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宮部みゆきになれんでも


 20歳の私へ

 今、なんとなーく陽キャな感じで、なんとなーく企業に就職して、バリバリ働いてやんぜー、と思ってるやん?なんとなーく企業人だった祖父に自分を重ねて、そう思ってるやん?

 もう、アホ。
 全っ然違うから。

 全然違う。まずあなた、根暗やし。いや根明やけど根暗やし。生い立ちで抱えた闇が、20代で負債となって現れるから。

 ほんで自分のこと社交性あるとか思ってるけど、反対。むしろない。全然ない。
 昔から「先生とか嫌いやけど自分の損になることはしたくないから表面上優等生」みたいなところあるけど、そもそも先生嫌いな時点でお察しですやん。やん。

 あと、自分のこと、体力ある方とか思ってるやん?
 気のせい。幻覚。思い込み。むしろかなり虚弱なほう。自分でも薄々感じてきてるやろ?はよ認めたほうがええで。
 2年後くらいに漢方で浮腫がとれて6キロ痩せるけど、それはつまり、6キロぶん浮腫んでたってことやから。

 とまあ、あなたは自分のことを全く分かってないから、大学卒業後、路頭に迷います。そんで20代の時間を大いに食います。心身ともに健やかでバリバリ働いている友人と自分との違いに落ち込みます。

 これはもう、どんまい頑張れとしか言いようがない。
 身体へのダメージはあるけど、あなたの生い立ちとその性格じゃ、避けては通れへんし、避けんで良い。通過儀礼やと思って頑張れ。
 だいたいの見通しだけ、書いといてあげるから。

【フェーズ1;仕事を辞める】
 とにかく早く、実家から経済的に自立したくて、批判されにくい一般企業への就職を選択。やりたい仕事、と思い込んで新卒入社したけど、魔法はすぐ溶け、半年で辞める。逃げ足は速い。ばいなら。

【フェーズ2;心理の勉強をする】
 本能の赴くままに、心理学を勉強する。当時の自分には、これが「したいこと」だった。大学院で真面目に勉強し、自分と向き合い続けた結果、実家と決別する。消耗。

【フェーズ3;書くのが好きと言える】
 心理の資格を得るも、ぐずぐず言って働かず専業主婦をする。目下希望していた出産をし、noteを始め、母が亡くなり、書くのが好きだと言える今日このごろ。

 ざっくりこんな感じ。
 な?辛いやろ?めちゃくちゃ精神すり減らしたわ。軽く神経症みたいな時期あったわ。

 そんな辛い20代を乗り越えられたのは、今年付き合って9年目になる夫がずっと支えてくれたから。
 それに尽きる。

 あ、今はさ、20歳のときはさ、男の風下にも置けへんような悪いやつと付き合ってるやん?でも大丈夫。それも血肉になるから。夫のおかげで、そうなったから。

 だから、あなたのこと、自分のこと分かってないし、将来のこと考えてないし、アホな20歳やったとは思うけど、でも、くじけずに理解者を求め続けたのは、偉い。誇りに思う。
 もちろん、恋愛を楽しんでた側面もあるけど、「取り組むべき」と思って理解者を探し求めてたよな。
 間違ってへん。あなたに一番必要なのは理解者。それで正解。大正解。おめでとうございます。

 そんな20代を経て、ようやくたどり着いた今。
 嫌なことから逃げるのも、自分と向き合って実家と決別すんのも、ものすごく労力は要ったし時間も掛かったけど、それ以上に根気強さと時間が要ったのは、そこから先、自分の「好きなこと」を見出すってこと。

 正直いうと、今もそれはまだ道半ば。
 だって、「好きなこと」って「楽しいこと」で、「楽しむ心」ってつまり「童心」。失った童心を取り戻すのって、結構たいへん。

 だけど一つ、分かるのは。
 「小説を書くのは難しい」「社会は厳しい」と言ったせっかちで過干渉な父と、「宮部みゆきになれんでも、端っこででも書いてたらいいんちゃうの」「やりたいことやり」と、死ぬほど根気よく見守ってくれる夫と。
 環境が変わって、信じたい人が出来て、私は少しずつ、やりたいことをやれている気がする。

 20歳からの10年。
 何も出来ん。社会的、表面的には何も成せへんからちょっとブルーになったりもするんやけど、きっと内面的にはものすごく「成し」てるから。

 大丈夫。

 安心して、泣き叫びたまえ。20歳。


 こちらに応募のつもりが、ただの振り返りになってしまいました。

 まあでも、せっかくだし自己紹介のところに貼っつけておこう。

 あ、えっと世の20歳に言いたいことは、「選ぶことを恐れないで。あと若くて良いなあ。じゅるり」です。


いつもありがとうのかたも、はじめましてのかたも、お読みいただきありがとうございます。 数多の情報の中で、大切な時間を割いて読んでくださったこと、とてもとても嬉しいです。 あなたの今日が良い日でありますように!!