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ミュージカル『元彼鎮魂歌〜モトカレクイエム〜』キャラクター及びキャスト感想、追記

はじめに。
この記事は2024年1月19日〜1月25日に中目黒キンケロ・シアターで上演されたミュージカル作品『元彼鎮魂歌〜モトカレクイエム〜』の登場キャラクターと、演じられたキャストさんそれぞれの感想を書き出したものです。

鑑賞した5公演を通しての記憶、それらを通しての思いなどをざっくり書いているため、文章が荒かったり、説明が最小限だったりします。詳細なレポではないので、その点はご了承ください。

なおミリアンさんのマルチ、蒔田さんのオーガニック、飯田さんのたっちゃんは未鑑賞のため、記事には含まれていません。すみません…

15役分+34人分、亡霊役はペアで書いているため、合計47項目になります。
目次からそれぞれの役に飛べるようになっています。

事前情報、脚本、曲に関する感想は最後に記しました。

推し(たっちゃん)は別記事に分けています← だいぶ長いです。
一応目次はつけましたが、リンク先がほぼそのまま次のリンクです。真面目な考察と与太話が半々くらい、需要は謎。
ゆきなと美樹との絡みについては各場面についての項で掘り下げていますので、もしご興味ある方はそちらも併せてどうぞ。

初作成のnoteのため読みづらい点が多々あるかと思いますが、よろしければ適宜お役立て?頂けますと幸いです。


【作品のあらすじ】〜ざっくり説明〜

都内オフィスで働く主人公ゆきなは、ある日突然婚約者に別れを告げられる。
現実が受け入れられず自暴自棄になるゆきな。そんな中偶然出会った同級生の郁美(マルチ)に誘われ、元彼とヨリを戻せる禁断の術「モトカレンキンジュツ」を執り行う儀式に参加することになる。
ネットを通じてN県郊外の未霊多良神社に集まった合計8人の女と男。しかし思わぬ乱入者により儀式は中断、全員が祟りを受けてしまい、各々が異なる幻覚に悩まされるようになる。様々な祓い師の力に頼るも、やがて怪異は8人の外にまで広がっていき…果たして彼らは内なる自分にかけられた呪いを解くことができるのか。そして元彼との復縁はできるのだろうか。
(公式の紹介文を元に、記事に合わせて補強して書いています)

【元彼と復縁したい女(男)たち】

ゆきな

正と負、明と暗を行き来するはちゃめちゃジェットコースター系主人公。
女性の内面の嵐をそのまま視覚化したようなキャラクター。観客として見ている限りでは、さほど表裏がないというか…? TPOはわきまえつつも感情を隠さないので、心情を拾いやすい。自主的ではなくても誘われたら乗るフットワークの軽さ、思い切りの良さがあり、何気に行動力の塊だと思う。
ギャグ的な誇張表現も含まれるけど、その分どれも伝わりやすい。いや誇張だけど誇張じゃないところが怖いです…アラサーの女子あるあるが随所に垣間見える、共感しやすいキャラでした。
ソロ/メインで歌う曲はどれも一際印象に残りやすい美しい旋律。主人公らしさがとても綺麗に引き立っていたと思います。

水野貴以さん
失恋前も失恋後も、乙女のエネルギーが溢れ出過ぎているゆきな。溺れ方も落ち込み方も全力で、何だかんだ自分で自分の道をこじ開けていく強さがありそう。
愛嬌だけに止まらないエネルギッシュさ。圧倒しつつも自然と観る側を巻き込んでいく、王道の主人公と言うべきゆきなだったかなと思います。若すぎないけど若い、30は越えていないくらいの女子なのかな、と受け取ったのですが、あまりにもリアルな再現が上手すぎませんか?

