見出し画像

小さな冒険

年末に髪の毛を緑色にした。

特に理由があって緑にしたわけではない。
「伸ばしていきたいので伸ばしやすい髪型に。あとは色とか形は面白い感じに」
と美容師の方にお願いして出来上がりをみたら緑色になっていた。


私は常に違う髪型にしている。
毎回おんなじだとなんとなく飽きてきてしまうので、ちょっとずつ変えている。
伸ばしてた髪でも、あるとき無性に面倒くさくなって
「ばっさり短く!」
としてしまうことがよくある。
思い切りがいいので美容師さんは楽しそうだ。
彼のワクワクに私はけっこう貢献している。

とはいえ私も会社員。
大人なので髪型程度ではさすがに文句は言われないが、色は多少気になるところでもある。

前の会社は、服装にも、ある程度のルールはあったし、髪の色も常識の範囲でないといけなかった(ような気がする)。
今の会社は髪型服装が自由な会社なのでとやかく言われることはない。実際、髪の毛くるくるの男性もロン毛の男性もいるし、私より緑色だったり金髪の女性もいる。
だが、私は古い組織も熟知しているおばはん世代なわけで、これはやりすぎか?と多少の不安がないわけでもない。

いまのところ、社内業務が中心だが、お客様対応がゼロというわけでもない。
今日もお客様対応してきた。
これからはたぶんお客様対応も、もうちょっと増える。
そうなったとき、「こんな髪色の女は信用できん!」となる可能性もあるのかもしれない。
社内でだって、内心で「あれはどーなんだ?」と思ってる人はいるだろう。

先週、飲みのついでチームのリーダーにちょっと聞いてみた。
そしたら幸いなことに
「いや、面白いし、いろんな人がいていいんじゃない?」
というノリだった。
マイリーダー最高。
あからさまにNGは出されないだろうとは思っていたものの、それでもちょっとホッとした。


最近になって色々議論されはじめているが、子どもの世界でも髪の色や髪型のルールは細かくて厳しい。
大人の世界も、学校ほどではないにしても、髪の色を派手にすると注意されることが多いし、男性がトリッキーな髪型をするのは女性以上にレアではないかと思う。

なぜ、奇抜な髪型、髪色はNGになりがちなのだろう?

よくあるNG理由は
「お客様がどう思うかだし、信頼してもらえるような身なりをしているべきだ」
というものだろう。


わかる。
とってもよくわかる。
信頼ってとっても大事。
ましてや初めて会う人同士、相手に好感を持ってもらえる身なりをするのはたぶん会社員としてめちゃくちゃ大事だと思う。

でも、敢えて問いたい。

そもそも髪色が違うと信頼されないっていう、一見すると筋が通ってそうな理屈も、よくよく考えると変じゃないか、と。

往年のスター布施明だって、けっこうロン毛だったけど彼は信頼できないの?信頼できないのにあんなに薔薇の歌はヒットしたの?
金髪のアメリカンは信頼できないの?
金髪のイタリアンがピンクのメッシュをいれていたら信頼できない?
白髪染めをしているおばあちゃんは信頼できない?
白髪をそのままにしているおじいちゃんは?
頭髪少なめな男性は?
アデランスしてたら?

他の人はどうかしらないが、少なくとも私は、上記のどの人が目の前にいたって、それだけでその人が信頼できるかどうかを判断しない。
布施明もニセ明(星野源の友達)も信頼したいし、アデランスも気にしない。逆に、会社員だろうがなんだろうが、髪型や髪の色だけで人を判断する人のほうを私は信頼しない。

たぶん、上記に関して言えば
「僕だって、アデランスならアリだよ」
という人は多いんじゃないかと思う。
でも、そんな人でも、普通の会社員が理由もなく緑色に染めるのはNGって言うのは普通にあると思う。めちゃくちゃ良くあることだと思う。

髪の色や髪型なんて、本来、究極に誰にも迷惑かけない、究極に個人の自由の範疇な世界なはずだ。
なのにある特定の場合に関してのみ、今の社会では当たり前のようにNGになる。
それが今の社会の常識だから。

でも問いたい。
そんな常識の世界、楽しいの?
髪型や髪色なんて究極に個人的身体的な部分にまで組織にとやかく指図されて、それを常識と思ってる世界をみんなはホントにのぞんでるの?


「個性」とか「ダイバーシティ」とか「働きやすさ」とかもっともらしいコトバが世の中にはたくさんあるけれども、いざ、目の前に人と違うことをしている人間がいると、「個人的にはいいと思ってるけど世間的にはやめたほうが…」というのが現実だ。

じゃあその世間が変わるのはいつなのか。

誰かが変えてくれるのを待っていたり、誰かが声をあげてくれるのを待つ。
これがほとんどだろう。
私だって基本はそうだ。
誰かアグレッシブな人が声を上げて世界を変えてくれるのを待っている凡人だ。

だが、それじゃいつまでたっても変わらない。

であれば、凡人は凡人の範囲で。
私ができる小さなことをやろうと思う。

髪色については職場に厳格なNGはないし、なんとなくの世間一般の世界でNGっぽい空気感があるだけだ。
そこで世間に迎合するか、敢えて攻めるか。
であれば、そのギリギリを私は攻めたい。

組織の風土や、社会の常識を変えていくのは、ルールと風土のハザマのものすごく小さなところに半歩踏み出す勇気からなんじゃないかと思う。
そう、私だってそこそこ勇気はいるのだ。


いつもより髪の色を少し明るくしてみる。
ほんの少しだけピンクを入れてみる。
ちょっとトリッキーなネクタイにしてみる。
それだけでも、世界は変わっていくんじゃないかしら。


超がつくほどクソ真面目で実直で素直な私のなかにも、小さいけれどもロックな反骨精神はあって、そのロックな部分が
「youやっちゃいなよ」
と囁いた。(←え、ジャニーさん…?)
だから緑になった。
私は、そんな私の声にこそ忠実でいたい。

みんなの心の中にもきっとある、小さなロックな部分が、もっと出せる世の中になるといいね。

「どうだいyou!! youもやっちゃいなよ。」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?