誰よむ短歌#2(朗読者:もくめ)
先日私が朗読者を務めた「誰よむ短歌#2」の文字版です。
短歌マガジンの「誰よむ短歌#2」に投稿して頂いた自由詠31首と、題詠「プレゼント」から7首選んで感想を書いています。
自由詠(31首)
月も凍るような寒い夜ですね。
布団の中にいても手や足だけ冷えてしまうことありますよね。
主体はきっととなりに眠っている人の手にそっと触れたのでしょう。
「わたしの手」が「あなた」を見つけているところがよいなぁと思いました。
主体が実際に温まっているだけではなく、ほっと安心しているのも伝わってきます。
ピアノの練習をしている景ですね。
私も昔ピアノを習っていたので、主体の気持ちが分かる気がしました。
間違えているのは主体も分かっているんですよね。
わざと間違えたわけではないですし。
「指摘」とありますので、冷たく言われたのでしょうね。
それで嫌になってしまって。
でもそれで落ち込むのではなく、「猫をふみだす」のが主体の強いところですね。
「猫をふみだす」は猫ふんじゃったという曲を弾き始めたと取りました。
あの曲は楽譜を見なくても弾けますから。
「猫をふみだす」という言い回しもいいですね。
きっと力を込めてテンポも速く弾いてるんだろうなぁと想像しました。
主体はアレルギーに気をつけなければならない体質なのでしょう。
この歌にある通り、アレルギー表示の対象には28品目があります。
義務表示と推奨表示という区分があり、例えば義務表示になっているのは、えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生の8品目です。
私はたまたまアレルギーがないので、想像になってしまうのですが、買い物をするとき、外食をするとき、常に品目を気にしなければならないのは大変だと想像します。
アレルギーは、食品の中に含まれている物質をカラダが異物だと認識してしまい、免疫が過剰に反応してしまうために発症します。
主体のカラダは異物に対してとても敏感です。
しかし、「あなた」と接することは、主体にとっては「異物」ではなく、とても自然なことなのです。
結句のストレートな「好き」が素直に響いてくる一首だと思いました。
補足:ういなつさんのコメントでは、「体調悪くてポカリスエットばっかり飲んでた時にラベルの「アレルギー物質28品目:なし」のワードが目について詠みました これアレルギー起こしやすいものが少ないんだなー、みたいな。」とありました。
お仕事の早番があるのでしょうか。
家族みんながまだ眠っている中、主体だけが起きています。
白米香る湯気っていいですね。ほわっと良い香りがしてくるようです。
「みんなが眠る吐息」も「温かい」にかかっているのですよね。
みんながいることが主体の支えになっているのではないでしょうかなと感じました。
主体は心の中でみんなに「いってきます」と声を掛けて、出かけていくんじゃないかなぁと思いました。
「正論の塊」は会話の相手としては疲れてしまいそうですね。
たまにはゆる~く話したいのに、「それは違うんじゃないか」とかピシッと言われたりして。
そんなあなたからなぜか鱗が溢れてきます。
鱗があふれるということで、鱗がはがれるケースを調べてみたのですが、他の魚とのけんか、病気、水槽の中で暴れたなどがありました。
なにかきっかけがあって、あなたは変わったのではないでしょうか。
それは優しいものではなく、あなたにとって痛みを伴うきっかけだったのではないでしょうか。
ムラサキ色のイメージを調べたところ、美意識が高い、精神性が高い、ミステリアス、こだわりが強い、などがありました。
主体が拾ったムラサキの鱗は、あなたの性格の一部が剥がれ落ちたものだったのかもしれませんね。
主体の具体的な状況は描かれていませんが、切羽詰まったものを感じる一首です。
がんばれるぎりぎりをなんとか踏みとどまっているように思いました。
シンプルだからこそ、切実さを感じます。
年の瀬は憂鬱になりやすい時期でもあります。
主体の願うものが少しでも明るいものであればいいなと思いました。
「金継ぎ」は、陶器などの割れや欠け、ひびなどを漆で修復し、修復部分を金などで装飾する、日本の伝統的な技法です。
金継ぎは、傷をなかったことにするのではなく、傷痕を景色としてとらえ、継ぎ目を装飾します。
傷もその品物の歴史と考えて、新しい命を吹き込むという理念の元、行われているそうです。
歌にもあるように、「傷跡をあえて」光らせているのですね。
主体から見ると、相手は傷跡も含めて魅力的に映っているようです。
ですが、相手はもしかすると自分に自信を持てていなかったのかもしれません。
