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サボテン

オシャレなサボテン専門店があると知り、行ってみました。

ごきげんよう、もくれんです。

閑静な住宅街、駅からも遠く駐車場もない、そんな辺鄙な場所にそれはありました。
雑誌で読んで「へぇ行ってみたいなぁ」と思ってたものの「店の名前漢字一文字で4文字の読み、なんだっけ?」と忘れてしまい、Google マップで「うごめき」「まにまに」などと試行錯誤した結果出てきました。叢(くさむら)でした。

Apple Store並みにおしゃれな店内、並ぶ高額サボテン。10万超えてるやんけ。オープンと同時に行ったこともあって、お客さんは私だけ。店員さんがサボテン情報をたくさん教えてくれる。

「これは綴化といって、本来サボテンは成長点がひとつしかないんですけど、成長点が線状になったことで形が本来とは別の形になった突然変異なんです。」

「これは柱サボテンに別のサボテンを接木して、上のサボテンの成長を促進してるんです。」

などなど、奥深いサボテンの世界。サボテンに無知な私には面白くてたまらない。これは?あれは?それってこういうこと?と質問し、彼からはどんどん知らない単語が繰り出される。モンストローサ、般若、複隆、刺座、どれも知らない言葉ばかりだ。

私は基本的に、語彙が増えることが嬉しいので知らない単語を聞くとワクワクする。どうしてそういう言葉で呼ばれてるのか気になってすぐググる。モンスロトーサは間違えてモンテローザを調べてイタリアンチェーン店出てきたけど。

お店のオーナーが上梓したサボテン写真集もあり、ひとつひとつのサボテンに名前がついているのだが、和名がとにかくカッコイイ、というか日本酒の命名と似ている。若干中二病な強さを感じる。その中に「なるほど柱」という不思議なネーミングのサボテンがあった。なんだそりゃと思って、思わずふふっと声が漏れたら店員さんが「何か面白いものでもありましたか?」と声をかけてくれた。

「なるほど柱ってなんでですか?なにもなるほどポイントがないんですけど。」

「あー、それはですね、、突然変異で針のないサボテンなんです。ちょっと卑猥な話になってしまうんですが、男性器に似てるってことで、サボテン農家のおじいちゃんたちが名前をつけたんです。別名、珍宝閣って言います。」

「へー、そうなんですね。植物ってだいたい卑猥ですもんね。花でも風船唐綿っていうのがあるんですけど、すごく可愛い風船みたいな見た目なのに、竹串とかで刺すと中から白い液体垂れてきて卑猥なんですよ。ちなみにその風船が裂けて中から種と綿毛が出てくるんですけど、その見た目は女性器そっくりなんですよね。」

植物卑猥トリビアで対抗してしまった。なんのデュエルを始めてるんだ、私は。
結局、そんなこんなで小一時間もいた。ここまで居てしまうと、流石に買わなくてはという罪悪感が芽生える。と同時に、蘊蓄をたくさん聞くと普通に欲しくなる。入口に鎮座していたサボテンは器も陶芸家さんの作品で12万とかだったような。隣にある3万くらいのサボテンがやたら安く見える不思議。マツコの知らない世界でも言ってた。こうやって超高値のものを見てからだと他の高額商品が安く見えてしまうって。さっきまでサボテンそうのものを見ながら店内をまわってたのに、ついに値段を見ながら廻り始める。もうダメだ、こうなったら買っちまうやつだ。ああ、こうして金は無くなっていくのだな。

柱サボテンの上に世界最小のトゲなしサボテンを接木した子が可愛い気がする。これにしようかな。でもパキラを枯らしコウモリ蘭を枯らした私である。ほんとに買って育てられるだろうか。いや、水やり頻度はコウモリ蘭より少ないし、サボテンは過保護が嫌いって店員さんも言ってたな、、。え、でもこの前私ナス腐らせたばっかりなのに?いやでもナスとサボテンは。。いえ、ええい、ままよ!そんなこと言ってたら一生何にもチャレンジなんてできないわい!!

「この子、卑猥ですかね?」

人の店の商品に対して、卑猥か尋ねる一見客。小首を傾げた彼にそんなことないと思いますよ、と言われても

「成長したら卑猥になります?」

と畳み掛ける←
花や植物の卑猥さには見慣れてるところもあり、もう何が卑猥で何が卑猥じゃないかわからない。ジョージア・オキーフが花の美しさを描きたかっただけなのに、花のエロティシズムを描いた画家だと揶揄されたのを思い出す。店員さんはご丁寧に成長したらこんな感じ、という画像を探して見せてくれた。

「じゃぁこの子にします。」

さっきまでぐりんぐりん逡巡してた脳内会議なんてまるでなかったかのようにサラッと答えた。


はー、税込14,300円かぁ。UNITED TOKYOのワンピ買えたなー、Astoriaなら3着は買えるな!とひとりごちつつも「服は一瞬、サボテンは一生」と思うことにした。

柱サボテンの上に乗っている世界最小のサボテンの名前は松露玉というらしい。転勤先の佐賀に松露饅頭ってあったなぁ。なんかちょっと嬉しい。世界最小だから、松露なんだろう、綺麗な名前だ。

どうやって持って帰るのかと思ったら、薄紙とマステで梱包してくれた。さながら、お雛様のようである。
針が刺さると危ないので(柱サボテン部分には鋭い針がついている。松露玉には針はない)このようにするらしい。育て方の説明書もつけてくれたので、読んでみると「夏に弱い」とある。あんた、炎天下に耐えられるように発達したんじゃなかったの?真夏の直射日光を当ててはダメで、レースカーテン越しの日光が程よい。。ふむ、なるほど?平安時代の姫かな?扇でも買う?やっぱりお雛様?昼間の太陽が暑すぎるなら、夕方ベランダに出してあげたらいいかしら?あれ、西日もダメなの?なんで??朝夜の温度差を感じづらくなるから西日に太陽に当てるのはNG、ふーん、、、


めんどくせぇ。思ったより全然めんどくさい。部屋のどこにおこう。もうサボテンを中心に部屋のインテリア考えないとダメじゃない?むずー!

まぁでも「服は一瞬、サボテンは一生」だからな。サボテンチャレンジに成功したら、次は熱帯魚チャレンジして、最終的にはぬか床チャレンジまでできるかもしれないし。

若干イソップ童話の酸っぱい葡萄じみてきたが、いろいろ言い聞かせつつ部屋に持ち帰った。

部屋でぺりぺりとマステを剥がし、薄紙を剥くと早速トゲで指を刺した。こういうお約束を必ずやっちゃうんだよなぁ。名前何にしようかな。松露ちゃんかな。まんまだな。本棚の上に置いてみる。ベッドの上から眺める。



うん、男性器じゃない?


服は一瞬、サボテンは一生。
100歳になるまでには目が慣れてくると信じている。

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