日記(棒)


今日は、街で足が棒になってしまったのでマッサージ店へ。

あと家まで歩いて10分くらいのところまで来ていたのに、

このタイミングで棒になってしまったのは残念。

すごすごとお店に入ると、奥のベッドに通された。

着替えて待っていると、

「足立です、よろしくお願いします」

とロングヘアのお姉さんが入ってきた。

「お願いします」

「『足コース20分コース』でお間違いないですか?」

受付でたしかに、「足コース」を20分でお願いしたので私は

「はい」

と返す。

「足コース20分コースでいきますね、お願いします」

「お願いします」

足立さんに促されて、私はうつ伏せになる。

すると

「足立ってどう書くか分かりますか?」

と、足立さん

「足に立つですか?」

「はい」

当たった。

「でも今日は、足を立たせる、そんな勢いでやらせていただきます」

「お願いします」

心強い。

さっそく、

「じゃあ流していきますね」

と足立さん。

くるぶしからふくらはぎにかけて、リンパが流されていく。

棒だった足がいい感じになっていくのが分かる。

気持ちいい。

すると、

「お客様」

と足立さん。

「はい」

「足のマッサージって、算数なんですよ」

とのこと。

「そうなんですか」

「はい、ここが点Aだとするじゃないですか」

と、右足のくるぶしをぐりぐりしてくる。

「はい」

「でここが点Bだとするじゃないですか」

次は右足の膝裏をぐりぐりされる。

「はい」

「こう流すと?」

AからBにぎゅ〜っとリンパが流される。

「こう流すと?」

もう一度聞かれても分からないので、

「分からないです」

と返すと

「ベクトルAB」

とのこと。

「なるほど」

なんとなくイメージは分かるけど。

「ね」

と足立さん。

「はい」

ベクトルは「数学B」とかだった気がする。「算数」ではない。

「じゃあここをCとします」

と、太ももの付け根をぐりぐりしてくる。

「はい」

「じゃあこれは?」

こんどは膝裏から太ももにかけてリンパが流される。

もう分かる。

さっき膝裏をBとしたので、

「ベクトルBC?」

と返す。

すると

「はい」

と足立さん。

合ってるならもっと褒めて欲しかった。

「じゃあ次は」

と、膝裏から太ももまでリンパが流される。

分かる。

膝裏はさっきBとしたので、

「ベクトルBC」だ。

私は

「ベクトルBC」

と答えようとしかけたところで

「まだです」

と足立さん。

「すいません」

つぎに、太ももからくるぶしにかけてリンパが流される。

これは「ベクトルCA」だ。分かる。

すると

「はい」

と足立さん。

「今の2つを足すと、何ベクトルでしょうか?」

と続ける。

なるほど。

「ベクトルBC+ベクトルCA」

ということか。

難しいように見えるが、私は数学Bをやったので分かる。

「ベクトルBAですか?」

と答えると、

「はい」

と足立さん。

合ってるなら褒めて欲しい。

そしてベクトルBA、つまり膝裏からくるぶしにかけてリンパが流された。

これによって、さっき流れたはずのリンパが戻ってきた感じがした。

合っているのだろうか。

すると、

「そしたら今から練習問題やっていきましょうか」

と足立さん。

テストじゃなくてよかった。

「分かりました」




それから20分間問題を練習したところで、

「お疲れ様でした」

とお姉さんが部屋を後にして行った。

ベッドから立ち上がると、さっきまで棒だった私の足が見事に普通の足に戻っていた。

すごい。ありがたい。

「ありがとうございました」


部屋を出ると、受付に足立さんが待っていた。

「マッサージは算数、お分かりいただけましたか?」

とのこと。

数学Bではあったけど、効果はあったので

「はい」

と返す。

それからお会計。

「20分で1850円です」

とのこと。

しかし料金表を見ると、

「10分1000円」

となっている。

1850円は、絶対に×2の金額じゃない。

怖い。

指摘すると、

「すいません」

と足立さん。

私は2000円払って店を後にした。

私は足立さんに、「お会計は算数」と伝えたい。

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