清水彩花さん
都会的でしごできの雰囲気が感じられる、大人っぽいお姉さんタイプのゆきな。女子ファッションの着こなし力がすごい。
それだけに口の悪さや行儀の悪さ、意外なおどけ方が、実際の女子の外向きと内向きの顔のギャップあるあるとしてわかりみが強すぎる。こんなに振り幅が大きい演技なのに、安定感を感じるんですよね。出力の調整が巧みと言ったらいいのか…華やかだけどどこか親しみやすさもある、ハコと作品に寄り添ったゆきなだったと感じました。

マルチ

ゆきなの良き相棒。ボケメインだけど時にツッコミもあり。
まず、マルチのマルチについては肯定も否定もしない。これは優しい視点だなと思った。
マルチにとっては、マルチ界隈に身を置くことで生き生きと毎日を過ごすことができるんだろう。彼女なりの未来への希望の持ち方というか…実際、劇中のキャラでは彼女が一番人生を謳歌しているように見えるし、元彼への執着は最も薄い。是非はともかく今彼と比較してうっとりと思い出せる心の余裕たるや。とにかくハッピーに満ち溢れている。ネガティヴ出まくりのゆきなと対照的でとても良いコンビ。
マルチが果たして自分の褌で生きているのかというと、はたから見れば何とも言えない気がする。少なくとも彼女にとってはそうなのかな。あらゆる意味で羨ましい。
でもハブタイ様と対面した時ずっとそわそわしていたのが気になっていて、何か同族らしきにおいを感じたのかなと…この描写を入れる感覚は好きです。

中村萌子さん
圧倒的歌唱力。圧倒的プリンセス。美。何もかも揃いすぎている。これが才能… 凄く良い人だけど、もう少し言うとピュアな人かな。そのせいか浮世離れ感が凄い。心から良かれと思って勧誘している感じがする。お姉さんタイプの清水ゆきなさんとの並びはとてもエレガントで、安心というか、しっくり来る感じでした。
褌の歌は天から降り注ぐ光のような美しさ。褌なのに。

北川理恵さん
見た目は可愛らしいのにギャグ表現があまりにも上手すぎて、ギャップが凄い。ここまで!?と思うほどギャグの持ち札の数が圧倒的。歌と演技が全く同時にハイクオリティって凄くないですか。パワーと技量の強さ。商魂逞しくて生命力の強さが溢れ過ぎているので、見ていると元気になれる。体当たり型の水野ゆきなさんと並ぶと似た者同士に近く、物語をぐいぐい引っ張ってくれる良いコンビだったと思います。

オーガニック

劇中の柱。元彼鎮魂歌の世界観はこの人によって作られている部分が大きいと言っても過言ではないと思う。M1の歌い始めは実質彼女からなので、ここが既に伏線なんですね。
特徴的なのは退場曲が神社のソロ曲の変調であること。彼女に関してはキャラ付けから退場までが一本の糸で繋がっている。そのことから儀式の前から旦那さんは故人で、その魂を呼び戻すのが真の目的だったんじゃないかと思っている。儀式の作法がだいぶ黒魔術っぽいし。
行きすぎた健康志向がどうも、癌と民間療法を思い起こさせるところがある。無関係とは思えない…
生命や生存について考えることとあの世へのコネクトが表裏一体なのは上手く言えないけど納得できる。行き着くところは同じということか。
不気味さを帯びた切ないラストだけど、生と死の一体化を果たすことができたのは本望だったのでしょう。

福島桂子さん
溢れ出るベテランの力量。何から何まで惹きつける力が凄まじいです。声も仕草も表情芸も凄くて、どこに出ていてもついつい見入ってしまう…存在そのものが強い説得力。貫禄と可愛らしさがこの上ない形で完成していらっしゃる。ゆきなが傘の思い出を語るシーンで誰よりも心配そうに見ているので、この時点で良い人なんだなと。歳月に比例する感情表現の豊かさ。語彙が足りない…M1のソロがもうずっと耳から離れません。

黒瀬千鶴子さん
時にはコミカル、でもブレない、という印象でした。そもそもオーガニックさんは劇中では数少ない、最初から最後まで一貫している人なのだけど、黒瀬さんの場合は特に分かりやすかったですね。自分の信条に対する揺らぎなさというか。柔らかさの中に芯があり、凛とした立ち姿によく表れていたと思います。
ロイド=ウェバー版のマダムジリーを思い出す感じ。見えざる世界に足を踏み入れているからこそ滲み出る凄み。

