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ただ広く大きい。 #わたしと海

海が苦手だった。


小さい頃に家族で海に行った。
叔父ちゃんに肩車されて私は海に入った。
「痛っ!」と言った、おじちゃんは貝を踏んで怪我をした。
海の中には痛いものがあるんだ、と思った。
そして、アトピー体質である私は海水がよく沁みた。
海の底には痛いものがあって、身体は痛くなる。なかなか好きになれない。


大学を卒業したあと、私はニュージーランド🇳🇿に留学をした。
ニュージーランドは人口 約500万人の島国。
日本と季節は真逆で、自然豊かな国。
ビーチがたくさんあり、サーフィンやヨットとマリンスポーツが盛ん。
夏でも冬でもみんな海に行く。
仕事や学校終わりにビーチで過ごすのは当たり前。
友達とアイスを食べたりビールを飲んだりし過ごす。
1人で来て読書をしたり、日焼けをしている人もいる。

ニュージーランドに来て、海で過ごす時間がとても増えた。
「海ってこんなに穏やかなんだ」
「海って優しいな」
これまで持ってきたイメージが大きく変わった。
波の音、沈む夕日、優雅に飛ぶ鳥たち。
そこにいるみんなが海に身を任せていた。

ゆっくりと、静かに全てを肯定し、いらないものを遠くに持っていってくれる。
心が洗われる場所。

私は海が大好きになった。
サーフィンをする友達についていっては、海で過ごした。
本を読んだり、音楽を聴いたり。とにかく海にいたかった。
親元を離れ、誰も知らない土地に1人で来た私にとって、海は家族のような存在だった。
求めず、否定せず、変わらぬ優しさをくれる。
何も言わずそばにいてくれる。
その広さと大きさに救われた。

何度かサーフィンをした。
海に入り重たい水の中、足を進めていく。
足がつかなくなったら腕を使い掻き進めて行く。
容赦無い波。止まることなく次々と訪れる波。
顔に水がかかり、呼吸が乱れる。
前が見えにくくなる。それでも進む。掻き進める。
そして、そこを乗り越えると穏やかな海がある。
「よくここまできたね。頑張ったね。」
と、海に認められたような気がした。

一度だけ波に乗れたことがある。
海の上に立ち、そこから岸を見る。普通じゃありえないこと。
波に乗らせていただいている。そう思った。

海を見ていると、生き物に見えることがある。
揺れ続ける大きな存在。差別も区別もせず迎え入れる広い心。

私たちは多くを海にもらっている。
ただ広く大きい。これにどれだけ救われているだろうか。





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