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スマートホームにこそ物理スイッチが必要という話

前回、前々回とスマートスピーカー(スマスピ)の活用事例についてまとめてきましたが、次はスマートホーム(もどき)編となります。いわゆる皆さんがスマートスピーカーで出来る事としてイメージするものがメインで出てきます。

ただその前に、どうしてもこれだけ言っておきたいと思ったので、1つ記事を間に挟みました。これまでの記事、そしてこの後の記事を読んでスマートスピーカー買ってみようかな、特にスマートスピーカーで家電を操作したいなと思った方への注意喚起です。是非読んで下さい。

スマートスピーカーを買った後で、「何だよ失敗したよ!」と思って欲しくないので、よろしくお願いします。

■ 家電に音声入力って必要ですか?

我が家には3台のスマートスピーカーとWifi対応の赤外線リモコン、それからスマートLEDライトが設置されています。赤外線リモコンには、テレビ、エアコン、シーリングライト、扇風機が登録されていて、スマホアプリやスマートスピーカー経由で音声操作が可能になっています。スマートホーム化もどきと言ったところでしょうか。

自宅構成

ところで、スマートホームやスマート家電というと、CMでも紹介記事でも『音声で』というポイントがひときわ強調されていると思います。これまでには無かったポイントですし、何より近未来感があるので差別化という点において強調したい気持ちは、よく分かります。

ですが、皆さんよーく考えて下さい。

「音声操作ってめんどうくさくないですか?」

例えばテレビの場合ですが・・・・・・

■ リモコンの場合
 1. リモコンを探す (大抵の家は定位置にあるので探すまでもない)
 2. 電源を押す
 3. 2秒ほど待つ
 4. 見たいチャンネルのボタンを押す
 5. 2秒ほど待つ
 6. 観られるようになる
■ 音声操作の場合
 1. 「アレクサ」と言う
 2.  アレクサが「ピコン」と反応するのを待つ
 3. 「テレビをつけて」
 4.  アレクサが反応してから、テレビの電源が押されるまで待つ (5秒くらい)
 5. 「家電リモコンでチャンネルを1に変えて」
 6.   アレクサが反応してから、チャンネルが変わるのを待つ (5秒くらい)
 7.  観られるようになる

とまあこんな感じで手数はそれほど変わりませんが、発声の時間と命令が実行されるまでのラグがどうしても必要になります。地味ぃ~に時間を食います。

もちろんテレビ自体がスマスピ対応型のような最新版であれば、もう少しレスポンスや使うコマンドはスマートだと思います。ですがそれでも、ボタンをぽちっと押すのと、声を出して命令をするのでは、必要な労力が全然違います。

では、私はまったく使っていないかと言うと、そんな事はありません。そこそこ使います。特に会社から帰宅した時はまず間違いなく使います

メリットは次の2つです。

1. 部屋に入ってスーツを脱ぎつつテレビをつけられる
 (=作業しながら同時進行なので、時間のムダと感じない)
2. 手を洗う前にテレビをつけられる
 
(= 電車通勤なので、手洗いうがいをしてからリモコンには触りたい)

いやいや、そんなにテレビ観たいの?別にそこまで時間のロスとか気にしないわ。と思う方も多いでしょう。

それではもしこれが、8月の猛暑に帰宅した時で、操作する家電がエアコンだった場合は、果たしてどうでしょう。むしろ玄関から叫んででも電源を早くONにしたいですよね。そしてスーツも早く脱ぎたいですよね。そういう事です。

とまあ、こんな感じで大体は要らないけれど、『時と場合によっては』音声操作の方がメリットがあるという事をお分かり頂けたでしょうか。

■ 音声入力”しか”出来ない家電の辛さ

では、今度は視点を変えて、もし家電の操作を『音声入力しか出来ない場合』はどうでしょうか。

これは先ほど書いたとおり、とてもめんどうですよね。だって目の前に押せるボタンがあるのに、わざわざスマスピに向かってコマンドを叫ばなくていけないのですから。

「いやいや、そんな家電ないでしょ?」

そうお思いのあなた、これ、実はとても大きな盲点です。実際にはあります。目の前にスイッチがあっても、スマスピ環境下では、それを押してはいけない家電。


その家電とは何か。それは・・・・・・


ライトです!


「いやいや、ライトって、最近はリモコンもあるし、壁にスイッチもあるじゃないか」

はい、そこです。他の家電と違ってライト・電灯が盲点である理由、それは―― 壁にスイッチがある事です。

■ 音声入力"しか"使わざるを得ないカラクリ

皆さんは部屋にある壁のスイッチ、あれって何だと思っていますか。

「部屋のライトのスイッチ」

はい、その通りです。ただ、ちょっと違うとも言えます。

正確にはあれ、

部屋のライトの『主電源』です。

リモコン対応型のシーリングライトをお使いの方はご経験あるのではないでしょうか。夕方ソファに座っていて、暗くなって来たので手元のリモコンでONとしてみたが、何故か電気がつかない。ああ、スイッチ切ってあった。と思いだし、歩いて壁のスイッチを押したら、普通に電気がつく。なんてシチュエーション。