女医

まず第一にしっかり者だなと。孤高に振る舞う現実主義者のようで、意外と優しかったり、思いやりがあったりする。ガチが殴り込んできたシーンでは真っ先にグラドルを逃すし、冷静に状況を把握して皆を庇おうとしていたりする。人を救う側の真面目さと使命感が行動の端々に出ている感じ。格好良い。
元彼が小児科というところが気になっていて、たぶん子どもに関する価値観がだいぶ違っていたんじゃないかな。
みしゃぴとの関係がとても良いドラマでした。この2人の物語だけで一本映画ができてしまう。人を支えることで自分もまた支えられる。人を救うことで自分もまた救われる。みしゃぴと出会うことで女医さんも救われたんだなと思う。エリート路線を突き進む中でもしかしたら薄れてしまっていたのかもしれない、本当の意味での救いと癒しを思い出せたのかも。

伽藍琳さん
初日で拝見してとても印象的だったので、自分の中では伽藍さんがこの役の基本イメージでした。仕事に誇りを持ちながらも自分の年齢に焦る様子、諦観と哀しみ。みしゃぴに対する母親のような目線、愛情深さ。擬似的家族のような関係に変化していく様子がとても丁寧に深みを伴って表現されていて、作品への没入感を高めて下さった存在でしたね。人間ドラマとしてあまりにも上質。目に見える以上の情報量が見える。
経験値がそのまま情感の豊かさに繋がっているのだろうと想像できる、とても素敵な女医さんでした。

響れおなさん
台詞と歌があまりにも綺麗に滑らかに繋がっていてびっくりしました。宝塚の力…登場シーン全てが一続きの作品。
宝塚は映像でしか分からないのですが、本番数の多さと日々の鍛錬が窺えるプロフェッショナルのお仕事でした。この距離で見られたのはすごいことなのかも。
職業意識の高さがそのまま通じるのか、医者という名の仕事人のオーラが凄くて、絶対失敗しないんだろうなという謎の安心感がある。楽日の1回のみの鑑賞なので、もっと存在したであろう拘りを掘り下げられず残念…
みしゃぴとは住む世界を異にする同士というか、異文化交流としての寄り添いを感じたかも。

中川真希さん
みしゃぴに対して、一回り年上のお姉さん的立場から忠告してくれる女医さん。年の離れた姉妹に近いかなと思いました。
バリバリ仕事をする資産家ほどアクティブ重視で飾らない格好をしがちみたいな、そういう話を聞いた気がするのですが、まさにそのタイプの具現化でしたね。基本モノクロだったのが私服で柄入りパンツになる変化も良きです。シャンソンのシックなドレス、やり切れなさが切々と伝わるハスキーボイスも素敵でした。
お衣装へのこだわり、みしゃぴ比較など興味深く読ませて頂きました。衣装担当との兼任お疲れ様でした!

みしゃぴ

色々と問題はあるかもしれないけど、でも観た人はほぼ皆、この子のこと好きでしょ?と思っている。
ソロ曲、総じてかなり難易度高くないですか??トシくんの歌は一見単調だけどその分技量が出るし、蝶々の歌もかなり高度なバランス感覚が必要だと思う。皆さん凄すぎる。
ダンス部ということはたぶんそれなりに友だちもいて、わりと青春を謳歌していたんじゃないかなという背景がうっすら垣間見えるような…本来、愛され力はある子なのだと思う。
じいじの存在は根本的解決にはなっていないのだろうけど、それでも最後の「じいじに預けてきた!」の口調はとても明るい笑顔なんだよね。女医さんに助けられたことをきっかけに、大人に頼ることを肯定的に捉えられるようになったのかな。そうだよ頼れる大人は頼っていいんだよ、まだ10代なのだし。依存から共存へと変わっていくことができて、本当に良かったなぁと思えるラストだった。
別時空では花嫁姿なのが何とも切ない優しさ。
女医さんとの会話でサラッと出てくるマタニティ、この言葉遊びの伏線は発想の勝利だと思う。

小林風化さん
トシくんの歌に初日からびびりました。
童謡のようなシンプルなメロディーラインなのに、これでもかというくらい伝わる高いスキル。音に込められる表情があまりにも豊か。丁寧でありながらスッと耳に入ってくる自然さ。歌唱指導を担当されているのも納得でした。
ふわふわした言動の後の激昂も凄かった。場の空気を一瞬にして変えてしまう凄まじい一撃。作品全体を通しての名場面だったと思います。母親の自覚は一番強く感じたかも。子どもに愛着を持つ母親とまだ10代の子どもである自分との間を行ったり来たりしてるような。

