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S-16 小さな探検家

貴重な宝物探し

 夏になるとお家の中にアリが入り込むことがあります。お母さんが困っていました。何かアリにとってのご馳走を見つけると仲間に知らせてたくさん集まってくるので迷惑なのだそうです。お父さんとお母さんがアリ退治をしながらお話しをしています。
『もしもアリが砂糖の袋でも見つけようものなら それって人間で言うと金山でも見つけたくらいのスゴイことになるのかな。それにしても集団でしか生きられないはずのアリがどうしてみんなから離れて宝物を探そうと思うのかな?』
『人間だって同じだろう。一人じゃ生きられないけど、昔から探検家はいたわけで、このアリンコと一緒だよ。その先にあるかもしれない宝物を求めて旅に出て、失敗したら死ぬかもしれない。それでも中には運良く宝物を見つけられる者もいたりして。そういう人達が 誰も知らない不思議な世界とか 価値とか意味のある貴重な宝物とか物質とかをもたらしてくれてたわけでしょ。その多くの結果が今の世界を作っているんだろうな。』

 私は寝そべったままお昼寝でもしようかと思っていたところです。おや 一匹アリンコが私の足元を歩いて行きます。一匹だけですよ。仲間はいないようです。これもひょっとしたら探検家なんでしょうか。私は息を止めて静かに見つめました。音を立てないように気をつけながらアリの様子を観察したんです。もしかしたらアリ専用の携帯電話で仲間に連絡するかもしれないですからね。
静かに! 静かに!

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