各国紹介(アフリカ) チュニジア
地理に関心がある皆さんへ。
各国地誌を見ると、地理の要素や要因、系統地理を理解する助けになります。地理の学びは物事を見る解像度を引き上げてくれます。
本日の一国は「チュニジア」。
北アフリカ、マグレブ諸国の一角にして文明の交差点。かつて海洋強国カルタゴが栄えた地です。
では、参りましょう。
チュニジア共和国は、アフリカ大陸最北端にあたるアンジェラ岬を有する国。南東はリビア、南西はアルジェリアに接しており、北には地中海が広がります。
アトラス山脈の東端に接しており、南部はサハラ砂漠、中部はステップ(乾燥草原)地帯、北部は地中海沿岸の温帯かつ乾燥した地中海性気候(Cs)が卓越する地域になっています。
国名の由来はフェニキア人の美の女神「タニス」であると言われています。首都チュニスの名も、同じ由来です。
国土面積はおよそ16.4万㎢、人口は1230万人ほどです。
この地では南部、内陸には北アフリカ系の先住民であるベルベル人、北の沿岸部にはフェニキア人が居住。
紀元前800年頃に、フェニキア人が現在のチュニスの北東部沿岸に、かの有名なカルタゴの街を建設、ローマ帝国に敗れるまでの間、地中海貿易で栄華を極めました。
カルタゴ滅亡後はローマ帝国の支配下、そして7世紀頃にアラブ人による征服を経て、現在に至ります。
そのためこの地は、地中海とアフリカ、そしてアラブという3つの世界の一部として栄えた歴史を持つ「文明の交差点」と言える場所です。
チュニジアは、南北に850㎞と細長い領域を持ち、北緯30~38度付近に広がっています。
つまり、緯度で言えば、本州とそれほど変わらない場所にあると言えます。
基本的に、サハラ砂漠がある南に向かうにつれて降水量が減少する傾向があり、北西部はアトラス山脈に接するため標高が高くなっています。
つまり、北部は降水量が多い上に山地になっているということです。ということは、北西部が有力な河川の水源地になっていることが想像できます。
実際、アトラス山脈に源流を持つメジェルダ川は首都チュニスまで達する大河川で、沿岸部は遥か古代のローマ帝国時代から続く大穀倉地帯です。
また、東部の地中海沿岸地域はオリーブの大産地になっています。
一方、地中海からの風をこれらの山地が遮るため、内陸や南部は海からの距離はそれほど遠くないにもかかわらず強く乾燥するなど、南北で顕著に気候が異なることがわかります。
北部は地中海性気候(Cs)、南部は砂漠気候(BW)、その中間がステップ気候(BS)とはっきりしています。
メジェルダ川の流域が、ちょうどCs、BS気候の境界線にあたります。
また、内陸部には塩湖が点在することでも知られ、中西部にあるジェリド湖は、北アフリカ最大の塩湖です。
このような乾燥地の湖は、ワジ(枯れ川)の水が時折流れ込むだけのため、このような湖が形成されます。
ちなみに、チュニジアの鉱産資源に「塩」がありますが、これらの塩湖で採掘されています。
また、その北側にはリン鉱石(化石質)の鉱山があり、同国の主要輸出品です(産出量9位)。
首都チュニスの1月平均気温は12℃、7月は27.6℃、年降水量は470㎜ほどですが、さらに北に行くと1,000㎜を超える地域もあります。
産業は、オリーブやヨーロッパ向けの園芸農業など農業生産も盛んですが、ヨーロッパに近いアドバンテージを生かした、工業も発達、ヨーロッパの企業の拠点も数多く置かれています。
さらに、カルタゴの遺跡群などの魅力的な観光資源を生かした観光業も盛ん。
チュニジアの魅力的な観光地はこちらで一気見できます。
鉱産資源も原油と天然ガス、そしてリン鉱石があります。
ちなみに日本向けには水産物の輸出が多く、マグロの輸出がおよそ3割を占めます。
しかし、世界金融危機や、2011年1月に発生した民主化運動「ジャスミン革命」、そしてそこから周辺国に波及した「アラブの春」による混乱、新型コロナなど立て続けにネガティブな事件に見舞われ、近年の発展は停滞気味です。
また、国内の地域間、世代間の経済格差も大きな問題。
国民一人当たりのGNIは3,300ドルほどと、ポテンシャルの割には数字が大きくないという実情があります。
しかし、このような問題を解決に向かわせようとする力強い動きもあり、労働組合と産業団体、人権擁護団体、法曹団体が合同で「国民対話カルテット」を結成。
民主化と格差是正、安定化など、国内の混乱を収めることに大きく貢献しています。
その功績から、国民対話カルテットは2015年、ノーベル平和賞を受賞しています。
民族はアラブ系の人々が9割強。うち、チュニジア人が70%、ベドウィンが37%ほど。アラブ系には含まれないベルベル人は、2%ほどです。
公用語はアラビア語ですが、旧宗主国の言語であるフランス語も使われています。
宗教はイスラム教スンナ派が大半です。
というわけで、かつて地中海交易の中心として栄えた文明の交差点、チュニジア。
立地、資源などに恵まれ、伸びしろはアフリカ諸国随一。
まだ問題は抱えているものの、国内の混乱も収まりつつあり、今後、どのように発展していくのか気になります。
観光地としても著名ですので、是非一度訪れてみてはいかがでしょうか。
今日はこれくらいで。
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各国紹介、一問一答、世界の奇妙な国境線、地図の歴史、国当てクイズ(ショート)などのシリーズを進めています。
また、地理系の偉人の業績についても取り上げていく予定です。
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