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なぜ俺たちのシャドウバースはビヨンドするのか。その4~カウントデッキの功罪後編~

いよいよ最終弾もリリースされ、大団円を迎えつつあるシャドウバース。

シャドバWBではどんな変化が訪れるのか、改めて予想していきたい。


シャドバにおける「切り札」とは

正直、私は「遊戯王」くらいしか他のカードゲームを知らないのため、誤って情報を発信する可能性があることを先に了承いただきたい。

まず、シャドバはカウントデッキの台頭によるゲーム性の引き換えに、大きな物を失ったと考えている。

それは、高コストフォロワーである。

これは2024年春のRAGEの優勝者デッキだが、お分かりのようにほとんどのカードのコストは5以下であり、高コストカードも基本はアクセラレートや結晶で使われる。

半分以上1コストという驚き
ドラズエルがスゴい
高コストはリアニメイト要因です

今もシャドバをやってる方はなんとなく把握していたと思うが、ここ1年の競技シーンで活躍した7コスト以上のカードはせいぜい「神託の旅立ち・ジャンヌ」「禁牙の執行者・ドラズエル」くらいではなかろうか?

前回記事で説明したように、カウントデッキは以下の流れで進行する。

序盤(1~3PP):カウント稼ぎ
中盤(4~6PP):カウント効果発動・リーサル準備
終盤(7PP~):リーサル

この流れのように7、8ターンリーサルが主流の現代シャドバにおいて、打点に絡まない高コストカードは役割を持てないどころか、序盤の事故要因としかならないため、採用候補に入らないのである。

そして今回焦点にしたいのは、カウントデッキの台頭によって、「切り札」のデザインが困難になっていることである。

例えば「極致の創造主・ベルフォメット」はまさしく切り札といえるカードだったといえる。強力な3女神を同時に展開し、盤面を制圧する快感は何事にも変え難い。「切り札」とは、ようはゲームの流れを変えるようなロマンカードのことである。

決まるとめちゃ気持ちいカードだ

ただ、こういったデザインの成功例は多くない。これは憶測なのだが…シャドバアニメのいわゆる伝説のカードは、分かりやすい「切り札」としてデザインされたカードと考えている。
各クラスに存在する伝説のカードだが、基本的に活躍したカードは「アビスドゥームロード」のようなリーサルに絡む(妨害も含む)ものであり、しかし「レジェンドソードコマンダー」「デッドソウルテイカー(バフ前)」のような盤面形成に重きを置いたカードは、高コストの割にリーサルに絡まないため、アプリゲームで活躍する機会に恵まれなかった。

打点だけでなく、1ターン無敵になれる
場残りはスゴいけどね

このように評価の明暗が別れた要因はいくつか存在する。

そもそも最近のシャドバにおいて優劣を決定する要素は、カウントの進み方や手札の打点の枚数など、盤面外のものが多い。したがって、ゲーム終盤に盤面だけを切り返しても、大勢には影響がない。

さらに、除去のインフレもある。例えば「ディアボロス・ヘドネ」はたった3コストで盤面を一掃し、そのうえで6点を顔に叩き込める。

こわやこわや

現在のシャドバではこのレベルのカードがゴロゴロ存在しているため、耐性のないフォロワーを場を並べる行為は正直無意味である。極端なことを言うと、カウント効果が発動した中盤以降のゲームでリーサルに絡まないフォロワーはいないのと同じなのだ。

言うまでもなく、シャドバは相手リーダーの体力を0にすれば勝利するゲームである。しかし打点至上主義ともいえる現在、カードデザインの幅は狭まり、結果としてユーザーの「遊び」の幅も減ってしまった印象である。

超進化とプレーヤーの「個性」

さて、そんななかで私は「超進化」こそが、これからの競技シーンにおいても新しいエンターテイメントの鍵になるのではないかと期待している。

目玉要素!……なのか!?