荻原美彩さん
3人目で拝見させて頂いたみしゃぴでした。だからこそ一際リアルに作り込まれた表現にびっくりだった。なんか新宿の映像で見たことある…と思うくらいに、再現があまりにも生々しくリアル。地に足がついておらず、現実と非現実の間をずっとふらふらし続けている。知っているでしかなかった。現実とリンクすることでひしひしと伝わる深刻さ。
荻原さんの表現で作品に社会派の色がついていた気がします。すっかりタクシー気分の「足立区まで」の言い方が一番好きでした。

梶浦恵さん
色々持ちすぎているとはこのことでは?メイドカフェで絶対人気だったと思う。
見た目も声も美少女でかわいらしいし、ファッションも10代が好みそうなフェミニンさだっただけに、こんなはずじゃなかった!という悲痛な叫びに同情してしまう。そうだそうだ!って同意したくなる。逆に言うと母親っぽさはかなり弱い感じで、それって結構ギリギリだったんじゃないだろうか。母親という現実を認められなかったのかもしれないから。

グラドル

劇中かなり多くの説明が入るので、そこには添える必要はないかな?あまりに虚飾に塗れすぎているせいで、時折見せる本心はこちらまで痛みを覚えるような哀れさがある。チラリと出てくる経歴から、夢叶わず拗らせていったのだろうなぁと…
たぶん皆が同じ感想を抱くと思うのだけど、ここまで重症だといっそ清々しい。でもちゃんと改心するのは偉いし、全然違うタイプのひかりと同じ職場というのも面白い。後述しますが、意外と現実を見ている生き方に何か思うところがあったのかな。夢を見つつも地に足ついてるというか。彼女に対しては、気にしすぎないでいい、みたいな楽さもあったのかも。
髪を切った記念の配信があまりにどうでもよすぎて笑ってしまう。あと飼い犬を褒められた時のリアクション、単なるマウントだけではない感情が一瞬垣間見えていた気がするので、ここは良い意味でちょっと意外。
追記:もしかしてグラドルのバックについてたシゲさんって、過去作のDOPE MENでまっつんがいつの間にか仲良くなっていたN○Kの重役のシゲさんと同一人物だったりします?カフェモンネクスも渋谷だから、地理的にあり得る…?

愛理さん
グラドルという言葉のそのままのイメージがおそらく一番、「分かる」という感じだったかと。需要を理解した上で女を武器にしている。だからめちゃくちゃ太いシゲさんがついていると思っている。
最初からわりと腹を括っていそうに見えたけど、それでも自分を変えようと思ったのは「悪くないわね」というセリフがすんなりとラストに繋がったということかな。そう思うと最後まで承認欲求は変わらないのも納得なのかもしれない。

鞍掛未夏さん
スタイルが良すぎる。ファッションも容姿を引き立たせるつよつよのキメ方で、明らかに一般人とは一線を画している。芸能人のような振る舞いや自己を盛りまくるある種の意識の高さも、納得と言えば納得。パッと見でも陰の努力が窺い知れるだけに、その分現実との乖離が辛いだろうな、と色々想像しました。視覚的インパクトがとても強いグラドルだったので、頑張りが報われて何か良いお仕事ができる未来があってほしいんだなぁ…

野田夏希さん
虚栄心を表す煌びやかなドレスに加えて、他人への媚びを意識しまくりのどこか虚ろな目線。なんとも不安を与えるキャラクターでした。自分は可愛いという認識で愛嬌を振り撒きながらも、その可愛さの型を人に肯定されないと生きていけないみたいな…ポンスキーの皮肉が一番効いているかもしれない。愛玩ばかりが目的でそれ以外がどんどん歪んでいく、人の手に命運を握られている。その状態から自分の足で歩くようになったという一大変化は結構な事件だと思う。

