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のほ本 vol.1

さんかく  千早茜 著 祥伝社文庫

自分が自分でいられる環境を諦めずにいることは意外と難しい。気づかぬうちに相手に合わせていたり、蓋をしていたりする。それは自分にだけ起こることかと言うと、否。気づかぬうちに相手に甘え、自然と合わせてもらって、蓋をさせている。ましてや、自分が相手に与えている側だという錯覚さえも持ちながら。

 長くを共にする人とどう在るべきか、時折考えさせられる。この本もまた、その機会を与えるものだった。

 友人に父を紹介したとき、「家族同士のやり取りなのに、どこか思いやりを感じる」そんな感想をもらった。親しき中にも礼儀あり、と言うが、私は親しき中にも垣をせよ、のほうが好みだ。むしろ、誰しも自分とは異なる個人であることを忘れず、適度な距離感を常に意識せよ、そんな意味合いを感じるからだ。

人生の最大の課題、適度な距離感。


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