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各国紹介(オセアニア) キリバス

地理に関心がある皆さんへ。各国地誌を見ると、地理の要素や要因、系統地理を理解する助けになります。
地理の学びは物事を見る解像度を引き上げてくれます。

本日の一国は「キリバス」
オセアニアの島嶼国、領域が経度180度と赤道を跨ぐ国。世界で最も早く1日が始まる国です。
では、参りましょう。

領域
国旗
国章

キリバスは南太平洋に点在するサンゴ礁由来の島々からなります。
西からギルバート諸島、フェニックス諸島、ライン諸島の3つの群島で構成されており、それにギルバート諸島から西に300㎞ほど離れた(ナウルにほど近い)バナバ島が加わります。
世界で唯一、南北半球と東経・西経の4カ所すべてに領土を持つ国です。

キリバスの地図

キリバスという国名は、1788年にこれらの島々のいくつかに到達したイギリス船「シャーロット号」の船長、トーマス・ギルバートにちなんでいます。彼はオーストラリアに囚人を護送した帰り道にこの地域を探検し、現在のギルバート諸島などを「発見」した人物です。

しかし、この群島にはそれよりもはるか以前、今から2000~3000年前(5000年前の可能性も指摘されている)には人が住んでいたと考えられています。
また、先住民と航海で辿り着いた外部の民族が争いと融和を繰り返し、ヨーロッパ人の到達以降は、銃などの強力な武器を入手するようになったため、その争いは非常に激しいものになりました。

オセアニアは「ミクロネシア」「ポリネシア」「メラネシア」の島々とオーストラリア大陸に分かれています。
ギルバート諸島はミクロネシア、その他の群島はポリネシア(ハワイ、ニュージーランド、イースター島の3点を結んだエリア)に属します。

国土面積はわずか811 ㎢、人口はおよそ13万人です。

東西幅3200kmに広がる島々からなり、排他的経済水域の面積はおよそ340万㎢に達し、世界13位の広さ。
ちなみに日本は450万㎢で8位。1位はフランスの1170万㎢になります。
フランスは海外領土も多く、排他的経済水域の広さは意外にも非常に広いのです。
上位にはアメリカ合衆国などの大陸国家(海岸線が長く、排他的経済水域も広い)、広大な面積に島々が散らばる日本やインドネシアなどの島嶼国が名を連ねています。

排他的経済水域ランキング

キリバスは東経と西経に領土が跨っており、かつては領域を日付変更線が縦断していました。

しかし、国の中で日付が異なるのはやはり不都合も多く、1995年1月1日をもって国内を走る日付変更線を東に移動。その結果、キリバスは「世界で最も早く1日が始まる国」となりました。

現在の日付変更線

東のライン諸島で有名な島としてはクリスマス島(キリスィマスィ(Kisitimati)島)があります。

この島は西経157度に位置し、世界で最も早く1日が始まる地域としても著名。釣りやダイビングスポットとしても人気です。
島の名前は、探検家ジェームズ・クックがクリスマスの日にこの島に到達したからで、現地には全く由来がありません。
また、この島はマーシャル諸島のビキニ環礁などと同じく、かつて核実験場として使われた歴史もあります。

もう一つ有名なのが、カロリン(ミレニアム)島で、この島は世界で最も早く新年が迎えられる島として観光客にも人気。
キリバスが日付変更線を変更したのは、この島を世界で一番早く新年が迎えられる島として観光地化しようとしたのも一因とされています。

ちなみにこの島は中央に礁湖(ラグーン)がある環礁ですが、サンゴ礁の石灰岩以外に、玄武岩の基盤岩が存在しており、かつて島の中心には火山(現在は侵食により水没)があったことを裏付けています。

カロリン(ミレニアム)島

衛星写真を見ると、ラグーンは水深が浅いため、周囲の海に比べて色が明るいことがわかります。

キリバスの他の島々も、主にサンゴ礁由来の環礁のため標高は非常に低く、最高点はバナバ島の81m。
この島はナウルやツバルなどと同じく海洋性のリン鉱石(グアノ)の大産地でしたが、現在は枯渇しており、人口も300人ほどを残すのみです。

このまま地球温暖化による海面上昇が続けば、キリバスは21世紀末には地球上から消滅するだろうと言われています。
既にいくつかの無人の環礁は海中に没しており、海面上昇の影響を極めて強く受けている国のひとつです。

気候は赤道直下であることから、ほぼ全域で熱帯雨林気候(Af)。
首都タラワの気温は1月も7月も28℃ほどで、年間を通して高温です。
年降水量は1900㎜ほどと多く、11月から4月の間の降水量が比較的多くなります。
これは11月から4月は高温多湿な西風が吹き付けること(5月から10月までは北東風)熱帯低気圧(サイクロン)の襲来があるからです。

産業は観光号が主体。
1979年の独立前にグアノは枯渇しており、地下資源は皆無に等しい状況です。
降水量が多いものの、根本的に土地が不足していることから農業も活発ではありません。輸出品はココヤシの油脂であるコプラ、その他、漁業が盛んであることから魚介類の輸出が見られるのみです。
日本もキリバスからはマグロを輸入しています。

農地が少ないため食料を自給できず、資源もないため、食料、エネルギー資源とも輸入依存。
重化学工業が存在せず、機械や化学製品も輸入であり、大幅な輸入超過(輸出1000万ドルに対し輸入1億ドル以上)となっています。

国内産業にはあまり期待できないため、周辺国の漁船を排他的経済水域に受け入れることによる入漁料による収入、観光収入、そしてキリバス船員など、海外出稼ぎ者による送金、そして外国からの援助が経済を支えています。
国家予算の5割が外国からの援助で賄われているので、経済の厳しさが伺えます。日本も主要な援助国の一つです。
国民一人当たりのGNIも2910ドルと決して高いとは言えません。

民族は99%がミクロネシア系。
領域の多くがメラネシアに属することを考えると意外かもしれませんが、首都のタラワはミクロネシアに属するギルバート諸島に位置し、人口の9割がギルバート諸島に居住しているためです。

遥か東にある、ライン諸島のクリスマス島が核実験場に使われたのは、人口が非常に少ないからである、という理由も何となく察しがつきます。
公用語はキリバス語。
また、かつてイギリスの属領だった歴史から、英語も公用語です。

宗教はキリスト教カトリックが5割、プロテスタントが3割とキリスト教が優勢です。
発電は火力が85%、意外にも太陽光が15%。日照量が多く、さらに離島が多いことから、小規模な太陽光発電で電力を賄う集落が少なくありません。

「世界で最初に新年を迎える国」キリバス。
UTC +14なので、日本より5時間も早く新年を迎えることができます。
機会があれば、日本よりも5時間早い新年の優越感、味わってみてはいかがでしょうか。

今日はこれくらいで。

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