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【読書感想】「僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」 山中伸弥 羽生善治、是枝裕和、山極壽一、永田和宏

読了日:2017/6/21

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京都産業大学での講演・対談シリーズ「マイ・チャレンジ一歩踏み出せば、何かが始まる!」。どんな偉大な人にも、悩み、失敗を重ねた挫折の時があった。彼らの背中を押してチャレンジさせたものは何だったのか。
「BOOK」データベースより

この本の概要

世間で「すごい人」と呼ばれる人たちの講演と対談をまとめたものです。
山中伸弥さんと羽生善治さんが好きなので買ってみました。

この講演・対談は大学で行われたものだそうです。講演や対談を本におこしたものなので読みやすいです。
すぐ読めます。
そんで、グッとくる一言も多いです。

講演・対談の趣旨を要約すると以下のようになります。

最近の大学生たちは
「あの人と自分は最初から違う人種」
「あの人は特別だから」
というある種の線引きを最初にしており、「あの人のようになりたい」という憧れをもつこと自体少なくなっているように感じられる。
だが、実は一流の人たちも自分たちと同じような人間で、自分たちとはそんなに違わない。そのことを若者にも知ってもらいたい。

私の嫌いワード「最近の若者は○○」

私の嫌いワードは「最近の若者は○○」です。
「あの人は特別だから」も、最近の若者に限った話ではないので、安易にこの言葉を使われるとムカっとします。(自分はもうまったく若くもないというのに…)

最近の若者を育ててきたのは、最近の中高年です。どちらに非があるかといったら、教育者側である中高年ですよ。最近の中高年が、「あの人は特別だから」というおまじないを唱え、子どもに刷り込ませて生きてきた結果、最近の若者でも受け継ぐ考えの人が出てきているだけの話…。
安易に「最近の若者は」とか使うんじゃない!
と声を大にしていいたい。

他人を特別枠扱いすることの都合よさ

話を戻します。
「あの人は特別だから」は、若者とか年寄りとか年齢は問わず、多くの人が当たり前に持っている考え方だし、そう思うことは、別にそんな悪いことでもないと思うんです。

ただ、「あの人は特別」はとても便利。
便利すぎるがゆえに使いすぎには気を付けたいな、と思いました。

「あの人は特別」は、「あの人と自分は最初から違う」という意味で、それは真実でもあります。
でも、この言葉は、
「あの人と自分は最初から違う。だから自分には無理、自分とは立場が違う。」
という思考に繋がりやすいものでもあると思うんです。

この言葉をいろんな場面で使い、そういう思考の癖がつくのは、自分の変化を拒否する姿勢につながるような気がして、それはよくないな、と感じます。

たとえば、芸能人のニュースについて話していても、「芸能人なんだからこれくらい言われるの当然」というふうに、芸能人特別枠を設けてバッシングや批判することがよくあります。
この考えも私は怖いな、と思ってしまうんです。
自分と違う枠を用意して特別枠扱いにしてしまうことで、見えなくなってしまう何かがあるような気がして…。

このあいだ、ワイドなショーで髭男爵の人が、一般人から浴びせられる辛口評価にたいして
「その厳しい目、自分自身の人生に向ける勇気ある? あるんやったらいいんですけど」 
と、言っていました。
他人を別枠扱いにしてしまうのは、裏を返せば自分自身のいたらなさや努力不足、客観的な評価から逃げてるように思えるんです。
それは、生きざまとして、あんまりかっこよくないなぁと…。

まぁ、かといってストイックに生きるのはしんどいし、適度に「あの人は特別」を活用するのはアリだと思うんですけどね。私も使うときありますし…。
ただ、使いすぎには気を付けたい。

シンプル理論

経験値をたくさん積んでる人は、経験値を集約して、極めてシンプルな理論を確立させてるなぁ、というのを全体を通して感じました。
そしてまたこのシンプル理論がなんともいい具合に響くのです。

こういうシンプル理論は、40年近く生きてきた庶民の私にも多少はあります。バラバラしていた色々な経験や知識の集合から共通項を発見するは、なかなか面白いんです。
脳内シナプスがつながっていく感覚。

その人なりの仕事論を知るのは面白い

この本に出てくる人たちは、学者さんに将棋の名人、映画監督などジャンルはそれぞれ違うんですが、どの人もその道を極めた人。こういう人の話は面白い。
でも、世界に名を成すような人はもちろんだけど、実は、近所のママ友や、別の職種の友達、職場の同僚とも突っ込んだ話を聞けるのはすごく面白いんですよね。
日常の会話でも、その人なりの仕事論や、その人が見つけた真理が垣間見えるときがあって、そういうのが見えるのはやっぱりすごく面白い。

家族も同じ。
親の生きざまも知っているようで実は全然知らないことばかり。年を取ってから若い頃の話を聞いてビックリすることもある。
うちの祖父に至っては、亡くなってから実はバツイチだったと聞いて、家族一同で超びっくりしたもんね(笑)

この本のなかでは、そこまで各自の人生を掘り下げてるわけでもないので、
「こんなすごい人も実は若い頃は普通だったんだ」と思うにはちょっと物足りない感はあります。
でも、それでも、その人の人となりをしることができるのですごく面白かったです。

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