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2024.1月読了【ラブカは静かに弓を持つ】


2023年の本屋大賞第2位の作品。2023年中に読みたかったけど、前に読んでいた本が難しくなかなか読み進められたかったため、読み始めれたのは2023年12月31日。
読み切れるか‥!?と思ったけど年末年始はなかなか時間が確保できず。結局年明けの三連休で読み終わった。


人と関わるのを避けていた主人公が、音楽を通して人と繋がっていったり、心が癒されてく物語。


実際にあった著作権料徴収をめぐる係争を題材とした小説で、途中ハラハラもありつつ、全体的にとても優しい物語だった。


著作権問題を訴える内容ではなく、調査員として潜入した主人公の心の動きが丁寧で読みやすかった。

自分の行為はスパイ行為であり、目の前にいる講師や仲間たちを裏切ることになる。

でもそれは著作権を守る為でそもそも守っていない方が悪い。

事が公になれば、コンクールを前にした講師に調査が入り、コンクールどころじゃなくなるだろう。

更に仲間たちは自分をどう思うだろうか。

でも法律上間違っていないのは自分の立場で著作権徴収を行わなければ製作者側にお金が入ることはない。


スパイとして潜入したのに、その生活が心地よくまるで本当の自分の生活のような感覚に陥っていく主人公。
浅葉とバーのシーンでこぼれるように口から出た、自分の過去。
上司のパソコンに手を掛けるシーンは、とても理性的な主人公が衝動的に動くのでとてもハラハラした。
主人公の心の葛藤が前面に出た浅葉さんとの言い合うシーンは「ああ、もう!そうじゃない!言いたいのはそれじゃないだろう!」と何度も思った。


裁判に関しては、思いもよらぬ形になったけど、「講師と生徒の間には、信頼関係があり、絆があり、固定された関係がある。それらは決して、代替のきくものではない。」という証人発言を読んでハッとした。
これは三船さんも辛かったな。
仕事だからやるしかないし、自分は正しいと言い聞かせるしかない。
そして、橘くんよりもずっと強かった。


登場人物が個性的とは言わないけど、こんな仲間たちが自分の傍にいてくれたらいいなと思った。
裏切ったことに怒るよりも、いなくなったことを怒ってくれるってなかなかない。


深海に例える構成もすき。
52ヘルツのクジラたちの時もそうだったけど、作中に出てくる音楽とか音って聞きたくなる。
チェロだけの音を聞くってことが無かったのでなんだかおもしろかった。


ライブや最後の掛け合いを見るに、橘くんと浅葉さんは本当にいい関係が築けていたんだな。


「講師と生徒の間には、信頼関係があり、絆があり、固定された関係がある。それらは決して、代替のきくものではない。」


未来のある終わり方もすごく素敵だった。

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