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【梅園魚品図正】(49) 鯛(たひ)

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『梅園魚品図正 巻2

棘■魚  タヒ マダイ   [■は内+髟+几+干]

『閩書』曰、棘■魚  以 鯽而大其■如 棘。紅紫色 即 倭俗 称 スル 所 ノ 鯛 是也。和漢 海魚の第一品とす。

『日本紀 神代下』に載す。 赤女 アカメ  即、赤鯛也。
『嶺表録異』  ク  ト 
『泉州府志』 䯻■ 又、 ク 竒■ 或曰 過 ト 
□人  謂   赤 ト   [□は艹+雨]

※ 「棘■魚」は、棘鬣魚のことと思われます。「鬣」という漢字は、たてがみの意。
※ 「□人謂之赤鬃」は、『閩書南産志』からのの引用と思われます。参考:『広文庫 第12冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)

甲午二月廿有三日於 櫕美閑窻 寫照
海魚類

元阮曰、鯛なまにて遠国より運送難成は、皆  しほつけ  として贈る。大小共に丸塩あり。大なる者は、㛰姻結納の掛鯛に用ゆ。小なるは家々歳首の節物たり。にらめ鯛と云。

亦、三枚に卸し、骨頭を去り、漬たるもの「肉漬」と云。鱠にして甚隹味なり。其しをから となし、雲州より出す。「鯛の塩から [■は米+魚]」と云。其 ■ふくろ [■は魚+米] のまゝ二つらなれるを、塩に収めたるを「鯛の子漬」と云。

又、鯛を三枚に卸、全躰のまゝ鮑ひものとするを「干鯛」と云。貴家の祝儀の献物也。

※ 「元阮」は、清の政治家  阮元げんげんのことと思われます。
※ 「㛰姻」は、婚姻。
※「歳首」は、年の始めのこと。
※ 「掛鯛」は、祝儀の飾り物で、二尾の鯛をわら縄で結び合わせたもの。鯛一掛。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『婚禮罌粟袋 [2]

※ 「節物」は、その季節季節の物のこと。
※ 「にらめ鯛」は、にらみ鯛のことと思われます。
※ 「雲州」は、出雲国いずものくに
※ 「櫕美閑窻」は、誤読しているかもしれません。


『興化志』 フ  ト   [■は内+髟+几+干]
『順和名抄』及び『崔禹錫食経』曰
 鯛 都條反 和名 大比タヒ
『延喜式』曰
 平魚  是 タヒ●ラ也 婦女はヒラと云

朝鮮国にて 道味魚、又、掉尾と云
『三軍一覧』に戴  平魚 タヒ

『料理綱目』 紅魚タヒ

予曰、鯛の骨中に、各其形狀ある骨を以て、國俗「三つ道具」と云。
 タル 鍬 骨、 ル  骨、 ル 鋤  骨 アリ 是也。
頭骨 似  ニ 、故 「鯛龍 ト云。
ひれ ニ   ル   ニ  アリ。是 「鯛の中の鯛」 云。
黒鯛、又、同じ。

※ 「國俗」は、国俗こくぞく。国の風俗、習慣のこと。

参考:『倭漢三才図会』『日本奇風俗』『食物と心臓



筆者注 『梅園魚品図正』は、江戸時代後期の博物家、毛利梅園による魚図鑑です。説明文書は漢文体が中心でのためパソコンで表示できない漢字が多く、漢文の返り点と送りがあります。読みやすさを考え、パソコンで表示できない漢字は □ とし、名称の場合はできるだけ [■は〇+〇] の形で示すようにしました。

また、漢文の返り点と送りはカタカナと漢数字、振り仮名と送り仮名はひらがなで記載しています。
この作品に引用されている文献については、こちらの note を参照してください。 → 【梅園魚品図正】文献まとめ

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