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私も日本を決めてた、と知った一冊#もみの読書録

はじめまして。若者の価値を最大化する株式会社Traimmuで長期インターンをしています、中島もえと申します。

職種としてはライターをさせていただいていますが、文章が得意だから志願したというよりも、ただ単に書くことが好きであり、「伝えるスキル」を高めたくて応募しました。

しかし、「高める」って具体的に何をすればいいのだ?

と考えていたとき、上司の方から、自主練習として大量のインプットとアウトプットをすることをアドバイスいただきました。

ということで、今週から毎週3冊の本を読み、感想を述べていきたいと思います。
選書は、インターン先の上司でもある小原さんの『 小原課題図書』より。

最初の1冊目。
学問のすすめ 現代語訳(ちくま新書) 福沢諭吉、斎藤孝

義務教育の時間を主に落書きと妄想に費やした私でも、本のタイトルだけは知っていました。けれど、ちゃらんぽらんティーンだった、ちゃらんぽらん大学生だった私は、「どうせ、『よく勉強し、謙虚に、しかし意欲的に生きろ』とか書いてあるんだろ。」と今の今までスルー。

しかし読み終わってみれば、自分が思っていたよりずっと、ざっくばらんな口調で分かりやすかったです。「エラくて難しい言葉使う人」のイメージだった福沢諭吉が、とても身近で語ってくれているようで、するすると言葉が入ってきました。

特に、以下の箇所は自分を振り返るきっかけとなったので引用させていただきます。
まずはこの文。

国民が政府に従うのは、政府が作った法にしたがうのではなく、自分たちが作った法にしたがうということなのだ。国民が法を破るのは、政府がつくった法を破るのではなく、自分たちが作った法を破るということなのだ。

これを読んで思い出したのは、去年の4月に施行された妊婦加算のことでした。妊婦さんには、治療に色々と配慮が必要なので、診察したがらない病院も多いのが現状です。そこで、妊婦さんを診察したら病院側に報酬をあげましょうと始まったのが妊婦加算でした。そして、その報酬代を妊婦さんは一部負担することになります。今は撤廃の方向に進んでいますが、これには私はもう腹が立って仕方なかったのです。適正な医療のためにお金をかけることは分からなくもないですが、なぜそれを妊婦さんに払わせるのか。少子化対策とか本当はやる気ないんじゃないの?、と。

しかし今振り返ってみれば、私のこの怒り、ずいぶんと都合が良かったなと感じます。

とてもお恥ずかしい話ですが、私は23歳になったのにも関わらず、1度も選挙に行ったことがありませんでした。自分の国のルールを決める機会に、私は何をしていたのか記憶していません(たぶんネットサーフィン)。
自民党がどんな党で、どういう思想で、他の党と何が違うのかも分かっていませんでしたし、「政治」から普段まるで離れたところにいました。
私は世間で行われている政治が、自分の国のことだと思えていなかったのです。
なんか難しいし、面倒だから、「誰か」が勝手に決めてくれる。他人任せなスタンスでいました。
そのくせに、ある日突然、結果だけを聞いて驚愕し、怒り始めた。
要は、クラスの話し合いに参加もしないで、決まったルールに後からブーブー文句をたれる屑野郎だったのです。

いま自分が住んでいる国、いわばチームのルールを決めようとする場で、どんな取り決めが議論されているのか、争われているのか、知ろうともしない。そんな私には怒る権利はなかったのだと反省しました。23歳になって、ようやく。

そして

人民がもし暴力的な政治を避けようとするならば、いますぐ学問に志して、自分の才能や人間性を高め、政府と同等の地位にのぼるようにしなければならない

この言葉にあるように、何かおかしいと思うことがあり、それを主張したいなら、国の代表と同じ土俵に立たなければいけません。そのためには今よりずっと、能動的に勉強し、私もこの世間を作っているのだと自覚して、思考し続けなければいけない。

