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添い寝の条件

腕枕をしていると、
腕、しびれたらいかんから、と
あなたの頭がすっと
僕の左肩からすべり落ちる

そのままあなたは
壁のほうにごろりと横向きになって、
胸の前で両肘を重ねて眠るそのカタチは
知らない国のことばで描かれた絵本みたいで

寝息以外なにも聞こえてはこないのに、
確かにここにあるという安心感は、
あなたをけして理解できないという
当たり前のことを忘れさせてくれる

シャツをそっとたくしあげて
タオルをあなたの背中に滑らせる
産毛に光る汗を拭った後の
あなたの広い背中は。まるで大陸

左手で灰皿を引き寄せて、
煙草をのみながら、
人差し指と中指のリズムで
あなたのくるぶしを叩いてみる

あなたのカラダのカタチに沿って、
後ろから
僕の体を重ねる、
そのカタチ

あなたの膝裏に僕の膝頭を
あなたのうなじに僕のおでこを
あなたの想うあの人には僕の無関心を、
そっと沿わせるその、カタチ

優しい、の意味は今でもよくわからないけれども、
もしも望まれることがあるのなら
何度でもあなたの背中をぬぐって添い寝して、
次の朝にはふたりして、時間に追われて部屋を出よう

(2005年?夏頃)

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