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コロナ禍2年目の大学の在り方

3度目の緊急事態宣言が発出され、大学の授業は新年度は対面でスタートしたにもかかわらずまたオンラインに切り替わるなど、めまぐるしく変化しています。そして、これはワクチンの接種が進むまで繰り返される可能性も大いにありそうです。
 
そうなると大学のコロナ対応の在り方も、昨年のような「とにかくオンラインに対応する」段階から、どう臨機応変に最適な授業ひいては大学生活を提供するかに変わる必要がありそうです。
 
まだ自分も考え始めたばかりですが、このあたりをどう行うかで教育の効果も大学生活の価値もけっこう変わって来そうなので、今考えていることを簡単に書いてみたいと思います。
 
対面とオンラインを機動的に切り替えられるようにしておく
早稲田は実は今も大学全体で対面授業が行われています。これは「授業に参加する学生数が教室の収容人数の半数以下で、1人1時間あたり30立方メートルの換気ができれば授業だけでは感染は広がらない」との判断からです。リーダーシップの授業、かつ年度初めというタイミングなので、ここまで対面で来られて非常に良かったと感じています。学生たちがこの機会を活かすべきだと実感しているからか、学生が本当に活き活きして見えます。学びに対しても授業内の交流に対しても、普段以上のアクティブさや集中力を感じます。
 
しかし一方で、感染拡大の状況次第ではゴールデンウィーク明けからオンラインへの切り替えが必要になるかもしれません。またその時、準備のための休講など授業の中断をなるべくしたくないと思っています。そこで状況に応じて機動的に対面とオンラインを切り替えられるように準備を始めました。

まず、受講生たちにリアルタイム双方向zoom経験の有無と懸念点を聞きました。こういう時に授業用Slackが便利で、振り返りに1項目追加しただけでした。特に1年生はパソコンがない、家の回線が遅い、zoomをやったことがないといったことがありうると考えていました。また2年生以上でもリアルタイム双方向は経験がない、ディスカッションがうまくできなかった等ありえます。

幸い、zoom未経験者はいたものの、受講生同士でサポートし合うことでなんとかなりそうな様子でした。こういう時、リーダーシップの授業はこれもリーダーシップ開発の機会だと言えるのが得なところです。また、もしこの授業だけがオンライン(リアルタイム双方向)に移行した場合、アクセスする場として教室の使用を希望するかのアンケートを取っています。独自に状況判断をしてオンラインに動く場合、他の授業が対面でやっていますから、zoomで会話ができる環境を確保してあげる必要がありえます。それがどのくらいあるのかを確認したかったのでした。
 
次は、実際に少し慣れておいてもらうことにしました。具体的にはゴールデンウィーク休みに入る今週、zoomでグループディスカッションする課題を出しました。これには学生たちに交流するきっかけを提供することも狙っています。対面で授業ができているとはいえ、会食は控え、一緒に食べるとしても黙食にすることを学生たちには求めています。おそらく普段よりも交流の機会が少なくなっているでしょう。かといって「家に着いたらzoomしようぜ」というのは、ついでに食事に一緒に行くよりも面倒くさそうです。今回をきっかけに、自主的に授業外交流が安全な形で拡がり出すと良いなと思っています。
 
学生が「対面」に求めている価値を知る
2つ目として、学生が対面に求めている価値をもっとつかんでおく必要があると考えています。運営スタッフの学生たちと少し話してみた感触では、実は「授業が」対面であることはそれほど大きくないのかもしれないと思っています。では何なのか、そこを確認してみたいと前述のzoomディスカッションのテーマは「大学生が『大学の対面』に求める価値とは何か?」にしました。そこで見えて来ることによって、何を対面にし、何をオンラインにするかが変わってくるかもしれません。

また、どれだけ対面あるいはオンラインを望んでいるのかを改めて理由も含めて聞いてみることにしました。このあたりはいろいろなところで「リアルタイム双方向の授業では対面を望む」「大人数の講義型授業ならオンデマンドを望む」といったデータが出ていますが、この授業ではどうなのか、コロナの状況を考えるとどうなのかを調べてみることで、もう少し理解が深まるのではないかと考えています。例えば本人あるいは家族がハイリスクな学生はオンラインを望んでいるかも知れません。

ある大学の先生から聞いたところでは、授業をハイフレックスにしたところ、大学としては対面が多いと思っていたのに、実際にはほとんどの学生がオンラインで参加しているとか。感染拡大状況によっても変わるでしょうが、ある程度学生の考え方や状況を把握しておくことで、迅速かつ的確な動きを取れると考えています。

コロナ対策を生きた学びの題材にする
最後に、このプロセスを活きた学びの題材にするつもりで動くべきだと考えています。コロナ禍は大惨事ですが、少しでも良いことがあるとすれば、普段は紙の上や教室内ワークで学んでいることを生きた題材から肌で学べる機会、とりわけ社会参画を体験できる機会であることです。

例えば上のようにして「対面に求めている価値は何なのか」を自分たちで考えた結果が大学の動きに反映されれば、「動くことの意義」を感じられるかもしれません。またこちら(授業運営側)の考え方と動き方が見えることによって、「緊急事態宣言が出たとか出ないとかではなく自分で考えて動くべきなんだ」とか「こうやって方向性を見極め、共有して行くことで一丸となりやすくなるんだな」と感じてもらえたら、と思っています。もちろんリーダーシップ以外にも、情報リテラシーを高めたり、最新技術の動向(を知る方法)を知ったりする、生きた学びの題材でもあります。
 
以上1)即切り替えられる準備をしておく、2)学生が対面に求めている価値を知る、3)コロナ対策を生きた学びの題材にすることを意識しながら動いているところですが、また動きながらさらに考えて行くつもりです。

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