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【野球を好きになったきっかけ】
2009年8月。日曜の朝から私は激怒した。
プリキュアが始まらないのだ。どうして今日はプリキュアが放送されないのかと母を問い詰める。
「高校野球があるからだよ。」
……そう言われましても。高校野球って何?プリキュアの放送を休止してまでやるものなのか?野球のルールなど全く知らない私は納得がいかなかった。
(当時の私へ。数年後、あなたはその年の決勝戦、中京大中京対日本文理の試合を見て涙を流しますよ。菊池雄星投手の活躍を取り上げた番組を見て涙を流しますよ。ーーー)
中学生になっても、5歳下の弟、3歳下の妹がいる我が家の夕方の番組ラインナップは、おじゃる丸や録画したウルトラマンだった。
父や母は、野球は好きだが毎日中継を見るほどではなかったため、家のテレビで野球を目にする機会は少なかった。周りに野球をしている人もおらず、外で遊ぶことも少なかった私は野球に触れることなく人生を歩んでいた。
そんな私が野球に興味を持ち始めたのは、中学2年生の頃。
休み時間のハンドベースにハマったという当時小学3年生の弟が、テレビで野球を見るようになったのだ。どうやら学校は阪神タイガースの話題でもちきりらしい。
そこから我が家のテレビは、赤青黄のカラフルな子鬼たちが敵からシャクを取り返そうと戦うアニメではなく、赤青黄などのカラフルな服を着た男性たちが敵から点を取ろうと戦うスポーツを映すようになった。
しかし、私は全く興味を示さなかった。
なんせルールが分からない。ゴールを決めたら1点が入るサッカーとは違い、野球は打っていなくても点が入る。複雑なルールを分かろうともしなかった。
毎日のように野球を見る弟の横で、テレビに目を向けることなくツムツムに精を尽くしていた私。
だが、目を向けていなくても音は耳に入ってくる。トランペットの演奏、メガホンを叩く音、観客の声援ー。
気付いたら、試合なんて見てないくせに、自然と応援歌のメロディを覚えてしまった。ふとCMのフレーズを口ずさむような、そんな感覚で私は阪神の応援歌を口ずさんでいた。
「唸るスイング 切り裂くアーチ ほえろ孝介 勝負を決めろ」
これが初めて覚えた応援歌。
たった10秒、20秒程度の曲が繰り返し演奏され、球場の主役は俺だと言わんばかりに歌う観客、メガホンを叩く観客。まるでライブ会場のようなその雰囲気に魅力を感じた私は、YouTubeで野球の応援歌メドレーを聞くようになり、すっかり熱中した。今までツムツムに費やしていた時間で、野球の応援歌を聞き漁った。
そして、ルールは何にも知らないけれど、応援歌を楽しみに試合を見るようになった。応援歌を口ずさみながら、父や弟にルールを教えてもらった。
しかしやっぱり、野球は難しい。
どうしてアウトなのに点が入るの?(犠飛)
どうしてバッターに投げないの?(牽制)
どうして打ってないのに走ったの?(盗塁)
……と、見る度に疑問は増えていく一方だ。
質問ばかりする私を鬱陶しがらずに、優しく教えてくれた家族のおかげでルールを覚え、選手を覚え、応援歌を覚え、いつの間にか野球というスポーツ自体も大好きになっていた。
好きな球団・好きな選手がいなくても、ルールを知らなくても、野球は楽しめる。サウンドだけで、楽しめる。
競技特性に惹かれたのではなく、応援歌というプレーとは関係ない側面をきっかけに野球というスポーツをを好きになった私。この野球との出逢いが、人生を180度変えることとなる。というのも、高校に入学し、野球部のマネージャーをすることになったからだ。
高校時代を振り返り、野球部のマネージャー生活についても後日書き綴ろうと思う。
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