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銀河鉄道の父(講談社文庫)門井慶喜

2024年3月12日
宮沢賢治の生誕からその死までを父政次郎の視点で書かれている。
賢治の誕生の喜びと期待。賢治の成長ととも考え方の違いから生じる
憤りと葛藤。
走馬灯のように 賢治の生涯に政次郎は思いをはす。 
 
賢治は明治29年 質屋を営む宮沢政次郎イチ夫婦の長男として
生まれる。その時の政次郎の喜びは一塩であった。
幼少期 賢治は成績優秀ではあったが悪童でもあった。
政次郎は後始末に奔走した。
 7歳の賢治が赤痢で入院した折、妻イチの反対を押し切り
政次郎は病室に泊まり つきっきりで世話をした。
子守唄を歌いながら、とんとんして寝かしつける。
(この光景は、晩年の賢治が肺結核で病の床にあった時にも再燃される) 
しかし青年期 多感な賢治は質屋は貧乏人から搾取するとを家業を継ぐことを避けるようになる。そして、裕福であることを恥じるかのように
自分の可能性を模索し始める。
鉱石業に就きたいという賢治に 苦言を呈してきた政次郎が
童話に転じた賢治の生き方に徐々に共感持つようになる。
全編を通じて政次郎の人間としての優しさが心を打つ。
政次郎がどれだけ賢治を愛していたか、様々な思いを抱えていたか。
あの愛と献身がどれだけ賢治の作品を温かなものにしていたことか。
いいお父さんに育てられた。

 雨ニモマケズ
 風ニモマケズ
 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
 丈夫ナカラダヲモチ
 慾ハナク
 決シテ瞋ラズ
 イツモシヅカニワラッテヰル
               ・・・

良い読書体験をした。


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