日記(江戸時代)


今日は近所を歩いていると、

年季の入った巻物が落ちているのを見つけた。

タイトルの部分には、

「江戸時代」

と書かれている。

江戸時代の何なのだろうか。

中を見てみようと拾い上げると、通りかかったおじいさんがこちらに寄ってきた。

ポスティングスタッフなのだろうか。

何かのチラシをたくさん抱えている。

「こんにちは」

とおじいさん。

「こんにちは」

おじいさんは巻物をしげしげと見て、

「なにそれ?」

と聞いてくる。

「私も分からないんですけど、『江戸時代』って書いてあります」

すると

「わしも見たい」

と、縁石にチラシを置いて、おじいさんがこちらに寄ってくる。

雨上がりなので、チラシが心配。

早速おじいさんと2人で巻物を解いていくと、意外と読める日本語で書かれていた。

開ける前に、

「これ開けちゃって大丈夫?」

と心配そうにおじいさん。

「なんでですか?」

と聞くと、

「おじいさんになっちゃうんじゃない?」

とのこと。

玉手箱の感じで喋っているのだろうか。

もう全然おじいさんなのに、お茶目。

そんなおじいさんの話を受け流して

早速「江戸時代」を開くと、書いてあった内容はこんな感じ。


屑日和(曜日)

月曜 紙屑
火曜 紙屑
水曜 資源屑
木曜 缶屑
金曜 紙屑



たぶんこれはゴミカレンダー、ゴミの日といったことだろうか。

おじいさんも、

「わしもそう思う」

と言っている。

巻物に記述はこれだけで、1mくらい紙を余らせた状態で終わっていた。

気持ち悪かった。

あと「缶屑」という項目も気持ち悪かった。江戸時代に缶があった訳がない。

おじいさんはそんな「屑日和」を見て、

「言うて、今とそんなに変わらんのお」

と感心している。

気持ち悪いとは思っていなさそう。

ちなみに今のここ北町のゴミは、


月曜 燃えるゴミ
火曜 資源ゴミ
水曜 プラスチックゴミ
木曜 燃えるゴミ
金曜 金属ゴミ
土曜 ビン、缶


なので全然違う。

私は、

「たしかに、月曜の燃えるゴミは今と一緒ですね」

と言うと、

「だよね」

とおじいさん。

他は全部違う。

それから、

「仕事中だからもう行ってもいい?」

とおじいさん。

全然大丈夫。

私は

「はい、また」

と言うと、

おじいさんは

「はいはーい」

と置いていたチラシを手に、北町の雑踏に消えて行った。

チラシは無事だったのだろうか。

頑張れおじいさん。私も頑張る。

気持ち悪かったので、「江戸時代」はそのままにして私は家に帰った。

家で何を頑張ろうかと思う。

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