ひかり

予告動画では一際おバカという説明でしたが、そうとも言えるし、そうじゃないとも言えるかも。すんたに依存しているようで、実はあまり依存していない気がする。虚像のすんたで満足していてそれ以上を求めていないから。恋に恋しているだけで、それ以上の真剣さは別にないっぽい。恋をお金で買っているという状態についても、そこまで不満はなかったのかな。そういう意味では、夢を見ているけど現実も見てる。掛け持ちのバイトでの勤務態度にもそれが出ている感じがする。
ゆきなと少し似ている。ゆきなの別ver.みたいな。
すんたへの溺愛がオタクにとって微妙に他人事じゃない感あるので、地味に冷や汗が出てくる…やめて…
自分が見た中では三者三様が一番くっきりしていたキャラかな。全員すんたとの関わり方が微妙に違う感じがした。推し活は深い。
別時空では思いがけず幸せを掴んでいるのが何とも言えない皮肉。

鎌田亜由美さん
ワイルドな姉御。保育士という過酷な仕事を生き抜く力を一番強く感じる。その意味では一番安心感のあるひかり。すんたに対してもたぶんその延長線上で「この人は自分が面倒を見てあげないと」という感じだったんじゃないかなと。でもすんたにこの逸材はもったいないぞと思ってしまった。小寺のぞみとの対等に張り合える相棒感、とても良かったです。本来の姿という感じ。

水島麻理奈さん
言葉で表現するのが難しいけど、見た人には分かる。堅苦しくないひたむきさ。現実と虚構を程よく繋ぐ存在。
だいぶ主観が入るけど、3ひかりの中ではすんたへの依存度が一番高そうだなと。3人の中では相対的に自己肯定感があまり高くなさそうに見えたからかな…営業と分かっていても、切実にすんたを必要としていた感があった。その分ラストでのぞみに「楽しかった!」と言えるのは、大きな成長と言えるのかな。

鈴木美祐さん
すみません、あまりにもオタクの友達に似てます。解像度のせいか一女性としての完成度がとても高く見える。迫力を備えながらも自分の持ち味を分かっている感じで、結果かわいい。男っぽくありたいけど女の子として扱われるのも嬉しいという複雑な単純さ?上手く言えてるのか…
バイト中のサボりが太々しくて笑ってしまう。とても声が綺麗で聴きやすかったです。もっと歌うシーンがあって欲しかった。

のぞみ

気が強くクセも強いオネエゲイ。口がわるくて良くも悪くも遠慮がないので、イラッととスカッとが代わる代わる飛び出している感じ。
現実にいるにはいるけど身近というほどではなく、お芝居としての誇張も多く感じられるので、実は感想の書き出しに一番苦戦しました。どちらかと言うとイヤな奴だと思うけど、こういうはっきり物を言う人がいることで作品も世界も回っている、みたいな…?実際、元はライバルだったひかりの心を大きく変えたわけで。
ざっくり言うと、デレがほとんど出てこないツンツンツンデレみたいな性格でしょうか。
お二方ともそうだったかきちんと見れていないのですが、ガチとの戦いでずっと距離を取っているのが地味にツボ。柄杓を持って挑む女子たちには加わらず、相手の手が届かない安全圏から「あんたたちやっちまいな!」と言い放つシーン、生意気だけどビビリの一面がわかりやすく出ていて好きすぎる。

小寺利光さん
あまりにも自然に女子に馴染んでいる。
見た目は普通に男性のオネエだけど、だからこそ気取らない安心感を与えるのかな。性別があるようでない。
物言いが強烈で異色な経歴を漂わせてはいても、存在としてはわりとフラットなのではないかな?と感じましたね。様々な女性が入り混じるカオス集団の中にある種の落ち着きをもたらすための必要な一人だったんじゃないか、と思う。
パンフのコメントがまさにのぞみそのもので、コメディセンスとしてすごく好きです。

穴沢裕介さん
のぞみ自体がそもそもつよキャラだけど、それを何乗にもパワーアップさせる圧倒的ダンススキル。どこまでも研ぎ澄まされた感覚。衣装も相まってセンターに躍り出た時は大輪の華で、迫力ある臨場感に圧倒されましたね。動作の一つ一つが芸術的、美、そこにいるだけでただただ映える。本業はアート寄りの仕事だと勝手に思っています。
一見近づき難くてお高く止まっているように見えるけど、意外とそうでもないというカワイさも良い。初日の1回のみのため、あまり解像度を上げられなかったのが残念…!

