【noteお題応募】「#私の勝負曲」koi / androp
androp - 「Koi」Music Video 映画『九月の恋と出会うまで』主題歌
https://www.youtube.com/watch?v=jyQfhz4ObQw
初めて聴いたのは、ブックオフで古本を探している時だった。
いや、違うか、商店街で流れていた有線で、だったかな?
とにかく、部屋でラジオを聴きながら仕事をしていた時ではなかった。それだけは確かだ。
特に気にとめることもなく、別のことを考えているような瞬間に、はっと思うフレーズが流れてきて、音の出ているスピーカーの方へ眼をやった。
♪忘れるなら、忘れるくらいなら、君じゃなくて、誰でもいいのに
まったく同じことを思ったことが過去にあった、それを思い出した。
遠い昔、いつまで昭和は続くんだろうと思っていた中学時代に、この言葉をつぶやいたことがあった。もうあたりは真っ暗な冬の部活終わり、校庭の隅で、刺すような鋭いオリオン座の光を見上げたあの光景が、ありありと頭の中に再現された。
そして時間が止まった。
歌詞を必死に覚え、ネットで検索をかけた。何曲か候補が見つかった先に、andropというバンドの「koi」という曲のPVが見つかった。
そして2019年の春に封切られた「9月の恋と出会うまで」という映画の主題歌だったこともその時に知った。
PVを何度も見て、メロディを覚えた。コード進行をコピーしてギターで弾き、歌ってみた。その度にいい曲だと重ねて思い、今に至っている。
PVの最後で、主人公の男の子が初老となっているのに、記憶の中に住む彼女はまだ学生で、制服姿のままそこにいるシーンに涙が出た。
そう、まさにそうなのだ、いつまでもあの時のままでいる、あの現実を消し去ることなんてできやしないのだ。
男はいつまでも昔を忘れられない生き物だ。少なくともおいらはそうだ。
離れなければならない理由があって、それに従わなければならなかったとしても、まるっきりすべてを忘れて次へ進むことはできない。
身体のどこかにそうしたものを引っ掛けたまま、もしくはずるずると引きずりながら前へ進んでいく、男ってつくづくそんなセンチメンタルな生き物なのだ。
笑われるかもしれないが、それで構わない。
「koi」は、そんな心情を照れることもなく歌っている。
だから、おいらは勝負曲に決めたのだ。
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