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【読書感想】「妻は、くノ一」(全10巻) 風野真知雄

読了日:2014/1/14

平戸藩の御船手方書物天文係の雙星(ふたぼし)彦馬は、三度の飯より星が好きという藩きっての変わり者。そんな彦馬のもとに上司の紹介で美しい嫁・織江がやってきた。彦馬は生涯大切にすることを心に誓うが、わずかひと月で新妻は失踪してしまう。じつは織江は、平戸藩の密貿易を怪しんだ幕府が送り込んだくノ一だった。
そうとは知らず妻を捜しに江戸へ赴く彦馬だったが…。
人気著者が放つ「妻は、くノ一」シリーズ第1弾。
(「BOOK」データベースより)

年末からノンビリと読み進めておりました「妻は、くノ一」シリーズ。
全10巻あり、このほかに後日談みたいなのが3冊ほどあります。

この作者の作品は初めてで、何の前情報もなく読みはじめました。
この作品は「時代物に興味はあるけど難しそうで…」と思っている方におすすめです。
時代モノか現代モノかわからなくなるくらいスンナリ読めてしまいますし、所々、漫画を読んでるみたいに、クスッと笑ってしまう描写があります。
時代モノでこの軽さはなかなかないような気が…。

時代モノはだいたい「捕り物」とか「悪党成敗」とか、シリーズ全体を通して軸となるモノがあったりします。
このシリーズに関していうと「甲子夜話(かっしやわ)」という不思議なことや庶民の噂話などをまとめた本が軸になっています。

主人公の雙星彦馬は、平戸藩の御船手方書物天文係をしていたのに、妻の織江がいなくなっちゃったもんだから、近親者からテキトウに養子となる人物を探して自分は隠居を申し出て、織江を探しに江戸に出てきてしまいます。
そこで、元平戸藩藩主松浦静山(甲子夜話の作者で実在の人物)や、西海屋という大店の友人、原田という同心と出会い、不思議な物事を解決したり謎解きしていきます。
謎解きしながら寺子屋の先生もやり、その合間に織江を探します。

軸となるものが不思議なこととか噂話みたいなのがベースなのであんまり人も死なないし(まぁ時々は戦ったり死人もでたりするけど)そういう意味でも軽いです。
テレビの時代劇向き。(実際に時代劇にもなってます)
おもーーい作品を読むと、日常生活もしばらくズドーーンとなるのであまり読みたくない派の私としては、ホント、ちょうどよかったです。

で、ワタクシ的に大好きなのが、主人公が隠居する際に養子として迎えた男、雙星雁二郎。
この人が出てくるとワクワクしてしまいます。
存在が漫画。

表れた雁二郎という次男は、すこし後ずさりしたくなるようなガキだった。
まだ十二、三の歳なのに、四十半ばくらいに見える。顔がそれくらいで態度や話しっぶりとなるとさらに老けていて、こっちは下手すると五十過ぎにも見えるほどである。
なにせ、天気の話題から始まり、作物の実り具合について意見を求められた。
しかも、話しながら煙管でタバコを吸い、そのためいがらっぽい咳をしたりする。お前はどこのじい様だと訊きたくなる。

もう設定からおかしい。
そして、周囲から変人扱いされている彦馬さんだけど、養子である雁二郎に対してはとても的確に突っ込んだりぼやいたりしている。
雁二郎さん、年齢は十四だけど手違いで三十三ということになり、江戸に出仕することになりました。そのときの会話が以下↓

「だが、顔は三十四で通っても、頭は十四だろう。仕事だって十四の仕事しかできないのではないか」
「ところが、おかしなものですよね、十四と思って仕事をさせると半人前に見えても、三十四だと思えば最初はそんなものかと思うみたいなのです。私の方も適当に手を抜いていると、なんとかなったりして、あれですね、仕事というのは意外に楽なものなんですね。」
と、雁二郎は平然といった。
「・・・。」
そうかもしれないが、雁二郎ごときに言われるとむっとする。

この雁二郎は、芸達者で色々と宴会芸を持ってるんだけど
巻末にこんなの↓が載ってて、それもまたニヤリ。

第三話で雙星雁二郎が演じた珍芸「すっぽんぽんのぽん」は、Bコース ハブの「海亀の卵が出てくるところ」を参考にさせていただきました。この場を借りて、お礼申し上げます。

インスパイヤ元がBコースのハブ…(笑)。

ということで、雁二郎の存在だけでもこの時代モノは軽そうだ、というのがおわかりいただけると思います。
時代モノとか読書そのものに苦手意識のある方の入門書としてオススメ!!

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