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【読書感想】「死ぬほど読書」  丹羽宇一郎

読了日:2017/10/14

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もし、あなたがよりよく生きたいと望むなら、「世の中には知らないことが無数にある」と自覚することだ。すると知的好奇心が芽生え、人生は俄然、面白くなる。自分の無知に気づくには、本がうってつけだ。ただし、読み方にはコツがある。「これは重要だ」と思った箇所は、線を引くなり付箋を貼るなりして、最後にノートに書き写す。ここまで実践して、はじめて本が自分の血肉となる。伊藤忠商事前会長、元中国大使でビジネス界きっての読書家が、本の選び方、読み方、活かし方、楽しみ方を縦横無尽に語り尽くす。
「BOOKデータベース」より

この本の概要

「死ぬほど」ってわけではないけど、趣味のひとつに加える程度には読書好きなので、なんとなく買ってみました。

著者の方は、伊藤忠の元会長さん。超ヤバい時期を、短期間で立て直したすごい人らしいです(説明がざっくりですみません)。
読書の良さとか、著者なりの読書のコツとか、読書にまつわるあーだこーだを自由に語ったエッセイです。

この人ほどじゃないけど、私もそこそこ読書はするので、「そうだなぁ、そうだなぁ」と共感しながら読みました。
特に新しい発見とかはなかったけど、「私の読書ポリシーと同じだわ~」という気持ち良さは得られました。

読書はしないといけないもの?

冒頭のページで、作者は次のように語っています。

私は先頃、新聞に載っていた読者のある投書を見て、驚きました。それは21歳の男子大学生による「読書はしないといけないものなのか?」ということを問うた内容のものでした。
(中略)
最近「一日の読書時間が『0分』の大学生が約5割に上がる」という調査結果が報告され、それに対して懸念の声が方々から上がりました。この大学生はそれについて「意義あり」の声をあげたのです。
彼曰く、「読書が生きる上での糧になると感じたことはない。読書はスポーツと同じように趣味の範囲であって、自分にとってはアルバイトや大学の勉強の方が必要」だそうです。
もし、その彼が直接、私にそんなことを聞いてきたら、こう答えると思います。
「読む、読まないは君の自由なんだから、本なんて読まなくていいよ。」

この大学生の言いたいこと、とてもよくわかります。
この手の「調査結果+それに対する懸念の声」
は、世の中を見渡せば至るところで目にするんですが、ちょいちょいイラつきます。
「懸念の声→イマドキの人批判」というゴールありきで記事を作っているように感じてしまうのです。
時代背景が違うんだから、昔のものさしを使うのは違うのでは?

私もこの作者と同じ考えで、
読書は趣味だし、読みたい人が読めばよくて読みたくないなら読まなきゃいいんだと思う。読んでりゃ読んでるなりの面白さや奥深さや学びがあるけど、そんなの読書じゃなくスポーツや、別の趣味でも同じだもの。

時代の価値観の流動性と、人の変化のなさ

「現代の若者は昔と比べて〇〇だ」というようなネタって、根っこを突き詰めていくと
「自分の時代の価値観と違うことに対する拒否感」だったり、「自分の時代の価値観を優位に感じていたい」というのがある気がする。(もちろん、そうじゃないものもあるんだろうけど。)

「読書時間が減ってるのは嘆かわしい」という考えは「読書=良いこと」という価値観が前提です。
でも昔々は「本ばっかり読んでこの役立たずが!」と罵られてた頃もあったわけです。
「読書=役立たず」の時代の人たちは、まさかその先の未来で「読書=良いこと」という文化に代わるとは思ってもなかったと思う。

今の私たちも同じで、今、たまたま「読書=良いこと」というのがスタンダードになってるだけで、そのうち「読書=アホのすること」に変化しないとも限らない。
そうしたら、また「最近の若者は読書の時間が増えている。これは由々しき事態だ!」という意見が世のスタンダードになるのは、目に見えている。

時代の価値観はその都度流動的に変わっていくのに、「自分と違う考えを批判する」という人の行為・性質は変わらない。
次の時代のスタンダードは「読むも読まないもどっちもいいね」というのになってほしいものだなぁ…。

