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蜜蝋(みつろう)

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本山海名産圖會 5巻 [2]

蜜蝋みつらう 一名 黄蜡わうこく
これ黄蝋わうらうといふものにて、すなはち  はちなり。そのしぼりたるかすなり。

みつよりらうるには、生蜜たれみつとりたるに、のちはちなべに入れ、みづにて𤋎せんわきたるときべつうつわ冷水れいすいりて、そのうへいかだき、かの𤋎せんじたるをうつせば、かすいかだとゞまりて、らうしたうつは水面すいめんかぶ。夫をまた陶器●●●●●●●●れて、重湯ゆせんとすれば、自然しぜんむすびてらうとなるなり。

また熟蜜しぼりみつをとるときなべにてわかせば、みつうへうかび、らうちうあり●●は底にあり。これり、ひやしても自然しぜん黄蝋わうらうむすぶ。

※ □は、月+日+斗という漢字のように見えます。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本山海名産圖會 5巻 [2]

會津蝋あいづらう
本草ほんざう 蟲白蝋ちうはくらうといひて、奥州おうしう会津あいづらうなり。これは、イボクラヒといふむしやしなふて、水蝋樹いぼたといふうへはなせば、自然しぜんえだあいだらうせうして、いたついろしろし。

そのむし奥州おほしうのみありて、他国たこくになし。ゆへに、かたちつまびらかにせず。いま他国たこく白蝋はくらうといふものは、うるしなどのらうさらしたる白色しろいろなり。また、薬店やくてんにて 外療ぐわいりやうもちゆる白蝋はくらうといふも、蜜蝋みつらうさらしたるにて、これまた しんにあらず。

水蝋樹いほきといふ木は処ゝしよ/\おゝし。忍冬にんどうせうなり。なつは、えだすへことにせう白花はくくわらき、はなのちせうず。じゆくしていろくろねづみくそのごとし。ふゆおつる。又、このらう刀剣とうけんれば、久しくしてさびせうぜず。又、いぼつくれば おのづからおつる ゆへに、イホオトシのあり。いま蝋屋らうや會津あいづらうといふもの 真偽しんぎおぼつかなし。

※ 「本草ほんざう」は、明の李時珍によって編纂された本草学書。『本草ほんぞう綱目こうもく』。
 江戸時代に貝原益軒が編纂した『大和本草』の「蜜蜂」に、李時珍の『本草綱目』からの引用が見られます。
※ 「蟲白蝋ちうはくらう」は、イボタノキに寄生するイボタロウムシの幼虫が分泌した蝋を加熱溶解して、冷水の中で凝固させたもの。虫白蝋いぼたろう虫蝋ちゅうろう
※ 「イボクラヒ」は、イボタロウカタカイガラムシ(イボタロウカイガラムシ、イボタロウムシ)のこと。
※ 「水蝋樹いぼた」「水蝋樹いほき」は、イボタノキ(モクセイ科の半落葉低木)のこと。
※ 「忍冬にんどう」は、スイカズラ(スイカズラ科の常緑つる性木本)のこと。



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