これまでのシャドバの競技シーンでは1コストの使い方が命取りになるような、薄氷を渡るような緊迫感でゲームは行われてきた。
我々はトッププレーヤーの極限状態でのやり取りに興奮し、そこで生み出された驚きの一手に熱狂したのである。カードゲームには無限の可能性があり、数多のユーザーの努力によってシャドバは真剣勝負に値する「競技」として完成されたといえる。

一方で、プレーヤーの個性が反映されにくいシステムであったことはエンタメ的な課題であったと感じる。実際、プロツアーの終盤においてはクラス被りは当たり前、デッキ40枚すべて同じというのも珍しくなかった。競技としての完成度が向上した代償として、プレイヤーは「自分の好きなカード」を採用する余裕を失ったのである。しかし、「この人はウィッチを使うと一流」「この人は意外なカードで相手の動きを封じる」というような分かりやすい個性は、ライトユーザーが試合を楽しむために重要である。

シャドバWBにおいては「ストリーマーを交えた新しい形のプロリーグ」を検討していると説明があった。カードゲームをエンタメとして成り立たせるには、漫画やアニメのようにプレーヤーの個性が分かりやすいことが重要ではないだろうか。

あえて滅茶苦茶ダーティな選手とかね…

プロの勝負において、そうした「個性」が入る余地があるのか、疑問に思う方もいるかもしれない。しかし、ストリートファイターにおける超有名プレーヤーのであるウメハラ氏は、「リュウ」使いとして徹底的に拘り、攻略を続けることで、相性差を覆したことを自著で語っている。

ウメリュウは至高

ストリートファイターのeスポーツにおける人気は、彼らのようなプレイヤーの生きざまをゲームから感じ取れるからなのかもしれない。
そして私は超進化という新しいシステムが、プレーヤーの個性をサポートするシステムであってほしいと考えている。
ガンガン攻めるのが好き…じっくりと守りを固めるのが好き…お気に入りのフォロワーを活躍させたい…などなど、人の嗜好はそれぞれである。しかし、そういった「哲学」のぶつかり合いは試合を面白くするものである。
詳細は定かではないが、超進化の使い方がそうしたゲーム性の広がりに繋がればいいなと思うし、視聴者としても試合の見どころが分かりやすくなるはずである。
相手の戦略を「超進化」を駆使することで華麗に乗り越える…。先ほど「切り札」による逆転劇について述べたが、こうした展開をシャドバWBに期待したいところである。
ちなみに、私にとってカードゲームの入り口は原作「遊戯王」であり、この漫画の対戦相手は多様な絡め手で主人公達を苦しめるが、相手の猛攻を耐えに耐え、自身の切り札で相手のモンスターを打ち倒した瞬間にハイライトを迎える
こういった原始的ともいえるゲーム展開も、今後のプレーヤーの新規参入や定着において重要なのかもしれない。

このシーンすこ

ビッグデータという武器

さて、これまで長々と文章を書いてきたが、DCGというゲームジャンルは、まだまだ発展途上である。そして、シャドバWBはそのジャンルの未来を担うタイトルともいえる。DCGは紙のTCGを超えられるのか?その答えが間もなく明らかになろうとしている。
かつて大ブームとなったシャドバは、一度その幕を降ろして再スタートを切ることとなった。しかし、これまでの数千万、はたまた数億の試合のデータがサーバーに記録されているのである。そして紙のカードゲームはユーザーの実際の遊び方をトレースすることはできないが、DCGはいつユーザーが試合に萎えてリタイアしたか、どんなカードを追加したらユーザーが増えたのか、といった情報をすべて把握できる。
カードゲームという歴史において、ここまでのビッグデータをもとに開発された例は、これまで無いはずである。ハードルを上げるようだが、つまらないゲームになるはずがないのだ。

以上で本稿を終了するが、いよいよ最後のRAGEグランドファイナルでシャドバWBの新情報が発表されるはずである。心して待とう。

たのしみです


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