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きっと今頃、君は・・・【2011年3月18日に書いたテキスト】

言わないようにしてたんだ。
口にすると現実になってしまいそうだから。


つぶやかないようにしてたんだよ。
何も返ってこないと不安になるからさ。

でも、あの日から一週間が過ぎて、地震の直後に出したメールに返信がなくて。
それがまだまだ続くと思えば、いたたまれなくてさ。

君が住んでいたはずの街は、もうこの世に存在しない。
わずかな痕跡はあるけれど、とてもそこで君が生きてきたとは思えない。
テレビで避難所が映るとさ、どうしても君を探してしまう。そんなに離れた場所にいるはずがないとわかっていてもね。


嫌なことばかり考えてる。便りがないのはいい知らせ、なんて嘘だよな。
大学を卒業する年、三陸を旅した。帰省してた君と、君の実家で飲んだ。「ほや」があんなにうまいと教えてくれたのは君だ。中森明菜のポスターに向かって、我が息子を晒したのはおいらだ。もう一度、あんな風にあの部屋で呑めたらと思うよ。

どこにいるのか教えてくれよ。
きっと今ごろ、君は寒さに耐えながら家族を励ましてる。
きっと今ごろ、君は鼻からタバコの煙を吐き出してる。

きっと今ごろ、君は・・・。

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