それは何故か。ライトの主電源(=壁のスイッチ)が切られているので、リモコンの操作を受け付けてくれなかった訳です。

これ、テレビだったらどうでしょう。わざわざテレビまで行って主電源を切る人は今のご時世はほとんどいないと思います。リモコンで消しますよね。


では、ライトはというと、恐らくほとんどのご家庭では、リモコンはテーブルとかベットとか自分の居場所の横にあって、ドアからはほど遠い場所だったりするはずです。(電気をつけるときも消すときもリモコンを使う事を義務づけているというご家庭であれば別ですが) すると、どうなるか。

部屋から出るとき、壁のスイッチで電源のON/OFFしますよね。

そうなると、主電源を切ってしまっているので、リモコンはもちろん、スマートスピーカーからの操作も受付けないという事になります。

言い方を変えると、音声操作で電源のON/OFFをしたい場合は、壁のスイッチを封印しなければいけません。リモコンは手元に置いておくとして、部屋から出るときはいつも「アレクサ、電気を消して」と言って、出なければいけなくなります。

便利になるからと導入したのに、逆に『音声操作に縛られる』という不便が生まれるという訳です。

■ スマートホームこそ物理スイッチが欲しい

では、どうすればいいでしょうか。私も正直困っているのでいろいろと調べています。が、正直言って対策がありません。今見つけた対策は以下の通りですが、正直どれもこれもパッとしません。

1.  Wi-Fi対応の壁スイッチに変える
2.  センサを仕込んで自動点灯にする
3.  IoTスイッチとIFTTTを使って、物理スイッチもどきを作る
4.  アプリ・スクリーン付きスマスピをリモコン代わりにする
5.  諦めて多機能リモコンを買う
6.  諦めて壁のスイッチをバシバシ押す

1.のWi-Fi対応スイッチはネットで検索すると、多少は出てきます。が、電気配線の工事が必要になります。自宅とはいえ電気工事士の資格が必要なはずですので、ハードルが高すぎます。それに賃貸じゃ無理です。あと結構高い。

2.のセンサは、例えばEcho Flexと対人センサを買って来て、人が通ったら電源ON/OFFをするという物です。が、家族の人数やどこの部屋の電気を操作したいかによって、役に立つケースと立たないケースがあるので、導入前に要検証です。それに諸々5000円くらい掛かってしまいます。

3.は先週作りましたよ。一部の方々には有名なMESHを使って物理スイッチを作るというものです。この詳細については別途書きますが、正直万人にオススメ出来るものではありませんでした。それにゼロから構築する場合は諸々12000円くらい掛かります。スイッチだけでも6000円はします。まあまあ高い。

4.もまあ、想像つくと思いますが、逆にすごくめんどうです。

なので、諦めてリモコン買って来て、2台体勢で壁スイッチを押さないように頑張るか、もっと諦めて電源OFFだけスマスピで操作して、電源ONは壁スイッチをバシバシ押して操作する(リモコンで電気を消すと、機種によっては2-3回押さないと電気がつかない)かしか無いと思います。


・・・・・・どれもこれも、まったくスマートの欠片もありませんね。


こうしてみると、物理スイッチの軽んじられ方が半端ではないという事が分かるでしょうか。

どうしてここまで現実的なUXが全無視な設計なんでしょうか・・・・・・。いやきっと、インフラが追いついていないか私たちが追いついていないかのどちらかなんだとは思います。ただ、今現時点においては、個人的に不満の残るポイントです。

■ 中途半端なスマートホーム化にご用心

ここまで書いてきたとおり、少なくともライト(照明・電灯)のスマート化を目的にスマートスピーカーを買う事はオススメ出来ません。特に現行の赤外線リモコンをWi-Fiリモコンに置き換えて運用したい場合はなおさらです。

ただし、電源OFFだけでも何かと便利なので、そういう制約事項があると分かった上で買うのであれば、まったく問題ありません。私もどちらかというと割り切って使っていますが、結構便利だと感じています。

ただ、スマート化だ!未来だ!何でも出来る!便利だ!と誤解して買って、結果やっぱり使えないじゃんとなって、悪評が広まるのだけは避けたいと考えています。なので、ご興味のある方はお願いですから、この点に充分注意して買って下さいね。

そういう意味ではスマートホーム(もどき)化に関して言うと、アーリーアダプタというかマニア向けと言わざるを得ないでしょう。一般化への道はまだまだ険しそうです。(一般向けのスマスピ活用は前々回の記事でどうぞ。宣伝おわり)

■ まとめ

今回は、ライトを例にスマートスピーカーがもたらす不便さについてまとめました。デジタル化=便利では必ずしもない事の典型例ですね。

お願いなのでスマート家電メーカーさんは、壁スイッチとか物理リモコンも作って下さい。もちろん汎用型でお願いします。センサとかは扱いが難しいですし、自社製品オンリーだとこっちに使いたいけど出来ないとかあるので・・・・・・ってそれは難しいですね。商売ですもんね。

とにかく、どうしてもこういったレビューは「最先端!すごい!」と「楽しみだったけど期待外れ!もう使わん」ばかりが目立ってしまいますが、こういうどっちつかずの中途半端なレビューでも、皆さんの参考に少しでもなればいいなと願っています。








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