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キリコの弟 その名はキリヒト


『インビジブル』もついに折り返し地点の5話が放送された。
新章突入、ということだったが今回は新章の序章といったところか。6話以降が本格的に新章のように感じた。

キリコの目的はインビジブルであるキリコの弟だった。
大きな進展ではあるがそれでもまだキリコが何をしたいのかは分からない。

志村は「ハナカマキリ」と言っていた。花に擬態して蜜を求めて集まってくる虫をおびき寄せる。これをキリコに置き換え少し補足すると『インビジブルのふりをしてクリミナルズを操り、その裏で警察に協力して彼らを捕まえ、本当のインビジブルが姿を現すのを待つ』ということになるだろうか。

それではキリコはなぜインビジブルである弟を探していたのだろうか。道を外していく弟を止めるためか。次回のあらすじにはこう書いてある。

キリヒトは、幼い頃からキリコとともに“インビジブル”として育てられ、犯罪のコーディネートに関わってきた。しかし、ある出来事をきっかけに二人は互いに距離をとるようになる。そんなキリヒトの登場で、物語は大きく動きだす。そして、キリコはキリヒトが現れたことに驚きつつも、まるで待ちわびていたかのような表情を見せた。
https://thetv.jp/news/detail/1084003/

新たな情報だらけなので一旦整理しよう。
まず、キリコとキリヒトは両者ともインビジブルとして育てられた。ということはキリコもインビジブル。(インビジブルのウォレットが2つあったのもそのためか)だとしたら上で書いた「ハナカマキリ」のくだりは『インビジブルのふりをして』ではなく『インビジブルとして犯罪をコーディネートするふりをして』の方が正しいのかもしれない。インビジブルの自作自演、という点はキリヒトがコーディネートしたものをキリコが解決したということのような気がする。
次に2人が距離をとるようになった出来事。これが3年前の安野の事件なのだろうか。気になるところだ。
そして、あの少し潤んでいるように見えた目はどうやら、キリヒトを待ちわびていたかのような表情らしい。そう捉えるのが正解だったのか。

姉を取り戻すために突然姿を現したキリヒトは、安野(平埜生成)が殺害された3年前の事件も自分がコーディネートしたと志村(高橋一生)に告げる。さらに、現在進行中の事件をほのめかし、今回依頼されたターゲットのうちの一人でも救うことができたらキリコを諦めると言い残し、去っていく。

https://thetv.jp/news/detail/1084003/p2/

キリヒトが姿を現したことでこれからどう展開していくのかは分からない。だが今更キリコがキリヒトの方へ戻るとは考えにくい(戻ったら泣く)ので、志村とともにクリミナルズを捕まえながらキリヒトを追うのだろう。

キリコは志村に本当のこと、すなわち弟のことを話そうとする時、いつも泣きそうな顔をしている。なぜだろう。そしてキリコとキリヒトをインビジブルに育てたのは誰なのだろう。キリヒトのさらに後ろにもう1人いるような気がしてならないのだ。それも含めて、キリコとキリヒトの過去が今後描かれることを期待したい。


私はやはり高橋一生、柴咲コウという役者の芝居が好きだ。
ひとたび2人が画面に映ると、一瞬でその画面を、画面の向こうの世界を支配し、見ている我々を引き込んでしまう。
例外なく今回もそうだった。

5話は2人きりのシーンが多かった。
ホテルで2人が対峙したシーンではいつもと違い余裕のない、キリコの「キレッキレじゃん」が聞けた。こちらとしてはその前にキリコが「来て」と言って志村の腕を掴んだところで、既に余裕がなかったのだが()
志村に本当のことを話そうとした時のキリコの泣きそうな顔。マー君からの電話に平静を装っていたが少し震えていた声。キリコという人間のこれまで見せてこなかった人間らしい一面が見られた気がした。

そしてその後、2人で仲良くドライブデーt...ではなくてキリヒトからのコンタクトを待つ。かつては2人でともにインビジブルとして行動していたため、それほどまでにキリコはキリヒトの動きを読めるのだろうか。それはさておきこのあたりから2人のバディ感が強まっていったように感じた。(気づいた人も多いだろうが、今回5話から志村が「キリコ」と呼ぶようになったのだ。それまで「お前」とか「あいつ」とかだったのに)街頭ビジョンを見上げるシーンなんかは完全に、お互いの言葉を発するタイミングが分かっていたような会話のテンポ感だった。

ラストも非常に良かった。武入を助けるために奮闘する2人。志村だけでなくキリコまでもが必死な様子は、誰が見ても「バディ」だったのではないだろうか。これまで志村ばかりが必死になって水に飛び込んだり、粉にまみれたりしており、キリコはどこか余裕のあるような飄々とした様子だった。(特に志村の前では)しかし5話は2人の「共同作業」で2人ともキリヒトに振り回されていた。これが2人のバディ感を強めた理由だと思う。そしてその空気感を台詞1つ1つや、それらの間、表情、その全てで生み出し、確実にこちらに届けてくれる。そんな高橋一生と柴咲コウの芝居に今回もまた魅了されたのだ。


昨年放送された『天国と地獄~サイコな2人~』というドラマにおいて、高橋一生演じる日高陽斗は、兄が犯した殺人という罪を、兄が死んでもなお全て自分が被ろうとした。しかしそれは綾瀬はるか演じる刑事、望月彩子の説得により防がれた。入れ替わりを経て互いのことを誰よりも分かっているからこその結果だった。これに関して私はある意味で「政次のアナザーエンディング」だったのではないかと思っている。途中までは確実に日高も政次と同じ道をたどっていたのだ。(脚本家の森下佳子さんは8話まで書いてからそれに気づいたらしいが)だが、「地獄へは俺が行く」なんてことには日高はならなかった。(9話で「何も2人して地獄へ行くことはありませんよ」というようなことを言ってはいたが)

今回の『インビジブル』
「高橋一生と柴咲コウ」と言われたらどうしても直虎が浮かんでしまう人も多いだろう。それならばそれを最大限に生かした結末、というのもありかもしれない。
大河では2人で幸せになることはできなかったが、今度は2人で幸せになるのも良い。
今度は逆にキリコが全てを背負うというのも悪くない。
いずれにせよ、ドラマ制作陣にはこの「直虎コンビ」という話題性も演技力も圧倒的な2人の再共演を、良い形で生かし切ってほしいものだ。

残り5話。これからどんな展開が待っているのか。どんな2人を見せてくれるのか。後者の方が気になるのが本音ではあるが、ドラマの物語も楽しみながら次回以降も見ていきたいと思う。









キリコの弟がキリヒトって安直すぎやしないかと思ったのはきっと私だけではないはず。




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