【復縁の鍵を握る者たち】

サイトウ

あまり多くは語られませんが、特殊な家に生まれて色々苦労してきたのだろうな。
能力は特殊だけど、感覚は至ってまとも、何なら純粋でさえある。劇中では何気に貴重な無私の善良さ。弱気を口にしながらも後半戦では主人公たちと観客をしっかり導いてくれる、とても頼もしいキャラ。
舞台上にいる時間はそこまで長くはなくても、清涼感たっぷりに歌い上げられる朝日の曲は一際記憶に焼き付く情景でした。登場時の陰気さとは対照的なM15の優雅なダンスにより、最後に添えられる爽やかな余韻。
上司役は少し雰囲気は違うものの、そこまでかけ離れている訳でもないので、終始安心できる存在だなぁと。

大野朋来さん
現代っ子のお坊ちゃん。
そこまで苦労している感じではなさそうだけど、人は見た目によらず…ということなのかな。自立しきっていないというか、父親ありきの前提をかなり強く感じた。
普通の家系ではないからこそ一般社会に過剰に適応しようとして、一般人以上にスマートな雰囲気を醸し出しているとか…?
自分にはできないと思っていたことができた、という喜びが目に見えて表現されていたように感じたので、成長はあったのだと思います。確実に。

清水廉さん
ただただ日陰で生きたい、という思いが外見に表れすぎている。見るからに不幸体質。
憑かれやすさに疲弊している様子がとてもよく伝わるサイトウでした。痛みを自覚しているからこそ、人の痛みにも共感できるのかな。
若くはなさそうなので、この年齢まで人との関わりを避けて生きてきたとなるとそれはそれでしんどい。長年にわたり人と深く関わらなかったことで形成されたあのピュアさなのか…色々あるかもしれないけど、これからの人生を満喫してほしい…

たっちゃん

大類幸一さんのみの鑑賞です。
長すぎるので分けました→ 元彼鎮魂歌のたっちゃんについて。推しを推す視点より

たっちゃんの出番はわずか10分ほどですが、 記事は8000字超あります。
なんで?

ガチ

赤澤涼太さん
赤澤さんのみの鑑賞です。ガチくんは間違いなくヤバい人間ではあるけど、ある程度以上の熱量を有したオタクにとっては、分かってしまう部分もあるという怖さがある。でも加害性として表に出てきてしまったらもうそれはアウトなんだな。
しかし考えてみれば三茶のゆきなも似たような言葉を発してるんですよね。性別の違い、親密さの違いで全く印象が違うけど。奥底にあるものは紙一重の差ではないかという…

儀式中の神社に乱入というそもそもの行動に加え、一連のバチ当たりシーンではお手水を注がれて「きたねぇなぁ!」と叫んでしまっているので、この人もその後祟られていると思っている。懲らしめられてからの行方は杳として知れないが、もしかしたら…?

憎いなぁと思うのは、他の役では家族を愛する良きパパだったり、恋人にサプライズでプロポーズするユニークな男性だったり、真逆のイメージを演じてるんですよね。これらもとてもしっくり来る適役でした。このバランス感覚はとても良かったです。

なんくる

兼任する美樹というキャラがあまりにも強烈。お二方でかなり印象が違ったように感じました。ところでデステニーランド内の役、子どもと出てくるので観ている側は一瞬ビクッとしていたんですが、これはその後の前フリのようなものなのか…?

平塚あみさん
パっと見の印象では現実を見ていそうな美樹なのに、なぜ?と。全体的に落ち着いていて、受け答えもしっかりしているように見えるし。奪うというより、もしかしたら理知的な判断のつもりでこうなったのかな…だとしたらこういう女性がある意味では一番怖い。そもそもゆきなが敵う相手ではなかったのかも…

富山真有さん
冒頭、ゆきなに対する視線がマウント取りの意地悪な感じで、果たして本当に親友だったのだろうか…と思ってしまった。そもそもあのシーンはゆきな視点の可能性あると思っているけど、もっと前から認識の差があるのだとしたら…
マウント思考で竜也を消費していないだろうか、と感じるところもある美樹。そういう意味では今後の不安がやや強い。

