【深夜枠】匂い

匂いに敏感な方、いらっしゃいますか。

わたしは、匂いにとても敏感です。

匂いを使って、毒や危険を避けています。

嫌な臭いがするなぁと感じるもの、ひと、場所。

だいたい、自分とは合いません。

そして、自分から嫌な臭いがしていないか、常に確認しています。

制服や髪に染み付いたタバコの臭いが嫌いでした。

もわっとむせるような、熱気を帯びたお酒の臭いも嫌いでした。

病気になって以来感じるようになった、薬のようなツーンとする臭いも嫌いです。

「そんな臭い、普通の子にはしないよ」

わたしは、変わった臭いがするそうです。

あの、鼻の粘膜をヒリヒリさせる臭い。目を潤ませ、脳味噌の奥の奥までズンズン響く。

そう言いながらも、わたしはいつもの枕と毛布でしか眠れません。自分の匂いしか感じない、この中にいれば大丈夫と思うのです。

外に漏れ出て初めて、嫌な臭いなのだと気づきます。

隠さなければ。隠さなければいけないと思います。

あなたのそばで、クンクンと鼻を動かすひとがいたなら。

それは、おそらく、わたしです。

あなたが匂うのではないから、安心してください。

嫌な臭いを放つのは、いつだって、わたしのほうなのですから。