だから、主体があなたは傷跡ごと素敵な人だと伝えているのではないでしょうか。
結句「あんたのことだ」というぶっきらぼうな言い方にも惹かれる一首でした。
星を見る主体は、ギリシャ神話の神々に思いを馳せます。
そこでロマンチックな方向に行かず、「酒でやらかす神もいたこと」と淡々と思っています。
ギリシャ神話の神々は、人間味のあるキャラクターとして知られています。
主神のゼウスは浮気を繰り返し、妻のヘラは嫉妬したりします。
調べきれなかったのですが、中にはお酒によって失敗してしまったという神様もいたのかもしれません。
主体は飲み会の帰りで、酔っぱらっている仲間たちを見て苦笑しながら、ふと夜空を見上げる。
神さまだって酔って失敗したりしたんだよなぁ、人間も神様もしょうもないなぁなんて思ったりして。
通常はあがめたてまつる神様を、自分たちと同じものとしてみている主体の視点が面白いと思いました。
お子さんを叱った時でしょうか。
「ママなんか嫌い」
深い意味はないかもしれないけれど、嫌いと言われて傷つかない人はいないでしょう。
そこでタイミングよくなのか、悪くなのか、KANさんの「愛は勝つ」が流れてくる。
「心配ないからね 君の想いが 誰かにとどく明日がきっとある」
誰かにじゃなくて明日じゃなくて、目の前の子どもに今届いてほしいんだけどなぁと主体は思ったかもしれませんね。
偶然性がコミカルに描かれていて、面白い一首だと思いました。
とても面白い小説に出会ったのでしょうね。
栞紐を使う間もなく読み終わってしまったようです。
栞紐が付いているということは、多少厚みのある本だと思うのですが、主体は一気読みしたのですね。
結句の風で、栞紐がゆらゆらと揺れているのが頭に浮かびました。
のめり込むように本を読む時間って幸せだよなぁと思う一首でした。
本当にそうだなとうなずいてしまう一首でした。
学校に行って学ぶこと、将来の夢を描くこと。
自由であるはずのものが踏みにじられていくんですよね。
子どもは特に何も分からずに現実に巻き込まれていくでしょう。
私たちはニュースなどでしか触れることはできませんが、実際にそういう状況に直面している人たちがいて、その人たちは私たちと何も変わらない一般の方々だということを忘れずにいたいと思いました。
補足:ぷぷこさんのコメントでは「戦争は当たり前の幸せを消していくなと思いました。」とありました。
擬音が面白い一首ですね。
早口言葉や口の体操のようにも感じました。
「目交ぜ」は「目で合図をすること。目くばせ」の意味です。
豆の芽が伸びて、つるを巻き、主体が誰かに送っためまぜはなかったことになってしまいました。
おとぎ話や絵本のような一首だと思いました。
どきどきしてしまう一首ですね。
友だちと恋人の境界線に立っている二人でしょうか。
カーブミラーは、見通しの悪い交差点や先の見えにくいカーブで、運転手の目には直接見えない車や歩行者の存在を知らせるためにたっています。
カーブミラーにも映らない、誰にも気づかれない、本人たちしか気づいていない一瞬のふれあい。
意図して触れたのか、偶然触れたのか。
一瞬性を切り取った、どきっとする一首だと思いました。
外光は、建物の外部からの光という意味です。
ネット、本、映画、テレビ、いろんなものが「外光」にあてはまりそうですね。
光があたり、取り込むたびに透きとおって、伝えたい言葉が溢れる主体。
結句の炭酸が爽やかな印象を残す一首だと思いました。
補足:西見伶さんより「ネプリ「僕と炭酸」の宣伝短歌?なるものです!!隙あらば宣伝の精神!!」というコメントがありました。
爪が割れるととても痛いですよね。
それを自主的にやってしまう主体。
何がそんなに主体を追い詰めてしまったのでしょうか。
自罰的な主体が痛々しく感じる一首です。
屋上に立っている主体。
主体はフェンス越しに空を見ているんですよね。
そのあと、主体はフェンスを越えてしまったのかどうかが問題だなと思いました。
「天使になった」は「飛び降りた」という意味なのかどうか……。
もしそうだったとしたら、「道行く人」から天使に見えたのは数秒です。
ドンッという音や、道行く人のざわめき、救急車やパトカーの音。
そこまで想像するのは深読みかもしれませんが、いずれにせよ不穏な歌に感じました。
オリオン座って見つけやすいですよね。
私も冬になるとよくオリオン座を探してしまいます。
星空にはもっと色々な意味があるのかもしれませんが、主体にとって重要なのは「君の隣」で夜空を見つめることなんですよね。
もしかしたら君が星に詳しくて、主体は君の天体観測に付き合っているのかもしれないですね。
