ピンクのプチプチ5000円。
「わざわざ古新聞持ってこなくたって、そこのピンクのプチプチを切って使えばいいだけじゃない?」
「発送用の段ボール箱のスキマを埋める古新聞が足りないんです。あれば提供お願いします」と訴えたとき、職場の反応は薄かった。
私の職場は別拠点との精密機械のやりとりが多い。
繊細な機材が静電気で故障しないよう、発送のさいは帯電防止のピンクのプチプチでぐるぐる巻きにしなければならないのだ。
大は小を兼ねる、ではないが帯電防止が不要な荷物のほうが圧倒的に少ないので、職場の備品に普通のプチプチは無い。
「知ってます? ピンクのプチプチってけっこうお高いんですよ」
発送担当だったTさんが退職前に話してくれたことを思い出す。ピンクのプチプチはロール1巻5000円、普通のプチプチの倍近い値段がするそうだ。
「プチプチがもったいないからスキマには古新聞を詰めてるんです」
プチプチ、つまり緩衝材にもコストが掛かっている。
Tさんの話を聞くまで意識したことがなかった。職場の反応の薄さも当然だ、私だって知らなかったらピンクのプチプチのロールにハサミを入れていた。
言い出しっぺの私だけでも何か持っていこう。
最初はTさんと同じく古新聞のつもりだったが、自宅のゴミ箱の中に大量の薄茶の紙を発見した。
通販の箱に入っていた緩衝材、捨てなくてもいいじゃん。
意識して緩衝材を集めてみたら、無印良品の紙袋がすぐに満杯になった。
我が家3人、それぞれ好き勝手に通販するから1日1回は宅配業者が来てるんじゃないだろうか。
つまり必然的に大量の緩衝材が家に貯まる。
プチプチ、薄茶の紙、風船のようなエアクッション――段ボール箱のスキマに詰められている緩衝材はほとんどが新品だ。
自宅で再利用する緩衝材の量なんてたかが知れているから、残りは職場に持っていっても構わないだろう。
「いつもありがとうございます。そろそろ足りなくなって困ってたんです」
Tさんの後任Mさんに無印良品の紙袋を渡すと、いつも笑顔を返してくれる。
私が持ってきた緩衝材は、使い古しのピンクのプチプチと一緒に備品置き場で第2の人生を待つことになる。
緩衝材たちよ、願わくば第3、第4の人生を送って欲しい。
「あの、紙袋にこんなの入ってましたよ」
棚から落ちて紙袋に紛れ込んだのか、Mさんが手渡してくれたのは我が家で見慣れたマスコットだった。
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