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ピーターパン症候群

僕には3年ほど前から一緒にいる人がいる。

まぁ、何度か別れたり付き合ったりを
繰り返しているのだが。

彼を一言で表すなら''大人になりきれなかった少年''みたいな感じ。要はピーターパン症候群である。そんな彼にここ数年間ずっと目が離せない。

始まりは、腐るほどに普及したインターネット。
失恋でヤケになって、いれた配信アプリだ。元々人の声が好きな僕は、暇つぶしにいい声の配信でも聴いてみようと思いインストールしたのがキッカケである。

ちょうどアプリを入れた高3の夏終わりぐらい、
猛威を振るったコロナのせいで僕の高校生活は堕落しきっていた。今まで、40人近くいた教室も密集を避けるため人数が分けられ、同じクラスに居るはずの友人が居ない、学校に行っても空席。なんてこともあった。


何もワクワクすることが無い。
学校は好きな方ではなかったが、友達もそれなり多かった僕は、あんなに胸がザワザワして一喜一憂する場所は他になかった。



そんな場所を突然、通りすがりの通行人に持っていかれた。空虚な感覚だった。



ある日、僕は学校をサボった。
まぁ正確に言うとたぶん昼夜逆転していて、起きた頃には既に授業が始まっていたのだろうけど。

僕は、そろそろ起きようと思いリビングでそのアプリを開いた。基本的に、枠主とゆっくり話したいタイプなのでリスナーが多い枠はあまり好きじゃない。そんな中、物凄く気だるげに配信をしてる枠があった。試し聞きできる機能で暫く聴いていたのだが、あまりにも堕落しすぎているというか、なんだこの人はと思った。

どちらにせよ暇だったので、枠に入って配信をしばらく聴いていた。学校をサボった旨を伝えると、サボり野郎は僕が寝るまで起きていろ!!と言われた。初めて聴きに来たのになんだコイツ!と思ったが、

「たぶんこの人が寝るまで枠にいてしまうなぁ」
直感でなぜかそう思った。

なんだか、懐かしいというか、おもわずムキになってしまうような、顔も名前も知らない初めて聴いた声の人にそんな風に思うのも妙だが、そう思った。

今になって考えると、これが出会いのきっかけだなんて傍から見たら、顔も名前も知らないのによくもまぁ好きになったなと思われても仕方がない。
そもそも住んでいるところが、東京と大阪で離れていたので、会いに行くのに高校生の財力ではとても限界があった。ただ、なぜかどうしても会いに行ってみたい、話してみたい。そんな人だった。

ただ、所詮ネットでの繋がり。
正直あまり会う気は無かった。
しかし、彼が何時になったら会えるんだ!と言うものだから、思い切って会いに行くことにした。


僕が初めて君に会いに行った日は、今でも鮮明に覚えている。親に、友達の家に泊まってくると嘘をついて乗った高速バス。そもそも県外に1人で出かけることなんてサラサラなかった僕からしたら若干恐怖すらあった。会いに行く人は1度も会ったことがなくて、本当に来てくれるかどうかも分からない。自分の行動力は予測ができないというか、危なっかしいなとも思う。

ただきっと、当時の僕はワクワクしたかったのだ。
制限され続ける毎日にウンザリしていたのかもしれない。


目覚めるとそこは、難波駅。
テレビでしか見たことない世界がそこにあった。彼を待つ時間、意味が分からないぐらいドキドキした。楽しみと不安がごちゃ混ぜになった感じ。
久しぶりにこんなにドキドキした。

少しすると、
遠くからこちらに向かってくる男の人。
なんの根拠も無いがあの人だと思った。
初めましてなのに、つい2日前に会った人のようなそんな感覚だった。未だかつて生きていてそんな人が居ただろうか。

フワフワしたまま大阪を案内してくれた君は、にこにこしながら可愛いねぇ〜と言っていた。これにまんまと引っかかる僕も僕である。笑
ただ、話していると不思議と落ち着いた。
22の彼はまだ少年のような心持っていたからなのか、当時17の僕からしたら親近感さえあった。


そんな君が、約3年経った今日も
僕に電話をかけてくれる。

会える頻度は昔より減ったが、時期に僕も
そっちに行くよ。




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