見出し画像

各国紹介(ヨーロッパ・アジア) ジョージア

地理に関心がある皆さんへ。各国地誌を見ると、地理の要素や要因、系統地理を理解する助けになります。
地理の学びは物事を見る解像度を引き上げてくれます。

本日の一国は「ジョージア」
コーカサス山脈の南麓の「文明の交差点」。古くはシルクロードの要衝として栄え、ジョージア発祥、かつてクレオパトラも愛したと言われるワインは、現在も特産品です。
では、参りましょう。

位置
国旗
国章

ジョージアは、北はロシア、東はアゼルバイジャン、南はアルメニアとトルコ、そして西は黒海に面します。
面積は約7万㎢、人口はおよそ400万人です。

国名は、国民の8割を占める南カフカス系の民族、ジョージア人に由来します。
「ジョージア」という言葉の由来は諸説ありますが、ペルシア語の「狼」を指す言葉から来ており、それがアルメニア語やギリシア語やラテン語にも広く用いられるようになり、民族名、そして国名としても用いられるようになったともされています。
なお、彼ら自身はジョージアではなく、5世紀頃からこの地域を指す言葉として使われていた「サカルトヴェロ」という呼称を用いており、パスポートにも両者が併記されています。

ジョージアのパスポート表紙

ヨーロッパにおける人類史研究でも非常に重要で、最大で180万年前に遡るとされる、現在のところユーラシア最古の化石人骨、ホモ・ゲオルギクスが20世紀末に出土した地。
その他先史時代の遺跡も多く発見されており、紀元前3000年頃からは金属器も用いられ、優れた金属加工技術を持っていたとされます(金属加工技術発祥地の一つとも)。
また、8000年前から醸造の技術もあったと考えられており、この地域で栽培されていたブドウをワインに加工する技術は、ジョージア発祥と言われています。

国土で最も特徴的なのは、北縁を走るコーカサス(カフカス)山脈。
北西部から南東部にかけて国土を貫いており、この山脈自体がヨーロッパ州とアジア州の境界にあたることから、ジョージアはヨーロッパとアジアの結節点と言えます。
地域区分も、文献によってヨーロッパ州と分類するものと、アジア州と分類するものに分かれています。

地形図

よく見ると、南部のトルコやアルメニア国境にも山脈が走っており、これは北縁の山脈が「大コーカサス」と呼ばれるのに対し、「小コーカサス」と呼ばれ、両者は東端で合流しています。

最高峰は、大コーカサスの北西にあるシュハラ山(5201m)。
急峻な上に氷河が点在することから、ヨーロッパでも登頂困難な山の一つとして知られています。

シュラハ山
ジョージアの衛星写真

この氷河から豊かな水量を持つ川が生まれ、小河川も合わせればその数は2万を超えます。この水力がジョージアの発電方式(水力75%)を支えており、そしてその発電は比較的小規模な水力発電で賄われています。

例えば国土を西に流れるリオニ川は、古代ギリシャ時代から「東の果ての川
」などとして度々取り上げられていました。

リオニ川

気候は、起伏の大きい地形を反映して非常に多様性があります。

気候区分

概況としては意外にも温暖湿潤(Cfa)気候の地域が多いことがわかります。
これは黒海から吹き込む温暖湿潤な西風が、夏の気温上昇と降水をもたらすためです。
沿岸部では年降水量2000㎜を越える地域もあり、この降水量は山地の風上ではさらに増し(年降水量4000mmの地域もある)山岳氷河を成長させます。
ジョージアにある山岳氷河は2000カ所とも言われています。

ちなみに、南東部にある首都トビリシは、1月平均1.6℃、7月平均24.4℃、年平均気温13℃、年間降水量500㎜。
緯度が北緯41.42度(日本では函館あたりに相当)ですので、夏の気温は緯度の割にかなり上がることが伺えます。
この過ごしやすい気候、豊かな水が、古来からの活発な人間活動を可能にしたのではないかと指摘されています。

経済的には農業が伝統的に盛ん。柑橘、ブドウ、茶などの他、柑橘など他の旧ソ連諸国では栽培できない作物が生産できたため重要視されていました。
また、先述の通り、ワイン醸造でも有名。ジョージアはワイン発祥の地とも言われています。

その語源はジョージア語の「ghvivili(グヴィヴイリ)」にあるとの説も。
その他、畜産業や黒海沿岸の観光業も盛んです。

ただ、国民一人当たりGNIは4260ドルほどと低く、ジョージア政府はさらなる産業の振興(工業や観光業も含め)を模索しています。
最近、ロシアの動員令の影響で大量のロシア系の人々が流入。摩擦を引き起こしてもいますが、ジョージア経済の起爆剤になるのではという見方もあります。
これについては様々な見方があり(物価や家賃の上昇なども発生)、また、ロシアとは南オセチア問題など長年の歴史的な軋轢を抱えていることもあり、人々の捉え方も複雑なようです。

エネルギー資源は、国内で石炭も産出するものの、その他はロシアではなく主にアゼルバイジャンからの輸入に頼っています。

ちなみに、ジョージア国際電話番号は995。9は「その他アジア」を指し、西アジアや中央アジアは9がつきます。つまり、国際電話の分類ではアジアに分類されています。
一方で将来のヨーロッパ連合(EU)加盟を視野に入れ、サッカーなどスポーツのグループ分けではヨーロッパに入っているなど、ヨーロッパとのつながりが深くなっています。

貿易相手国では中国、ロシア、ウクライナ、トルコ、アゼルバイジャンとの関係が深く、今回のロシアによるウクライナ侵攻でも、貿易関係だけ見ると非常に難しい立場にあることが伺えます。

民族は、この地域最古の民族の流れをくむジョージア人が8割超。宗教は東方正教(ジョージア正教)が8割超、公用語もジョージア語です。

このように、ヨーロッパとアジアの結節点としての歴史を歩んできたジョージア。
過去にはビザンツ、タタール、オスマン、ペルシャ、ロシアなど様々な国の支配を受けた歴史もあり、その中でも独自の文化を守り通してきました。
今また、周辺国の利害の間で難しいかじ取りを迫られている国でもあります。
ジョージアの豊かな歴史と文化を誰もが安心して楽しめる、そんな時代が一日も早く来てくれると良いのですが。

今日はこれくらいで。

サポートは、資料収集や取材など、より良い記事を書くために大切に使わせていただきます。 また、スキやフォロー、コメントという形の応援もとても嬉しく、励みになります。ありがとうございます。