ないさー

比較的クセが少ないポジションかな?
進行に応じてくるくると衣装が変わっていきますが、どの役も可愛い。
作品内の貴重な癒しオンリー。

宮武愛実さん
去年スタッフさんをされていた時にお会いしました。その節はありがとうございました。
オンステで拝見できる機会に巡り会えて嬉しかったです。ダンスが綺麗で和やかな笑みが可愛らしいないさーでした。個人的に白地の沖縄衣装の時が特に好き。

藤村希さん
見ているととても落ち着く感じ。穏やかな海風のように、マイナスイオンがふわっと漂うようなないさー。
平塚さんと藤村さんはそっくりペアとのことでしたが、確かに狛犬のようによく似たお二人でした。実はどこかでお見かけしてます….?もしくはこれから?

亡霊

それぞれのペアで演出が違う、とお見かけした気がするので、こうだったかな?という覚え書きです。かなりざっくりですみません…

彼女たちの正体の解釈はたっちゃんの項で説明していますが、ゆきなの自己投影的な存在なのかと思いきや、実はゆきなを裏切ったあの2人の間の子どもだった、と考えています。ゆきなにとっては厭わしい存在だけど、かといってこれから生まれるこの子たちに罪があるわけではないと考えると辛いな…

どの公演を見ていても丁寧で素晴らしい演技でした。今後の成長が楽しみすぎます。

上原日茉莉さん、小桜みいさん
口元は笑っているけど目が笑っていない。シンプルに眼差しが怖い。ぞっとするような不自然な表情固定が凄かったです。
どちらかと言うと海外ホラーっぽい印象。

青木美織さん、吉村玲菜さん
日本人形のようなあどけなさ。穏やかだけど表情が読みづらい感じ。佇まいは可愛らしく無邪気さが垣間見えるだけに余計に怖い。
ジャパニーズホラー寄りかも。

ハブタイ様

胡散臭い。逆にこの胡散臭さが作品の力の抜きどころというところもあり、登場シーンは素直に楽しめる。絶妙な引っ張り具合での登場でしたが、丁度真ん中に出現することで物語がだいぶ救われている感じがします。
遠く本州まで噂が伝わるということは一定以上の信者がいると思われるので、ぺてん師としてはだいぶ厄介なのだと思う。
「すごいお屋敷」が目の前に現れ出るような風格は流石でした。言い換えると一体どれだけ被害者が出ているのか…PayPay対応だけどカセットデッキがまだ生きているというガッカリ落差。ラストのオチも秀逸。
沖縄柄の衣装がとても良かったですね。ここまでガラリと世界観が変わるとは。雰囲気抜群でした。

赤坂泰彦さん
エンターテイナー。空気が明るくなるとはこのこと。福の神のようなオーラを漂わせながら実はただの人間でしたというのが、一段上で洗練されたギャグに思えてくる。ベースがどこか楽しそうなので、詐欺師でも嫌な感じはあまりないんですよね。
ラジオでしきりに周りの歌声を褒めていらっしゃいましたが、いや間違いなく上手い方だと思いますよ!? 魔法の川のように不思議な色を帯びて穏やかに流れる声だなと。
貴重な情報をたくさん発信してくださり、本当に感謝です。ありがとうございました。

石原慎一さん
島の古老っぽい。島内ではそれなりの社会的地位なのではないかな。亜熱帯らしいざっくりした着物に全く似合わないギラギラ指輪。衣服とアクセサリーのアンバランスさから、裏の顔がやばいのでは…という印象を最初からうっすらと抱かせていた感じ。そういう意味では最後に政界進出するのもああやっぱり、と。決められたシナリオ通りというか、本来の姿が表に出てきたというか。
ベテランの渋みを非常に巧みにヴィラン化されていたと思います。