寒さを感じながらも、心があたたかくなる一首でした。
歌を二つ思い浮かべました。
一つは、「玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする」という式子内親王の和歌。
もう一つは、「柔肌の熱き血潮に触れもみで悲しからずや道を説く君」という与謝野晶子の短歌。
ずいぶんと情熱的な歌が二つ並びました。
この歌自体を意訳してみると、「触れそうなところで触れもしないでいざよっているきみに、私の方からいつか触れたい」という感じでしょうか。
お互い好き同士となんとなく分かっていて、相手が一歩進み出るのを待ってじれている歌と読みました。
本歌取りを上手く利用している一首なのではないかなぁと思いました。
言葉選びが素敵な一首だと思いました。
主体はずっと焦がれていた誰か、もしくは何かに受け入れられたのかなと思いました。
それが「青に溶け」であり、「焦がれた光に包まれて」であるのではないかと読みました。
そして、いつもはなんとも思っていない空を見上げると、なんだか優しい色をしているように感じたのではないでしょうか。
上の句と下の句で落差を感じる一首です。
上の句ではとてもあたたかだった印象が、結句で寂しい結末を迎えています。
実景的に読むとすると、恋人やパートナーが添い寝をしてくれて、包まれて安心して眠った。
朝になると、仕事なのか習慣なのか、相手は主体よりも先に起きています。
「消える」ですから、家自体を出てしまっていそうですね。
眠っている間にぬくもりが消えてしまうという、寂しい印象を残す一首だと思いました。
主体は傷ついても気にしないふりをしなければならない環境にいるようです。
「気にしないふり」という動作に慣れたとしても、傷ついた時の痛みを感じなくなるわけではないはずです。
現状を否定してはならない、傷ついたと認識する自分が間違っているのだ。
そんな風に自分を後回しにしてしまった結果、主体は「ほんとの感情」を忘れてしまいました。
できるならば、今いる環境を抜け出して、素のままの自分で生きていけるようになってほしいなと思いました。
「会いに行く」の後に句点(。)が入っています。
それだけ強い想いだということでしょう。
主体は朝まで待つことができないのです。
「夜行列車の切符」がどこか古風にも感じ、文学的な雰囲気を感じる一首だと思いました。
物語っぽくて素敵な言い回しの一首だと思いました。
月から迎えが来るといえば竹取物語のかぐや姫ですよね。
「あなたはかぐや姫のように美しい人ですね」と言っているのかなと思ったりしました。
そうだと考えると、主体はちょっと気障な方なのかもしれませんね。
補足:春永睦月さんより「「みてごらん」からはじまる歌を詠む、に投稿したものです。」というコメントがありました。
待ち合わせをしている相手がなかなか来ません。
待っている間にグラスを空けてしまった主体。
「来ないとわかって」ということは、行けなくなったという連絡が入ったのかもしれませんね。
相手にはきっと事情があったのでしょう。
主体は「しょうがないよ。気にしないで」とでも返信したのではないでしょうか。
ひとりでもう一杯飲む主体の姿には寂しさを感じました。
補足:おむらいすさんより「待ち合わせに来ない待ち人のうた」とコメントがありました。
海を見たことのない人にどうやって「波」を教えるか。
なかなか難しい問題ですね。
水がなんども押し寄せて、引いてを繰り返すんだよ。
そんな風に言われてもぴんとこないかもしれませんね。
主体は相手の手を自分の胸に押し当てて、寄せては返す波のリズムを教えます。
「これが波です」の前の一字空けが効いている一首だと思いました。
「人生は」というのはなかなか大きな主語ですね。
「最初に振ったサイコロ」は何を意味するのでしょうか。
賭けに出た、つまり何かに挑戦したときでしょうかね。
「物心つく」は、幼児期を過ぎて、世の中のいろいろなことがなんとなくわかりはじめることで、4~5歳くらいとも言われています。
この歌では、物事の分別がつけられるようになるのは、自発的に何かに挑戦し、その時に出た結果で決まるといっているのでしょうか。
サイコロを振った時に物心つくのではなく、「出た数字で物心つく」と言っているのが面白いなと思いました。
メドゥーサは、ギリシア神話に登場する怪物です。
元々は美少女であったメドゥーサは、アテーナーの怒りをかい、醜い怪物にされてしまいます。
宝石のように輝く目を持ち、頭髪は無数の毒蛇で、イノシシの歯、青銅の手、黄金の翼を持っています。
見た者を恐怖で石のように硬直させてしまうとされています。
