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ことばではなく

人が人を他人にしたので
世界にひとりが溢れている
知らないものは怖がるくせに
他人に優しくなんて人が言う

風が吹いて頬を過ぎる
空は青く
陽は眩くて
木洩れ日の下の腐葉土はふんわり湿って

そんな世界を
絵日記みたいに眺めて切り離す
キャッカンシって言うんだと
どんなことばをはめるんだか

泣いている人の手に
ただ黙って触れていたい
ことばも名前もいらなくすれば
ほら 他人だってこれくらいはできる

そして元気になれば
何が悲しかったなんて
もう全部忘れてしまって
振り返りもせず帰ってくれたらいい

明日の朝の光が優しかったらいい
その光がことばではなく
あなたは居てもいいのだと
伝えるものならばいい

(2006年頃)

サポートの一部を誰かのサポートに繋げていけるのが理想です。途切れることなくー