心得て、身につけている人。

10年ほど前、他県でのお茶会にお招きいただいた事がある。

参加する皆さんがお正客さん(お客様の中の代表のような存在。)の席を避けるので、席主さん(そのお茶席の司会進行役のような人)に促された、スーツ姿の背の高い男性が、そのお茶席のお正客さんに。

「私のようなものが、なんだか申し訳ありません。お勉強させていただきますので、皆様、どうぞよろしくお願いいたしますね。」
と、頭を下げられ、お席がスタート。

席主、お点前(お点前をする人)、お童子(お点前さんのサポートのような人。)が挨拶のため入室した瞬間

お正客さんとなった男性の姿勢と表情が変わったのに気がついた。

お点前が進んでいく中での、席主さんとお正客さんとのやりとり。
お正客さんの、声のトーン、ボリューム、スピード、言葉の選び方、全てが心地よかった。

お茶をいただく姿も、お菓子をいただく姿も、それを清める姿も無駄がなく綺麗。

お席が終わると
「皆様のおかげで、とても良い時間を過ごすことができました。大変勉強になりました。ありがとうございます。」
とにこやかにご挨拶され、ささっとその場から帰られる

心得ている、だけではなく、身に付けている人。

知っている。
できる。
だけではなく、それを身に付けている。

そうなるまでにどれだけの時間がかかったのだろう…?

そして、傲るのではなく、卑下するのでもなく、ただただ謙虚に、自分の役割を務め上げる。

人として、とてもカッコいいと思ったし、粋ってこういう事を言うんだ、とも思った。

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