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2024.6月読了【黄色い家】

主人公の過去がなかなかない壮絶さだった。
お金がない、親も頼れない花が生きていくには犯罪に手を染めるしかなく、黄美子さんや蘭、桃子を支えていかねばならない責任感、重圧感、、それに病んでいく花。

てっきり冒頭で触れられていた黄美子さんの若者への洗脳のお話だと思っていたけれど、全然違った.まだ幼くて若い花の不安がリアルに描かれていて思わず引き込まれる。

どうすれば犯罪に手を染めなくて済んだのかな、そんなこと考え出したら親が悪いとか色々つきないけれど単純に手を染める子もいれば花のように複雑さが絡みあい染めるしかなくなる子もいてもおかしくないなと思った。だからと言ってそれが許されるのかと言ったら許されはしないし、本書では特に断罪のシーンはなく日常は続いていく。スッキリしない終わり方と言われればそうなのかもなあ。

桃子に鋭く指摘されたシーンは花同様こちらもつらくなった。花視点で話が進むのでもちろんこちらは花に感情移入している状態だったし、その状態での桃子の指摘は何か抉られるような物があったな。

そして久しぶりのかなりの長編。花の心が壊れていく様が600ページに渡りゆっくりと丁寧に描かれていく。たった5年の話なのに笑っていられた期間は数年。「れもん」での幸せな日々となくなってしまってからの転落は目を逸らしたくなるくらい重かった。

花も映水さんも黄美子さんも琴美さんも母親も出てくる全員どこか狂っていて、ストーリーを作り上げた蘭も桃子も狂ってた。普通に生きてるだけ、私なりに生きてるだけ。それがあなたたちには狂気に映っただけ。

花はお金じゃなくて誰かを愛したくて誰かに愛されたかっただけなんだろうなあ。

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