メドゥーサは英雄ペルセウスによって首を切り落とされ、退治されました。
ペルセウス座という星座もあり、右手に剣、左手にメドゥーサの首を持った姿で描かれています。
ペルセウス座を調べていて知ったのですが、「ペルセウス座流星群」という流星群があるそうですね。
この歌は、その流星群を描写しているのではないかと思いました。
ペルセウス座流星群は、三大流星群のひとつで、年間でも常に1・2を争う流星数を誇るそうです。
ここからは勝手な読みとなってしまうのですが、ペルセウスがメドゥーサの首を刎ねた時に髪も一緒に切れ、恐らく天界と言われる場所に住んでいたメドゥーサの髪が夜空を流星群となって落ちていく様を想像しました。
それが地上に堕ちてくる。
凄惨で美しい光景だと思いました。
「nakanakana jagabata-dana anatanara gagaha sanagara hanatakadakada」ですべてa音なんですよね。
コメントにも、「朗読なされるということで「あ」で固めてみました。秋田名物みたいに寒天で固めたみたいになりました。」と書いて頂きました。
ちなみに、秋田県ではなんでも寒天で固める文化というものがあるらしく、ポテトサラダを寒天で固めた「サラダ寒天」や「たまご寒天」なんてものがあるらしいです。
声に出して楽しい歌というのもよいですね。
主体はすぐに枯れてしまうと分かっている花をあえて選び花束にします。
「遺言みたく」が不穏な言葉選びです。
ランウェイとは、ファッションモデルなどが歩く細長い舞台のことですね。
晴れの舞台に立つ主体は、これで最後になるかもしれない、なってもよいと思っているのでしょうか。
「遺言」も「ランウェイ」も誰かに託す、見せるための装置です。
主体は誰かに自分の思いや主張を伝えたいのだと強く感じました。
結句のイルミネーションで、目の前にぱあっと光が現れる感覚になりました。
主体のせいで泣いているというよりも、相手が傷つく別の出来事があったのではないかと想像しました。
主体は相手を慰めるためにイルミネーションを見せます。
好きな色を見たくらいでは、相手の気持ちは収まらないかもしれません。
それでも、泣き止んで欲しい、少しでも喜んで欲しいという主体の心遣いは、相手の心を和らげるのではないかと思いました。
補足:糸瓜さんより「毎日お題「みてごらん」の初句しばりの作品です」とコメントがありました。
不確かなことってどんなことかなぁと考えたのですが、自分や他人の気持ちだったりするかなぁと思いました。
好きになったり、嫌になったり、その中間だったり、無関心だったり。
気持ちって一定じゃなくて常に動いていますよね。
それを頼りにするのは不安なことです。
結句の冬木立は、冬になって葉の落ちた立ち木が立ち並ぶ姿を冬木立といい、俳句の季語になっているそうです。
主体の寒々しい所在無げな心境を表していると思いました。
題詠「プレゼント」(7首)
プレゼントって渡す前から始まってるんですよね。
これを渡したら喜ぶかなって想像しながら準備する。
主体と君のあたたかな関係が伝わってきて、思わずにっこりしてしまう素敵な一首だと思いました。
こちらはプレゼントをもらった側の歌です。
もらったプレゼントを大切に扱っているのが伝わってきます。
贈った相手の気持ちごと大事にしたいと思っているのだなぁと感じました。
これは良い手だなと思いました。
自分の好きなものを買って、かわいくラッピングしてもらう。
テンションがあがりますよね。
家に帰ったら、2の歌のようにゆっくり丁寧に包みを開けるのだろうなぁと思いました。
これは共感しました。
本が好きな人は、図書カードもらうとものすごく嬉しいですよね。
「無限に広がるプレゼントたち」が主体の喜びを表していると思いました。
主体はひやっとしたと思いますが、とてもほっこりする一首です。
サンタさんどこかな~とか言いながら、隠し場所から必死にこっそりプレゼントを出して置いたでしょうね。
普段お疲れのところに、さらにサンタ業務もこなして、お疲れさまですと主体に伝えたいです。
かわいい一首だと思いました。
語尾の「だし」がちょっと照れていますよね。
「一生分のプレゼント」という言い回しもちょっと幼い感じがして、そこが良いなぁと思いました。
「おかあさんぜんぶだいすき」はすべてひらがなになっています。
自由課題でその言葉を選んだのでしょうね。
半紙いっぱいに、元気よく書かれているのが想像できますね。
愛しくなってしまう一首です。
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