そう、身を引き締められた一冊でした。

美女と野球(河出文庫) リリーフランキー

リリー・フランキーさんといえば、おでんくんを描いているか、俳優として狂ったオジさん役を演じているか(ゲスい週刊誌記者の仕事ぶりと、人間模様を描いた映画「SCOOP!」でのヤク中DV野郎の役はトラウマものでした)のイメージを持っていました。小説を書いていることは知っていましたが、その尖ったイメージから著書を一度も読んだことがありません。ということで、お、と思った1冊。

内容としてはエッセイで、リリーさんの日常生活が面白おかしく書かれています。
全体を通して、とりあえず23時50分あたり、しけた居酒屋で、酔ったオジさんの話を聞いているみたいだなという印象でした。直接的な下ネタワード満載だし、正直、女の私からしたら、腹がたつような表現も多かったです。普段息するように下ネタを吐く私も、胸焼けしそうでした。

しかし、一方で、リリーさんの文章には音があって、日常の出来事の、興奮とか、諦めとか、期待とか、雰囲気の湿っぽさとかが、私もその時代の日に引き込まれたように伝わってきました。

例えば、この一節。

事件当日。この店で客とダメな下ネタで盛り上がっていた。その時、緊急連絡を受け取ったボーイが、大爆笑するサエの耳元でささやく。
「電話があって……。今、家燃えてるらしいよ……」
ツィゴイネルワイゼンがサエの頭でBGMに。今、燃えている……。今である。こうやってパンツ一丁、ブラジャー一丁。半パイを覗かせながら下ネタを飛ばしている瞬間に、自分の家が、家族が、すべての財産と思い出たちがボーボーと燃えているというのだ。
「キャー!!」
サエは混乱し、絶叫する。店中の客は目を店にした。原因はサエの部屋で灯けっぱなしにしていた香蠟。その時点で、サエは、それに気づいていた。悔恨と罪悪感が交互に脊髄液の中を逆流し、フロアに転がりながら頭をかきむしり、プラトーンのポーズでもんどりうつ。
P231 「第一報の受け取り方」より

これを読んでいる時、最初は漠然とした騒がしい雰囲気であったのに、ボーイの言葉によって、一気にサエの脳内にクローズアップしていく感覚がありました。だんだん、悲惨な音楽が大きくなっていって、最高潮になる不穏。
そして、「キャー!!」、とサエの叫びから続く文章は、濁流のようなスピード感があって、読み手のこちらもサエの混乱に巻き込まれるようでした。

こうした、読者も出来事を体感できる文章は面白いし、センスある人って羨ましいです。

20歳の自分に受けさせたい文章講義(星海社) 古賀史健

ライターのインターンを初めて、「書くって何だ」という壁にぶつかっています。小学校では「思ったことをそのまま書きなさい」と言われましたが、本当に思いのまま書けばブツ切りの文章が出来上がり、それが良いのか悪いのかも分からないまま今日を迎えました。

この本では、 “分かりやすい”文章とは何故分かりやすいのか、 “伝わる”文章にするためには、どういうパーツをどのような手順で盛り込んでゆくべきなのか、徹底的に易しい言葉で教えてくれています。
いわば「書く」ことの取り扱い説明書です。

例えば、“論理的な文章”にはマトリョーシカのような以下の3つの構造が重要なのだそうです。

大マトリョーシカ 主張…その文章を通じて訴えたい主張
中マトリョーシカ 理由…主張を訴える理由
小マトリョーシカ 事実…理由を補強する客観的事実

P131 第2講 「構成は「眼」で考える」より

主張があり、そのなかには確かに裏打ちする理由が含まれている、そしてさらにその中に理由を支える事実が盛り込まれている。この三層構造が守られているのが論理的な文章であり、読み手に納得してもらえる、伝わる文章。

本の中ではいくつもの具体例も交えて解説してくれているので、真似しやすく、実践しやすいと感じました。

文章に迷ったとき、読み返そうと思います。

今週は以上です!また来週の金曜日に更新します。(本当は水曜更新のはずでした…。怠惰でした。申し訳ありません。)
最後までお読みいただきありがとうございました。

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