読書後のアウトプット

読書後のアウトプットについても書かれていました。
この作者は、本を読んで印象に残ったところに線を引いたりマークを付けたりして、さらに、特にいいと思ったところはノートに書き写しているそうです。そうしてると、読んだことが自分の中で整理されて、なんらかのタイミングで書き写した言葉が自分に取り込まれるとのことでした。

これは、私も長年実践しているので納得です。
せっかく本を読んでも、しばらくすると何書いてたか本気ですっかり忘れてしまうんですよね。。小説を読んでて「このセリフ、シビれるー」って思ったところも、やっぱりすぐに忘れてしまう。
それがものすごくもったいないなーと思ったんですよね。

食べたのにう〇ちを出さないのは健康によくない、というのと一緒で、インプットしたのにアウトプットしないのは脳にもよくない。
記録するようになってからは、ストーリーも思い出しやすくなったし、一回アウトプットのために練る時間があるので、ちゃんと咀嚼して取り込んでる感を持てるようになりました。

ただし、これには難点もあります。インプットの時間と同じかそれ以上にアウトプットに時間がかかるので、年間を通して読める量は1/2くらいになっちゃうんですよね。
この本も、読むのより感想書いてる時間の方がたぶん長いしwww

ワタクシ的名文

私が考える教養の条件は、「自分が知らないということを知っている」ことと、「相手の立場に立ってものごとが考えられる」ことの2つです。

こういう、その人なりの定義を知ることができるのは面白い。
「自分が知らないということを知っている」というのは「無知の知」とも言われます。
高校時代の倫理の授業で「無知の知」をはじめて習ったとき、衝撃を受けました。教養ってそういう衝撃そのものなんでしょうね。
この教養の定義、完全同意。

難解であるがゆえに深いものが書かれている。抽象度が高いものは高尚である。そんなふうに思い込んでいる人は少なくありません。
しかしながら、それは錯覚です。やさしいことを難しい言い回しにするのは簡単なことですが、反対に難しいことを平易に表現するのは難しいものです。
こと哲学者や思想家といった人たちは、カンタンなことをわざわざ難しくいう傾向があります。簡単なことを難しく考えるのは、頭のなかでクリアに整理されていないものがあるゆえなのかもしれません。

あーーー超わかる。
大学受験の論説文でムダに敗北感を味わった自分に言ってあげたい。「別にお前がバカだからわからないワケじゃないんだよ」と…。
子供の頃は「本を出す人=頭のいいすごい人」ってイメージがあったけど、出すだけなら運かコネか肩書があれば、本自体は出せるもんね。

私は人からよく相談を受けます。傍からは順風に見える人でも、意外な悩みや問題を抱えていたりすることが多い。私はよくこう答えます。
「失敗しても死ぬわけじゃない。生きていればチャンスはいくらでもある。そもそも生きていることそのものが問題を生むんだから、問題が嫌なら死ぬしかない」
と。そしてこう続けます。
「問題は人との関係であり、一人で解決するものでもない。他人への想像力と共感が、解決へ導いてくれる。問題がある限り、またそれを解決する答えも必ずどこかにある。問題があるというのは、生きている証だ。問題があることを喜べ」
人間一人では生きていけない。人間一人の力はたかが知れている。これが私にとって人生最大の教訓です。

何がいいって「他人への想像力と共感が、解決へ導いてくれる」という一文ですよ。
ホント、これだと思う。
いろんな本を読んでても「多様性」「チームワーク」「みんなHappy」への近道は、「想像力」と「共感」なのかなと。

特に「共感」はこれからの時代のキーワードになるのではないかしら。
少なくとも「多様性」「チームワーク」を次のステップに進めるための具体的な素材として、「共感力の育成」ってのは、すごく大事になると私は思ってます。

超オススメ!!!ってほどではないですが、
「あー、読書した方がいいかなーってなんとなく思うけど、イマイチやる気起きないんだよねー」みたいな人は、読んだらちょっとだけ背中を押してもらえるかもしれないです。

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