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10.21三冠戦 青柳優馬VS宮原健斗〜二人の9年と空色デイズ

三冠王者青柳優馬と挑戦者宮原健斗。このワードだけでも「とうとうその時がきたか」と全日本プロレスファンに思わせるものです。9年前に青柳のデビュー戦の相手を務めたのが他ならぬ宮原。その場所は奇しくも今回と同じ後楽園ホール。9年後に両者が全日本プロレスの至宝を賭けて相まみえる。それも「王者青柳に宮原が挑戦者として立ち向かう」。さらには全日本プロレスの旗揚げ記念日のメインイベント。新時代の旗手と現在のスーパーエース。様々なパーツが組み合わさり。まさに「全日本プロレスファンが満場一致で望んだカード」。それがこの日の青柳VS宮原の戦いでした。

通常のタイトルマッチであれば「王者が挑戦者の攻撃を受け切る」という流れはあります。しかし今回は王者青柳が挑戦者宮原を攻めるシーンが多かったように思えました。これは煽りVで青柳が触れていたように「青柳か宮原時代を崩す」という図式があったため。青柳のそれは王者ではなく挑戦たるものでした。

一方の宮原もまた同じ。時代やエースという看板。それを彼は全日本プロレス入団して以来9年かけて築きあげました(偶然にも青柳のデビューと同じ年月ですね)。戦前に自身で「宮原健斗に世代交代という言葉は通用しない」と発したように。ブレない姿勢をこの日の試合でも宮原は観客に見せつけました。

しかし宮原のブレない姿勢に対して青柳は「進化した姿」で対抗しました。特に場外戦で試合のリズムを掴むことを得意とする宮原に。この日の青柳はそれを許しませんでした。エプロンでのロックスターバスターはその中の最たるもの。もちろんこれだけではなく。そのロックスターバスターを雪崩式、正調式と繰り出した青柳。さらにはフィニッシュのザ・フール。

しかし宮原はまだまだ崩れない。「スタミナおばけ」「無尽蔵のスタミナ」。ファンからそうやって評されるように。鍛え抜かれた肉体と精神で青柳の攻撃を次々とキックアウトします。そして試合終盤に見せる打点の高いブラックアウトや必殺のシャットダウンスープレックスで青柳を跳ね返そうとします。

この試合王者と挑戦者が逆。もしくは青柳に三冠戴冠経験が無ければ?青柳は宮原に跳ね返されたかもしれません。青柳はこの日までに王者として新日本プロレスの永田裕志から三冠を奪還し。諏訪魔を始めとした強敵からベルトを守り抜きました。そうして積み重ねた経験値と強さがあったからこそ。青柳は宮原を跳ね返しました。必殺のシャットダウンスープレックスを受けても肩を上げ。自身のフィニッシュであるザ・フールを繰り出し。ついに最高の挑戦者宮原を退けました。

この試合の煽りVの青柳パートでBGMに使われた曲は空色デイズ。

その背中だけを追いかけてここまできたんだ。探していた僕だけにできること。

https://www.uta-net.com/song/54371/

この歌詞にあるように。青柳はデビュー以来ずっと宮原の背中を追い続けました。宮原がスーパースターになる過程を最も近い場所で見て。しかし彼と同じ型ではなく。自分だけの型を作り上げて。今日この日を迎えました。全日本プロレスの太陽が宮原であれば?青柳は全日本プロレスの青空となりました。太陽と青空は反発することはなく共存できるものです。全日本プロレスにとって大いなる2つの存在が確立された日。それが52年目を迎える10.21だったと言えるでしょう。

青柳優馬はこのまま全日本プロレスに透き通るような青空を維持できるのか?直接対峙こそしませんでしたが、この日は雷雲になり得るあの男も全日本のリングに再臨しました。

全日本プロレスに再び嵐が訪れるのか?それは誰にもわかりません。しかし確実に言えること。それは全日本プロレスに新時代が訪れているということです。新時代の全日本プロレスを楽しんでいきたいと思います。



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