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お宝

えー、断捨離が一時期流行っていましたが、私は物が捨てれずにいます。

何かに使えるかもって取っておいて、使わないものが大抵です。


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納屋の掃除なんて、しちめんどくさい事をバーちゃんに頼まれた。
まあ確かに、いい年にもなって仕事もせずに、プラプラしてるだけの俺にはうってつけの仕事だ。
最初はやる気がなかったが「お宝が眠っているかも」なんて言葉に釣られてしまった。

ここにお宝がなんて思えないほど納屋は、埃だらけで暗く、なんとなくじめっとしていた。

ダンボールの山を開けては閉めて積み上げる。ダンボールの中は大抵が置いておく価値があるのかわからないような物ばかりだった。


奥の方にあった一番大きなダンボールの中に兜が入っていた。兜の装飾品こそちょっと歪んでいる気がするが、そこそこ綺麗で出すとこに出せば、いい値段で買い取ってもらえそうな、今までの物とは違う感じがした。
「これはお宝だ」
そう思って、なんとなく兜を被った。
あつらえたようにジャストフィット。戦国武将の気分になった。

そんな事をしている場合か!
なんて自分にツッコミを入れつつ兜を脱ごうとしたが、どう引っ張っても脱げなかった。
すると兜の入っていたダンボールから声がした。

「やっと次が来たか」
ダンボールの箱から男が出てきた。
「今度はお前の番だよ」
俺は何か言おうとしたが声が出ず、体もだんだん動かなくなってきた。
「よし、オレも前の人に習って、お前をダンボールに入れといてやるよ」
そう言ってその男が入っていたダンボールに詰められた。
「じゃあな。次が来るまで頑張れよ。オレは心を入れかえたぜ、すぐに仕事を探して働くよ」
そう言って男は納屋から出て行ってしまった。

あの男はどれだけの時間ここにいたのだろう。
どことなく親父と似ていたが、もしかしてたまに話に出る「穀潰しで役に立たずの行方不明の親父の兄」だったのだろうか?

あの男もプラプラ働かずにいて、ここの掃除をバーちゃんに頼まれたに違いない。
バーちゃんが言ってたっけ「働かずにいるとお前の親父の兄貴みたいになる」って……




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