末がどのようなものになるのか、楽しみに見届けたい。


ここで次回予告について少し。7話のラストシーンでは犬飼が助かるのか助からないのか分からない状況だった。しかし予告で大きく「犬飼の死」と映し出された。予告で死を知ることなんてあるか?と思わず突っ込んでしまった。
そしてもう1つ。何やら志村と安野の妹がキリヒトに捕まり、どちらを助けるかキリコが選ぶ、といったシーンがあったのだが、これはどうしたって直虎を思い出してしまうだろう。7話では黒髪おかっぱのウィッグを被り視聴者に殿の姿を重ねさせた次がこれ。やはり制作陣に直虎のオタクがいるとしか考えられない。そういえば黒髪おかっぱキリコを見た志村がかなり驚いて何度見かしていたのもおもしろかった。


7話放送週、公式SNSの更新頻度がそれまでの数倍も高かった。視聴者が言い続けたのが届いたのだと思った。ようやく盛り上げようという公式の気概が感じられた。しかし今週はまた更新頻度が下がってしまった。ドラマの展開が盛り上がってきたのと共にSNSの方も頑張って盛り上げて欲しいと思う。



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