【作品についての感想】

作品の大まかな感想はX(Twitter)に書いていますので、記事作成中に思ったことなど。
記事を書く途中で資料を色々見直しましたが、メインの8人の役名の記載順もしっかり意味があったんだなと気づきました。
ゆきなとマルチ、その次にオーガニック、女医さんとみしゃぴ、グラドルとひかり、ひかりとのぞみ。ざっくり分けるとこうかな?
ゆきなとマルチは同級生でステータスもそこまでかけ離れているわけではなさそうだけど、その他の組み合わせは真逆レベルに住む世界が全く違う。最初は違う者同士で反発しながらも、徐々にお互いを知って学びあえる。現実にも繋がる教訓。
一方、オーガニックはずっと一人のままなのも良い。彼女は最初から最後まで旦那さんありきの閉じた世界に生きているのだな。

二人の少女の亡霊は映画シャイニングのオマージュかと思いますが、あり得ないものが見え始め、徐々に悪化していくところも似ているかも。ホラー映画はあまり得意ではないですが、この機に見てみるべきか…
何か気づくことがあればこの辺りはまた追記します。

脚本・作詞・演出の万葉さんについて

万葉さんの執筆作品は3作品4回目の鑑賞で、ご年齢から何となく文化的背景に近いものを感じてはいたのですが、今作でやっと、ようやく作風が飲み込めたというか、腑に落ちたというか、なるほどこれか!と。
今作のキャラ描写の精度がエグいのは取材に基づいているのも大きいと思いますが、それでも人間観察のスキルがとにかく高い。皮肉を込めつつも決して突き放さない人間愛。さりげなく出てくる持ち物の意味や、リアルを反映するトレンドなど、虚構でありながらも現実と地続きで、こちら側を積極的に当事者として巻き込んでいく。現代に対応した普遍性を、同じ高さでしっかり訴えかける。
演劇という生ものにおける王道を、極めて丁寧な観察で突き詰め、愛を込めて描かれている、そのように感じました。
観察というのはともすれば型に嵌めて終わりがちですが、その目線が柔軟に変化していくところも良かったですね。こうだけど、でもこうかもしれない、みたいな。一言で言い表せる人間は実際存在しないので、こうした尊厳の重んじ方は好きです。

実のところ企画発足からの進行の様子はゆるくお見かけしていて、実話の採取や吟味を重ねたオーディション等、並々ならぬ思いで作られていく過程をちらっと拝見しておりました。
出来上がった作品がどこまで自分ごとになってくるのか、正直なところ幕が開くまで実感がなかったのですが、実際に観てみると何かとんでもないことが目の前で起こっている…!?となり、その時の気持ちをなるべく残しておきたいな、と思い。
まだまだ書きたい気持ちはありつつも、とりあえず出力できるものを書かせて頂きました。

作曲・音楽監督の西出真理さんについて

多分初めてお仕事を拝見しているかと思うのでざっくりな感想ですが…西出さんの音楽、どれもとても好きです。多岐にわたるジャンルの幅、キャラクターによってガラリと変わる曲の雰囲気がすごすぎて。どれももれなく耳に残る。
とりわけて上げるなら。ゆきなの曲は不安定なM10も含めてどれも綺麗な主旋律で好き。ゆきなに劣らず本場の王道を行くマルチの曲も良いですね。最初と最後が繋がるオーガニックの曲はお見事でした。
序曲にして引き込み力抜群のテーマソングのM1、作品タイトルを冠する最大の転換点でクライマックスのM11が作品の肝となる曲だと思っていますが、自分はM11が作品内で一番好きな曲でした。劇中では一番と言っても過言ではないほど壮絶な歌詞ですが、そこからこの美しいメロディーが生み出せるのが凄く、凄くないですか…? 曲とダンスと演出効果の組み合わせがあまりにも良くて、あまりにも決まっていたのでより一層心に残ったというのもあります。この曲は初見で聴いた時からずっと好きでした。

締め

取りとめのない感想文ですが、もしいつか再演、リメイクなどがあった時のためにも今の覚書を残しておいた方が良いかも、という気持ちで、頭の中にあったものをどうにかこうにか記録化しました。

最後に。公演パンフと台本がなければここまでの考察、感想の書き出しはできませんでした。呼び起こすきっかけがあるからこそ、記憶は鮮やかであり続けることができるので…
一次資料と参考資料、その作品化に関わって下さった方々、支えてくださった方々に心からの敬意と感謝を込めて。
ありがとうございました。

また皆さんとどこかでお会いできますように!

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