【読書感想】山の上のパン屋に人が集まるわけ 平田はる香
この本の概要
感想
長野の山奥のパン屋「わざわざ」の代表・平田さんの本が出ました。
私が勤めてるサイボウズって会社には、サイボウズ式出版という出版部署もあるんですが、そこから出した本になります。
この本を出版する以前でいうと、サイボウズ式でも記事になってたりします。
なかなか社会と馴染めなかった平田さんが山の上でパン屋を始め、少しずつお店を成長させていくなかで起きたことや感じた思いなどをたくさん語っています。
私はパン屋以前の平田さんを知らなかったので若い頃、DJやってたってのにまず驚きました。ファンキーすぎる。
自分でWebサイト立ち上げて自分でDJイベントやって、自分がはじめて見つけた「やりたい」ことに邁進するも、それだけで生活するまでには至らず、挫折ののち、彼のいる長野に行き結婚。主婦になります。
「やりたい」が必ずしも上手くいくとは限りません。平田さんは「やりたい」に邁進し、その「やりたい」を実現させていく過程でWeb制作など「できる」ことがたくさん増えていきます。
しかし、挫折。
その後、家でしょっちゅうパンを作っていたことから、「できること」ベースでパン屋をやろうとなるんですが、そこでこれまで培ってきた「できる」ことの掛け合わせが、パン屋経営に活きることに気がつきます。
生きてりゃうまくいくこともうまくいかないこともありますが、全部無駄じゃないんだよなぁと読んで思いました。
ひとつの道を極めたプロフェッショナルはすごくわかりやすいしかっこいいので、そうじゃない自分になんだか勝手に劣等感を感じてしまうこともあるけど、できることの掛け合わせでうまくいくこともあって、そういうあり方もまたひとつの道。
WillCanMustの話は、企業研修でも取り上げられる機会も多いですが、世の風潮的に、Will(やりたい)への過剰な期待を感じることもあります。
Will(やりたい)があるのが素晴らしくて、そうじゃないのは良くない、みたいな。。
でも、頑張って考えて「やりたい」が必ず出てくるかというとたぶんそうじゃないし、別に出てこなくてもいいんじゃないかな、と個人的には思います。「できる」とか「やるべき」ベースでだって、じゅうぶん楽しく働けるだろうし、「やりたい」がみつかったとして、うまくいくかはまた別問題だから。
なので「やりたい」がなければならない、とか「やりたいことがない…」とかで悩み過ぎないでほしいなぁとよく思います。
ただ、じゃあ自分の「できる」ってなに?となったとき、意外と人って自分が持ってるスキルや強みには無自覚だったりもして…。
私には掛け合わせられるものが何もないっていうふうに思いこんでる人も多いのではないかと思います。
スキル的なわかりやすいのはもちろんなんだけど、掛け合わせられるものには、その人の人柄とか物事への取り組み方とか、そういうものも掛け合わせられる要素のひとつなのではないでしょうか。
平田さんの場合は、小さい頃からルールや決まり事などの枠組みがあっても「なぜ?なぜ?」と聞かずにはいられなかったし、気になったらとことん調べるという好奇心もありました。小さい頃はそれで苦労した部分もあったけど、「なぜ?なぜ?」と問い続けられるからこそ、美味しいパンも作れたし、わざわざという店をフェーズや状況に合わせて柔軟に変えられたし、「問(tou)」というお店もつくれたのだと思います。
人の性質はそれぞれ違いますが、平田さんのように自分の心を見つめ続け、自分をだましたり偽ったりせずに考え続けていれば、きっと自分にとって心地いい場所ができてきて、いいようにおさまっていくんじゃないかな、とこの本を読んでて思いました。
考えることを止めてはいかんな。
ワタクシ的名言
限られた人生を自分なりに運転して、まっすぐに生きていきたい
というところがすごくいいなと思いました。
自分の人生を誰かにコントロールされるのではなく、自分でコントロールしていく。簡単なようでいてけっこう難しいことだと思います。
性質的にそうせざるを得なかったというのもあるのだとは思いますが、自分を誤魔化さず、まわりに流されずにいられるというのは強いし少し羨ましいです。
この「お地蔵さん」というスタンスがうまいなぁと。
コーチングも「自分」が強すぎるとニュートラルに聞けないので、お地蔵さん的スタンスで試してみようと思います。
わざわざのパン、オンラインで買ったことがあるのですが、カンパーニュがとても美味しかったです。また買いに行こう。