031 人は旅になにを求めるのか③
私立大学の観光学部が、千葉県鴨川市から撤退します。
撤退あとは、どうなるんだろうか。
そこに、地域活性化に貢献する、こんな学校ができたらいいのにという妄想です。
引き続き、地域活性化を学ぶためのテーマを考えていきます。
前回、前々回を踏まえて、地域活性化に向けたビジネスとして旅を考えてみます。
やるべきこと
地域活性化という観点で、どれだけ多くの旅人に訪れてもらうのかは、常にチャレンジングな課題です。
それぞれの地域が、いろいろな取り組みで多くの旅人に来てもらうための策を打っています。
そこでやるべきことは、企業で行うマーケティングと同じだと思っています。
①リピーターを増やす
②情報源を意識する
③旅行客の目線で考える
この3つを意識して、策を考えていくことになります。
求む!!リピーター
まず最初に考えるべきは、リピーターを増やすこと。
東京ディズニーランドが、なぜ強いのか。
それは、毎年、いや数か月に一度といった頻度で訪れてくれるリピーターが大勢いるから。
ビジネスの世界も同じ。
既存のお客様に繰り返し購入いただけるとほど、ビジネスとして安定することはありません。
新規のお客様を開拓する労力は、とても大きく、その割には成約率は高くありません。
プリンターを購入してもらったお客様に、その後は継続的にインクを購入してもらうビジネスモデルも、まさにそうした「安定」を実現するためです。
同じように、地域活性化においても、旅行客がリピーターになってもらうことはとても重要なことです。
いまの時代、いろいろな研究があるものです。
https://www.kyusan-u.ac.jp/imi/publications/pdf/jimimivol.47_content_b.pdf
旅行におけるリピーターの研究ですが、
①変化型リピーター
②ファン型リピーター
③習慣型リピーター
④無関心型リピーター
の4形態を示しています。
自動車で数時間のところにある温泉を、定期的に訪れているので、ボクは③習慣型リピーターですかね。
いまやSNSの時代
少し気が早いかもしれませんが、アフターコロナを見据え、インバウンド観光の戦略を練り始めている地域もあると思います。
新型コロナ以前、訪日外国人旅行者は、どのような手段で旅行先をを決めるための情報を得ていたのでしょうか。
ガイドブック片手にした旅行者の姿は、すでに少なくなっていました。代わって多くなったのは、スマホを手にした旅行者です。
旅行前の情報収集の段階から、インターネットの活用は欠かせません。
まず多いのはSNSの活用。FaceBookやYouTubeが、その半数以上を占めています。
旅行会社やメディアのアカウントとともに、インフルエンサーと呼ばれる人たちの投稿や、友達の投稿などを参考にしているようです。
他にも、TripAdvisorや日本政府観光局などの旅行サイトや口コミサイトから情報を得ているようです。
少なくなったとはいえ、紙のガイドブックもまだまだ利用されています。
欧米系の旅行者は、昔から『LONELY PLANET』という厚いガイドブックを利用しています。
特にバックパッカーは、このガイドブックのお世話になっているようです。日本人にとっての、『地球の歩き方』です。
他にも、『DK Eyewitness Japan』『Frommer's EasyGuide to Tokyo, Kyoto and Western Honshu』『Fodor's Essential Japan』といったガイドブックも利用されているようです。
また香港や韓国などからの旅行者は、自国語で書かれた日本のガイドブックを持参しています。日本人にとっての『るるぶ』のようなガイドブックです。
アフターコロナでは、訪問する国でのコロナ対策の情報など、コロナ以前よりも細かな情報を必要とする旅行客が増えるでしょう。
そうした情報を、鮮度よく、外国語で提供することが、観光地でも求められるのかもしれません。
体験と共感
人々のFun、Love、Inspiredという3つの要素を満たす旅行ですが、旅行客が求めるコトが変化してきています。
初めて来日する外国人団体客は、その多くがゴールデンルートをたどると言われます。
成田空港もしくは羽田空港に到着し、東京、箱根・富士山、名古屋、京都、大阪の観光地を巡り、関西空港から帰国するというコースです。
短期間で効率よく、日本の文化、食事、自然を楽しめることが魅力となっています。
しかし、このゴールデンルートの恩恵にあずかれるのは、東京・名古屋・京都・大阪という大都市と箱根などのメジャーな観光地だけです。
いっぽうで、訪日外国人旅行者の6割は訪日回数2回以上のリピーターとなっています。
リピーターは初回の訪日でゴールデンルートを経験済みです。そのため2回目以降は、日本の地方を訪れる傾向にあります。これこそが、地域活性化に向けた可能性です。
「日本の伝統芸能に触れる」「温泉に入る」「日本の食事や酒を楽しむ」「スキーを楽しむ」「農村の暮らしを体験する」といったように、個人個人が自らの嗜好に沿った旅行プランを個別に手配するようになってきているのです。
こうしたリピーターを取り込むために、交通手段の確保、観光スポットの充実、体験型旅行メニューの充実などを、地域として推進していくことが重要になってきます。
そこで意識すべきは、旅行者の購買行動です。
以前は、AIDMAというモデルが提唱されました。
A…認知・注意(Attention)
I…興味・関心(Interest)
D…欲求(Desire)
M…記憶(Memory)
A…行動(Action)
広告などで、まずは認知してもらい、そこから関心、そして「行ってみたい!」という欲求にまで高めていくプロセスを重視していました。
その次に、インターネットの時代となりAISASというモデルが提唱されました。
A…認知・注意(Attention)
I…興味・関心(Interest)
S…検索(Search)
A…行動(Action)
S…共有(Share)
広告などで認知・関心を持つと、インターネットでの検索に移ります。
検索された時に、どれだけ行動につながる情報を提供できるか、そして訪問後に情報をインターネットで共有してもらえるかが重視されています。
そして現在は、SIPSというモデルが提唱されています。
S…共感する(Sympathize)
I…確認する(Identify)
P…参加する(Participate)
S…共有 & 拡散する(Share & Spread)
起点が、広告などによる認知ではなく、SNSなどで発信された情報に共感を持つところにあります。
そして、行動ではなく参加という表現になっています。つまり、SNSで繋がっている人たちと同じ体験に参加するという感覚です。
その後、自分も情報を共有・拡散することで、SNSで繋がる人の輪をさらに広げていくことになります。
旅をするという行動が目的ではなく、旅を通じて体験し、共感するということが目的に変化しているのです。
旅行者の求めるコトに対して、提供者の地域も変化する必要があるのでしょう。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。