見出し画像

桜のような人になりたい

桜の季節がもう少しで終わる。憂鬱な梅雨が来たらいよいよ大嫌いな夏が来る。ここ数日は梅雨も通り越して夏日が続いている。休日に寒さでアラーム音に苛立ちを覚えていた日から一転して暑さで目が覚めるようになった。平日よりもうんと遅い時間に目をこする。立ち上がるのはもっと後だ。朝なのか昼なのかも分からないくらいの時間に顔を洗って、昼なのか夜なのかわからない時間にご飯を食べる。ダイエットをしているはずなのに高カロリーなご飯をつまらないYouTubeを横目に見ながら食べる。お風呂は今日はいいかななんて毎日思いながら、結局日付が変わるくらいに入ることになる。髪も乾かさずに、結局またベッドに戻って本読んで、たまに文章を書く。日が差して来たら眠くなって寝る。そんな不規則で自堕落な生活を三週間ほどした。でもそんな生活が好きだ。その生活をしている自分が好きだ。朝日が部屋に入り込むことに趣を感じ、真夜中の音のない世界に喜びを感じる。そしてそれを文章に書きだす。そんな自分が好きなのだ。きっとそれはSNSに日夜自分の動向を載せないと生活できない友人よりもいくらか崇高な人間であると錯覚を覚えるからだろう。はたから見れば中二病の痛い奴だ。近くに私のような人がいたら絶対に友達になりたくないし、そもそも関わりたくもない。


桜は人間が飽きてしまう前に散ってしまう。桜は不思議だ。たった数日から数週間しか見れない景色でも心に刻み込まれ、忘れることができない。花見に行こうとしていたら時期がずれてまだ咲いていなかったり、葉桜になってしまっていたり、桜の季節はうまくいかない。でもそれは桜の戦略なのかもしれない。もし桜の見ごろが1か月も2か月も続いたら、飽きられてしまう。だからさっさと咲いてさっさと散るのは案外賢い。そうすれば一年に一度の楽しみとして一生輝いていられる。たとえ忘れられていても春が近づけば桜が咲くことをみんなが心待ちにしてくれる。自分の見せ方を熟知している。独りよがりで、ずる賢く、自分に自信のある中二病のような桜の花。私も桜のような人になりたい。誰にも忘れられずに、ふとした時に思いだしてしまうような人間になりたい。ずるくて、賢くて、独りよがりで、自分の美しさを自覚しているような優美で強かな女性でありたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?