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木星堂エッセイ~ナプキンは天下の回りものの巻~


※今回のエッセイは、生理の話題を含んでいます。
お気に召さない方はブラウザバックでお願いします。


単発バイトをした。
大学院を休学してはや9ヶ月、
家でゆったり病気療養していた私が、単発バイトに出かけた。
驚くべき回復である。
これは人類にとっては小さな一歩だが、
海にとっては社会復帰の偉大な一歩である。

久しぶりのバイトということで、
単発バイトの数日前から不安に見舞われっぱなしだった。
そんな不安も手助けしたのか、
単発バイト中に予定外れの生理が来た。
ぎゃーーーーー!!!!
身体が!! ホルモンまでもが!! 働くことを拒否している!!!
予定外だったためナプキンの手持ちもない!
(日ごろから持ち歩いておこうね)

トイレでええ……どうしよう……と思っていると、
隣のトイレから
私と年齢が近そうな、茶髪の女の子(Aちゃんと呼ぶことにしよう)
が出てきた。
バイトの点呼や業務説明でも近くにいた記憶がある子だ。
ええい、ままよ! と話しかけてみることにした。

私の話を聞くと、Aちゃんは
「ええ大変! その気持ちめっちゃわかりますよ~~。
急に来ますよねえ。」
と、まず最初に共感の意を示してくれた。
まず共感から入る。コミュニケーションの基本ですな。
その後、Aちゃんは
「ここの社員さんに、ナプキン持ってないか聞いてみましょう!
社員さんなら備品のことも知っているかも!」
と行動にまでも移してくれた。
私には『社員さんに聞く』という選択肢がなかったので
まさに目からうろこだった。
三人どころか、二人集まって文殊の知恵が出てしまった。

Aちゃんに呼び止められた社員さんが
「会社の備品はないんだけど、私のナプキンが車の中にあります!」
と言う。
遠い駐車場まで、わざわざ取りに行ってくれるらしい。
もう頭が上がらない。

社員さんが駐車場へと去っていったのを見送ってから
Aちゃんが
「もしかしたら社員さん、予備のナプキンを一枚しか持っていないかもしれませんよね?
一枚じゃ足りないですよね。
私、これからコンビニにお昼ご飯を買いに行くんです。
ナプキンも買ってきますよ!」
と仰る。

もう頭を床にこすりつけながら
「ありがとうございます……ありがとうございます……」と
お礼を言うしかなかった。

Aちゃんがコンビニへと去った後に
社員さんが戻ってきた。
なんと、紙袋にナプキンを5枚も入れてくれている。
「合間に替えれるように5枚入れておいたからね、
体調は大丈夫?
無理しないでね。」
とのこと。
もう、人の優しさが染みわたりすぎて
平身低頭のまま感謝を述べる生き物になっていた。

Aちゃんもナプキンを買ってきてくれ、
気付けば私はいつのまにか
人の善意で
ナプキンを10枚ほど持っている女になったのである。
なんだこれは。ナプキンわらしべ長者?(違う)

大前提として、私は
人を「男は」「女は」と区別することが苦手である。
そんな大雑把な二択で括られてたまるか、と思うこともある。

だが、女性(というか、生理を経験していたり、した人)には
「急に生理になってしまったひとを助ける」という
連帯がどこかにあると思う。
なぜなら、誰もが経験したり、今後経験しうる事態に関することだからだ。

今回、ナプキンをもらう立場だった私も
10年前、昼用ナプキンと夜用ナプキンを一袋半ずつ
同級生にあげたことがある。
(なんとオーストラリアで!)
とても感謝をされたこと自体は覚えているが、
誰にあげたかはもう覚えていない。

あと、駅のトイレなどで「ナプキン持ってませんか?」と聞かれ
どうぞ、とナプキンを差し出したことも一度や二度ではない。
誰にあげたかなんて、覚えていられない。
同じように「駅でナプキンあげた」という話をする友人も
一人や二人ではない。


そういうものなのだろうと思う。
支え合いの連帯がここにあるのだ。
女たち(と今回はあえて言わせてもらう)にとって
ナプキンは天下の回りものなのかもしれない。

ありがとう。女の連帯よ。
私もいつかまた、ナプキンを誰かに差し出せるように
きちんとナプキンを持ち歩いていたいと思う。


労働の後のビールはうまい!海


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