【人相学】『武者鑑』准后廉子/護良親王/足利将軍尊氏/尊氏北方 4 mominaina 2024年1月31日 14:19 出典:国立国会図書館デジタルコレクション『武者鑑 一名人相合 南伝二』准后じゆんごう廉子れんし准后じゆんごう は、安野あの 中将ちうじやう 公廉きんかどの 娘むすめなりしが、容貌ようぼう絶倫ぜつりんにして、天下てんか無双ぶそうの 國色こくしよくあるに依よりて、後醍醐ごだいご天皇てんわう 御寵愛ごてうあい 甚はなはだ 渥あつかりしかば、威勢ゐせい中宮ちうぐうに超こへて、准后じゆんごうの宣㫖せんしを賜たまふ。是これより 准后じゆんごうの口入くにふを以もて、大小だいしやうの政事せいじを做なし給ふ。故ゆへに、朝廷てうてい 甚はなはだ 紊乱ぶんらんして、賞罰しようばつ 正たゞしからず。又また、准后じゆんごう 大塔宮おほたうのみやをいたく 悪にくんで、竟つひに、天下てんかの士しを反覆はんぷくさして、大乱たいらんを引ひきいだす。是これ、誠まことの美人びじんといふべからず。外面げめん如によ菩薩ぼさつ内心ないしん如によ夜叉やしやとは、是これ等らをや 言いふなるべし。嗚呼あゝ、鬼女きぢよと言いはんか。醜女しこぢよと言いはん欤か。嘆たんずべきことになん。※ 「口入くにふ」は、口を挟んだり干渉すること。口入くにゅう。※ 「紊乱ぶんらん」は、乱れること。紊乱びんらん。護良もりよし親王しんわう親王しんわうは、後醍醐ごだいご天皇てんわう 第だい三の宮みやにて、始はじめは 尊雲そんうん親王しんわうと 申まうし奉たてまつりしが、還俗げんぞくあつて、征夷せいゐ 大将軍たいしやうぐうんとなり、二品にほん 兵部ひやうぶ卿けうたり。母はゝは 三位さんみの局つぼねにて、大塔宮おほたうみや 是これなり。多おほく 艱難かんなんを嘗なめて、王室わうしつ 恢復くわいふくの功こうあれど、婦人ふじんの 長舌ちやうぜつ、且かつ、侫臣はいしんの 計略けいりやくに罹かゝり、労らうして功こうなく、倍臣ばいしんたる淵部ふちべ伊賀守いがのかみに ●● られ給ふ。悲かなむべし。此この 宮みやは、四方しはう白眼はくがんにて、唇くちびる掀あがり、常つねに 睡中すゐちうにも 牙きばを咬かみ給ひし。是これ、悪死あくしを遂とげ給ふの相さうなりしといへど、誰たれか 此この宮みやの薨御とうぎよを聞きいて 嘆息たんそくせざりし。※ 「艱難かんなん」は、困難な目にあって苦労をすること。※ 「侫臣はいしん」は、主君に寵愛されている臣下のこと。嬖臣へいしん。足利あしかゞ 将軍しやうぐん 尊氏たかうぢ尊氏たかうぢは、足利あしかゞ三郎さぶらう貞氏さだうぢの子こなり。元弘げんこうの乱らんに、後醍醐ごだいご天皇てんわうの 詔みことのり を奉ほうじて、六波羅ろくはらを破やぶり、亦また、北条ほうぜうの餘よ、寇かうを 平たひらげてより、自みづから 征夷せいい 大将軍たいしやうぐんと称しようして 天皇てんわうに叛そむき、光明帝くわうめいていを奉ほうじて、遂つひに功こうをなして、幕府ばくふ十三代だいの 業ぎやうを開ひらく。尊氏たかうぢは、眉まゆ眼め共ともに秀ひいで、眉まゆの高たかきこと一寸いつすん、面おもて用ようの字じの形かたちを成なして、身體しんたい 又また 具ぐの字じの形かたちをなす。いと 官貴くわんきの相さうあればとて、舎弟しやてい 直義なをよし 勧すゝめて 北条ほうでうを 叛そむかしめてより、義貞よしさだ、正成まさしげと戦たゝかふ事こと、年とし有ありといへど、竟つひに天下てんか北条ほくてうに帰きす。其その供福けうふく大なりといふべし。尊氏たかうぢ 北方きたのかた北きたの方かたは、北条ほうでうの一門いちもん赤橋あかはし 相模守さがみのかみ の 娘むすめなり。尊氏たかうぢ、天下てんかを半なかば定さだめてより後のち、都みやこに一人ひとりの相者さうじやあり。尊氏たかうぢ、是これをめして、臣下しんか及および、有ありあふ人々ひと/\を相さうするに、誠まことに 掌たなそこ をさこが如ごとしといへど、見料けんれうは 唯たゞ一人に一銭せんをとる而已のみなり。尊氏たかうぢ、大いに信しんじて、北きたの方かたをも見みて給はるべしと有あれば、畏かしこまつて 別殿べつでんに至いたり、北きたの方かたを一目ひとめ見みるより泪なみだをながして、一言いつごんをいはず引ひき、退しりぞく。人ひと 怪あやしんで 是これをとふに、相者さうしや 答こたへて、北きたの方かた 面躰めんていに 黒色こくしよくを帯おび、眼めに赤鯉しやくりの如ごとき血筋ちすぢ 顕あらはれ居ゐたり。是これ、今宵こよひをすぎず 死しし給ふの相さう也といふ。人ひと笑わらつて寔まこととせざりしに、其その夜よ、楠正行くすのきまさつら 不意ふいに 攻せめ入いりて、尊氏たかうぢはからくして逃にげられたれど、北きたの方かたはあへなく殺ころされ給ひしといへり。※ 「相者さうしや」は、人相を見てその人の運命や吉凶などを判断する人こと。人相見にんそうみ。『武者鑑』の人物一覧はこちら → 【人相学】『武者鑑』人物まとめ 👀筆者注 新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖 ダウンロード copy #古文 #古文書 #人相 #足利尊氏 #人相学 #護良親王 #武者鑑 #阿野廉子 #赤橋登子 #准后廉子 #尊氏北方 4