【観音霊験記 秩父巡礼】第十四番長岳山今宮坊/武田信玄の家臣石原宮内 8 mominaina 2024年9月18日 19:45 出典:国立国会図書館デジタルコレクション『観音霊験記 秩父巡礼十四番長岳山今宮坊 武田信玄の家臣石原宮内』観音霊験記 秩父順禮ちゝぶじゆんれい 十四番 長岳山ちやうがくさん今宮坊いまみやばう むかしより たつとも知らぬ 今宮いまみやは まゐる心こゝろは 浄土じやうどなるらん奉額 此所は 八大竜王りうわうの 社地しやちなるときゝて 祈いのらぬは 猶なほも貴とうとし 夏なつの雨あめ武田たけだ信玄しんげんの家臣かしん 石原いしはら宮内くない當山たうざんの灵驗れいげん數夛あまたあるなかに、信玄しんげんの家臣けらい山形やまがた三郎兵衛さぶろべゑの組下くみしたなる石原いしはら宮内くないは、常つねに觀音くわんおんを信しんじ、軍法ぐんぽうにもくわしき者ものなりしが、時田合戦かつせんのとき、軍配ぐんばいをくり違ちがひしにや、進退しんたいわろきゆへ信玄しんげん大に怒いかりて、忽たちまち 備そなへを立直たてなほして、終つひに勝利しやうりとなりしが、後日ごにち 宮内くない某それがしの備そなへにて負まけにはならず。※ 「灵驗れいげん」は、霊験。信玄公しんげんこうの短慮たんりよなりと人に語かたりしこと、信玄しんげんの耳みゝに入いり、殊ことの外ほかに腹はら立たちて軍法ぐんぽうの備そなへは、たとへ 陳平ちんぺい・張良ちうりやうとて、操損くりそんじはあるものなれば、咎とがめも言いひ付つけざるものを、よしなき言葉ことばをもつて、主しゆうに疵きずをつくる段だん、不届ふとゞきなり。これによつて死罪しざいに定めらる。※ 「陳平ちんぺい」「張良ちうりやう」は、秦代末期から前漢初期にかけての政治家・軍師。ともに前漢の初代皇帝 劉邦りゅうほうに仕えました。其その日ひは既すでに十七日なれば、宮内くないは他念たねんなく、観音くわんおんを信じんじて、翌日あす御ご縁日死えんにちにしぬこと、せめてのたのみと覚悟かくごしてけるに、その夜よ、信玄しんげんの夢ゆめに十歳とをばかりなる小坊主こぼうず来きたりて「吾われは今宮いまみやのもの 宮内くないをひとへに助たすけ給へ」とあれば、佛勅ぶつちよくを感かんじて、急いそぎ山形やまがたに命めいじて助たすけしのみならず、近習きんじゆへ召出めしいだして恩賞おんしやうを賜たまはりしこと、誠まことに有ありがたき灵驗れいげんなり。筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖 ダウンロード copy #古文 #武田信玄 #古文書 #観音菩薩 #秩父札所 #山県昌景 #観音霊験記 #観音霊験記秩父巡礼 #今宮坊 #長岳山今宮坊 #石原宮内 #山形三郎兵衛 #山縣三郎兵衛 8